「Once in a blue moon」(16)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 の続きです。 


☆ 蓮の過去が知りたい麻美。何も言わない蓮。風早家で食事した後、再び挑戦的に
  切り出した麻美だが・・・・?


















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 16 ‥…━━━☆














二人の間に沈黙が走った。彼に嫌われたくないから見たいものを見ないようにするこ

とはできない。私は元来そんな性格じゃない。それで壊れるなら・・・・悲しいけど、

それ以上の関係にはなれなかったということだ。


どくん、どくんっ


蓮は一瞬驚いた目を見開いて、ふっと笑った。


「・・・・そんなわけないだろ」

「・・・・・」

「俺なんか真っ黒けっけ・・」

「・・・・」


私はにこりともせずに真っ直ぐ川嶋蓮を見た。川嶋蓮も視線を逸らさず私を見つめる。

まるで後ろめたいことは何もないと言うように。そして視線がさっと私の背後に移った。


「・・・・あっゆづ!?」


眠っていた結月がふらふらと起きてきた。爽子も気づき慌ててキッチンから出てくる。


「あれっ・・・ゆづちゃん、おトイレかな?」

「・・・・!!」


結月は蓮を寝ぼけ眼で見つめると、”あっ”と目を見開いた。蓮は結月が眠ってから食

事会に合流したので結月は会えていなかった。蓮は結月のところまで行き、抱っこし

て言った。


「・・ごめんな。寝てる時に来て。でももう寝ないといけないから」


結月はしょんぼりしたが、蓮にべたっと抱きついた。


「俺、ゆづを寝かしてきていい?」

「え・・いいのかな?」

「全然。トイレ行ってから寝よ」


蓮はそう言うと、ゆづをトイレに連れて行き2階に上がって行った。


「・・・・・」


川嶋蓮は全部分かっている。勘のいい蓮が分からないはずはなかった。私が求めてい

る答え。でも、私に言う必要がないと感じる。そこに後ろめたさは全くないというの

は、実際川嶋蓮の中でしっかり過去ということか、それとも・・・考えたくはないけ

ど、私が言うに値しない相手なのか・・・。


「どうぞ」

「あっ」


爽子は、ぼーっと蓮を目で追っている麻美の前にお茶とお菓子を置いた。


「蓮さん・・・絶対いいお父さんになるね」

「・・・うん。・・あっありがと」


爽子手作りのケーキを頬張ると、”おいしいっ”と感激したように顔を輝かせる。爽子

はその顔を見て嬉しそうに微笑んだ。麻美は心を見透かされないようにさりげなく聞く。


「川嶋蓮さぁ・・・以前からあんななの?」

「以前・・・う〜ん、どうかな?翔太くん?」

「違ったよ。ゆづに会って変わったような気がする。もっとガードが堅いっつーか」

「ガード・・・」


きっと風早さんなら知ってる。川嶋蓮の過去。思わずじっと風早さんを見つめる。


ばたばたんーっ


「わ・・・ゆづ暴れてる。遊んでんなぁ〜〜〜蓮」


思わず3人で天井を見上げる。2階の結月の部屋から音が聞こえる。


「川嶋蓮・・・本当にかわいいんだね。ゆづちゃんが」

「ありがたいです・・・」


ゆづちゃんと川嶋蓮は特別なような気がした。ちょっと恋人の私も妬くぐらい・・・。


(・・・って何言ってんだか私)


「父親形無しだなぁ〜」

「そんなことないんだよ。翔太くんのこと大好きだからっゆづちゃん」


爽子さんが必死に言うと、風早さんがにっこりと笑って微笑み合う。二人の和やかな

雰囲気にほんわかした気持ちになるけど、確かにちょっとお邪魔だなって・・・思う。


(はは・・・っ川嶋蓮の気持ちが分かるわ)


そして、爽子さんが台所へ行ったのを見計らって私はごくっと唾を飲みこんだ。

狡いのは分かってる。川嶋蓮がこういうことを嫌うのも。でも川嶋蓮がいなくて風早

さんがいるというシチュエーションはあまりない。


「風早さん・・・探るつもりはないの。でもどうしても気になって・・・」

「?」


真剣な表情で麻美は言った。深刻な話だと分かった翔太は飲んでいたコーヒーを机に

置くと、身体を麻美の方に向ける。


「川嶋蓮に聞いても、絶対に答えてくれないので、教えてもらえませんか?」

「何?」

「・・・彼の過去の恋愛」


麻美は翔太から目を逸らさなかった。それは生半可な気持ちで聞いたのではないとい

う表れのようだった。翔太はしばらく麻美の目を見つめた。


「人のことを自分から言うのは好きではないけど・・・聞いてどうするの?」

「・・・どうするか分かりません。でも知ってないと先に進めないような気がする」


怖いけど。聞いたらどうなるんだろう・・・って思うけど。気になって仕方がないから。

どうしても引けなかった。


沈黙が走る。麻美は翔太の真剣な目に手に汗を握っていた。翔太はふーっと小さく息

を吐いてコーヒーを口に含むと、再び真っ直ぐ麻美を見た。


ドクンッッ


風早さんの目に心臓が大きく脈打った。それは覚悟はできてるか?と聞かれているよ

うな目だった。この時思った。この人は真剣に向き合えば必ず返してくれると・・・。

だから、引かない。いや・・・引けない。私は睨むように風早さんを見つめた。する

と風早さんはぽつりと言葉を発した。


「・・・彼女がいた。蓮が別れを決意したことによって彼女を精神的な病に追い込ん

 だと思ってる。別れて大分経つけど、その傷は癒えてないような気がする」

「!」


麻美は翔太を見て、目を見開いたまま動作が止まった。


「・・・これ以上は言えない」

「あ・・・ありがとう」


そのままどう帰ったか分からない。ゆづちゃんを寝かせている川嶋蓮に何も言わずに

帰った。重い恋愛をしているような気がしていた。それは当たっていたのだが、何だ

ろう・・・思ったよりショックを受けている。少しだけ知っただけなのに。まだ何も

知らないと言うのに。彼が愛した女の人がいるというだけで穏やかでいられないなん

て、こんな自分に驚きだ。そして、ずっと彼の心の中にその彼女がいるのだと思うと、

思っていたより胸が苦しくなった。やはり聞かなきゃ良かったのかもしれない。

今はそれが正直な気持ちだった。




「Once in a blue moon」 17 へつづく














あとがき↓

オリキャラ話、今年中にもう一個いきたいけどなぁ・・・今年といってももうあと10日。
早いもんです。1月にはこのサイトも2周年。早い本当に早い。キミトドに出会えて良か
ったとつくづく思います。そしてまだ萌えが続いていることも♪大好きな同人誌さまも
新刊でるしっ。わくわく♪