「Cresent moon」 7
光平完全主人公の話です。はい、あくまでスピンオフではございません(笑)
光平の名誉のために(?)番外編にもしません(笑)
物語は光平が北海道に来て1年後の話です。
この話は「Crescent moon」1 2 3 4 5 6 の続きです。
明るい友香にも抱えているものがあることを知り、光平は自分を振り返る。そして、
光平が思ったことは・・・?
〜 Crescent moon Epi 7 〜
” 謝りたい ”
そう強く思った。許してくれないかもしれない。完全に引かれてるかもしれない。
でも彼女を傷つけたことを謝らなければならないと思った。
沢渡と会った後、俺は走っていた。
(はぁはぁ・・・っ)
『爽ちゃんってさ・・・めちゃきれいな子じゃん。最初はちょっと引いたんだよね。
今時じゃないし、まじでこんな子いるの?って思ったし。でもさ・・・』
苦しそうな沢渡の顔が柔らかくなる。
『偽善とか全くなくって、本当に純粋な人だったんだよね。だからどんどん好きにな
って。人に求めないのに、どんな私も受けとめてくれる。段々・・・自分の生き方
が恥ずかしくなったの。いい加減に生きてる自分が・・・』
”でもやっぱ弱くて・・・”と言った沢渡と目が合って、お互い複雑な顔で俯いた。
そうだ・・・。彼女はそういう人だ。だから好きになったんだろうか。
『爽ちゃんは自分のことを鈍感だといつも反省するけど、鈍感なんかじゃないよ。人
に一生懸命に向き合うから、人一倍傷ついて、感じてんだよね』
『・・・・』
今の言葉が俺の心臓にぐさっと突き刺さった。苦しそうに顔を歪めたのを沢渡はじっ
と見つめていた。俺はハッとして目を泳がせる。
『ははっまた落としちゃった?』
『・・・・』
『まっお互い自分の愚かさに反省しよ〜よ。爽ちゃんといると不純さに気づくからねぇ。
今まで自分が不純とか思ってなかったしさ・・・まじ、あんな子いないよ』
沢渡は彼女のことをよく分かっていた。彼女に恥じない人間になりたいと思いながら
も人間ってのは自分に甘く、簡単には変わることは出来ない。でも少しずつだが変わ
ろうと思っている沢渡はこれから変わっていくだろう。
それは彼女に会ったから。
俺は?・・・彼女に出会った意味は?
別れ際に沢渡が言った。
『でも私、同姓で良かったと思う。もし男だったらやっぱ、だぐっちゃんみたいに苦
労する部分があるかも』
そして、にやっと笑った。
”爽ちゃんの唯一の欠点は『恋愛の好意には鈍感』ってことだね”
彼女に恥ずかしくない生き方をしたい・・・と強く思った。そして友人として沢渡に
出会ったことを感謝した。
”もう同じ過ちが繰り返さない・・・”お互いそう誓って合って今までの関係に戻った。
* * *
出会った意味なんか分からない。分かるのは彼女をまだ好きだということ。好きだか
ら謝らなければならない。彼女を傷つけたこと。
がらっー
「いらっしゃいませ〜」
「はぁ・・はぁっ・・・」
許してもらえるなんて思ってない。でも・・・彼女はいつも最低で弱い俺を受け止め
てくれる。こんな人、いるだろうか。
「あ・・・・」
彼女の姿を見て思わず震えた。店の奥で戸惑いながらも一生懸命俺に向き合おうとし
てくれている彼女の姿があった。
「き・・てくれて・・・ありがとう」
絶対断られると思っていた。二人でこんな風に外で会うなんて風早には言えないだろ
うし。あの後電話をして近くの喫茶店に彼女を呼び出した。まさか俺のためにそんな
リスキーなことをしてくれると思わなかったんだ。
でも、彼女は来てくれた。
この後たとえ、絶望的なことを言われたとしても、彼女ともう今までのような関係に
戻れないとしてもこの瞬間、いいと思った。
”彼女がここにいる”・・・・これだけですべてが救われたような気がした。
この後、彼女がここに来た目的を知ることになる。その時やっと沢渡が言っていた事
が本当の意味で分かったんだ。
彼女は俺が思っていたよりずっと・・・・すごい人だった。
光平は爽子から視線を外せなかった。どこまでも透き通った純粋な瞳を・・・・。
<つづく>
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あとがき↓
もう2月早いっ・・・じわじわと押し寄せる感じ。あぁ・・・久しくのんびりした春を
迎えられていない。老後には嫌ってほどのんびりするんでしょうけどね。次回最終回で
す。光平の成長を見てあげてください!Cさま♪(* ̄ー ̄*)