「はつこい」28

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


お互い誤解をしたまま終えた旅行。二人はぎこちなくなり、前に進めなくなったが・・・?


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23 24 25 26 27 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓

































第7章<交差する想い>



ーあれから数週間後ー


夏の旅行も終え、夏休みもあと少しとなっていた。

翔太はあの旅行の後、爽子と満足に話せないまま日だけが経過していく。

義理堅い彼女があの夜の約束のことを気にしているのは知っている。結局あの後、

そのまま部屋に戻ってしまった。次の朝も目線さえ合わせることが出来ずに、どんどん

ぎこちなくなる関係。今さら言えない。あの時、告白しようとしていたなんて・・・・。永遠

にも何も聞けなかった。それほどあの光景は自分で思うよりもずっとショックだったようだ。


(付き合ってんのかな・・・)


あれから3人のシフトも永遠と爽子と二人になる機会もなかった。今は逆にそれが有難

かった。今会えばきっと変な態度になってしまうのが分かっていた。もしかして彼女が意

識的に俺を避けているのかもしれないと思うほど一緒のシフトにならないのだが、よく考

えるとそんな必要は全くないわけで・・・。


「・・・はぁ」

「何よぉ〜〜翔太、最近元気ないじゃない?」


この日バイトが一緒だった神楽が翔太をつんつんして言った。 ”べつに何もないよ ”と

必死で笑顔を作って言う翔太を神楽はじっと見つめる。


「?何?」

「いや・・・あのね、オリオ・・あっ大和ちゃんのこと・・・どうなったのか気になってね」

「あっ」


(そうだった・・・神楽さんは知ってるんだ)


あの夜、告白された翔太は最初戸惑った。しかし正直に向き合うことしかできなかった。


「”好きな人がいるから”って断った」

「え・・・?」

「え!?」


神楽に驚いた顔をされた翔太は逆に不思議そうに目を丸くさせた。


「いや・・ね、やっぱ翔太ってすごいなって思って」

「え?なんで?」

「だってびっくりしなかったの?男に告白されたのに。私なんか最初に告白した男に

 はめっちゃ引かれたけど?」


すると、翔太は恥ずかしそうに俯いて髪をくしゃっとして言った。


「俺もびっくりしたよ・・・。でも、大和の目が本気だったから、ちゃんと返事しなきゃ

 って思ったんだ」


神楽は翔太を見て嬉しそうに微笑んだ。


「嬉しかったと思うよ、オリオンちゃん。例え断られてもちゃんと向き合ってもらったん

 だもの。だって世の中ってさ・・・形になって見えるものがすべてじゃん」

「・・・・」


”形になって見えるもの・・・”


黒沼はかわいいと思う。だから好きになったのかな?

・・・違う。気づいたら好きになってた。純粋な彼女にいつの間にか惹かれていたんだ。


「・・・違うと思う。形がすべてじゃないよ。好きになるのに・・・形なんかいらないじゃん」

「しょ〜〜〜たぁぁっ!!いい子だわんっ」

「わっ!」


翔太は神楽に抱きつかれキスされそうになると、ひらりと上手く交わす。


「ケチねぇ〜〜〜翔太ったら。でも爽やかだから許す。それよりさ・・・本城さまに翔太の

 爪の垢でも飲ませたいわね」

「本城さん?」


そう言うと、神楽は作業を進めながら思いに耽るように語り出した。


「だって本城さまったら形あるものしか受け入れないってタイプでしょ」

「・・そうなのかな。俺は本城さんをよく知らないから」

「それもきれいな形のモノ」


ぶすっとしている神楽を見ていて翔太は言った。


「じゃ、なんで神楽さんは本城さんが好きなの?」

「・・・・顔?」


ずるっ


翔太は思わずずっこける。しかし、神楽は本城を思い浮かべると幸せそうで乙女の顔

をしている。そんな神楽をかわいいと初めて思った。


「幸せそうだね。神楽さん」

「うふっだって恋する女の子だも〜〜んっ」

「・・・・」


恋する女の子はこんな顔するのか・・・。


翔太はそんなことを思うと、永遠を見ていた爽子を思い浮かべた。バイトの時に爽子を

さりげなくフォローする永遠の後ろで顔を紅潮させていた彼女。


(やっぱ・・・黒沼は永遠が好きなのかな)


「あ″ぁ〜〜〜っ分かんねっ」


髪をくしゃっとすると翔太は今日何度目かとなる大きなため息をついた。

分からないことは本人に聞けばいいと分かっているのに、前に進めないで足踏みして

いる自分自身にイラついていた。


*******


一方爽子は・・・


「・・・はぁっ・・」


翔太同様、本日何度目かのため息をついていた。

あの旅行の夜からあやねや千鶴が心配してくれていることを知っている。翔太と会う

ことを伝えていたのだから、そのことを報告しなければならないと思っているのだが、

なんて言ったらいいのか分からず、無駄に日だけが過ぎていた。そして、翔太に会う

のが怖くて同じシフトを避けている自分が嫌だった。


(・・・あぁ〜〜〜だめだっ)


爽子は頭の中がぐちゃぐちゃになり、自己嫌悪に陥る日々が続いていた。


風早くんのことが恋愛感情で好きだと分かったことや、失恋したことを言わなきゃい

けないのに。

失恋・・・・したんだよね。


どくんっ


翔太に特別な存在ができたと思いこんでいる爽子は、あの夜の光景を思い出しては、

胸が苦しくなって身動きが取れなくなっていた。きっとこんな自分は迷惑だろう・・・と。

そう思うとどんどん翔太に会えなくなった。


(いつの間にこんなに好きになってたんだろう・・・)


「・・・何よ、その暗い顔」

「!」


俯いて重い足取りでバイト先に向かって歩いていた爽子の斜め前方から声が聞こえた。

自分に言われたのか分からず、爽子はきょろきょろっと周りを見渡す。


「えっ・・・あれっ風早くんの??」


爽子は意外な人物を見つけると、驚いた顔で目をぱちぱちとさせた。そこに立っていた

のは大和だった。大和は壁にもたれながら腕を組んで不機嫌そうに爽子を見ている。

そして身体を乗り出して言った。


「あんたなんてね・・・永遠とかいう奴とくっついたらいいのに」

「え・・・??」


いきなり大和の口から出てきた”永遠”という言葉に爽子は動揺する。そして大和の

意図が分からず、不安そうに瞳を揺らした。なぜか敵対心を持たれているような気が

したからだ。


「あ・・あのっ」

「風早を・・・風早のことちゃんと考えたことあんの??自分のことばっかり考えている

 から何も見えないのよっ!!」

「!!」


爽子は大和にそう叫ばれると、雷に打たれたように動けなくなった。







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あとがき↓

大和は待ち伏せしてました。はい。しかし本誌は爽風のラブラブが見れないですね。
なんか甘〜〜〜いのがたまに書きたくなりますね。