「彼女の王子様」4

主人公は高校一年の男子。風早はその子の担任の先生。爽風を取り巻く客観的な目で

繰り広げられる妄想です。オリキャラ中心になりますので、興味のない方はスルーで

お願いします。キミトドメンバー出ます。


すっかり風早と爽子と仲がいい賢。そんな3人の姿を見ていた人物がいて・・・?


この話は「私の王子様」1 2 3 の続きです。

以下からどうぞ↓





























あれからも俺は琴音に本当のことを言えないまま時だけが過ぎていた。言おうとする

と琴音に風早愛を語られいつも沈没していた。でも、最近琴音の態度が少し違う気が

した。あまり風早のことを言わないような・・・。


(・・気のせいだよな)


「琴音、今日さ」


帰り際、俺は新しい風早の写真を後ろに隠して教室を出て行こうとする琴音に声を掛

けた。分ってる。こんなことしたらダメだって。でも、やっぱ喜ばせたい気持ちが先

だってしまう。


(なんか、元気ないし)


・・・と自分に言い聞かせる。


「琴音?」


すると、琴音はじろっと俺を睨んでプイッと顔を逆に向けるとそのまま話も聞かずに

去って行ってしまった。


バタバタバタッ


「え??何?」


俺は琴音の奇怪な行動に目が点になったけど、たまたま機嫌が悪かったんだろう・・と

その時は深く考えなかった。それよりもその場限りの自分の浅はかさに落ち込んでいた。



* * *


「はぁ〜〜ふぅ」

「なんだ、悩み事か?」


閉店近く、客は風早以外いない。カウンターの中で呆けた顔で皿を洗っている賢に風早

は声を掛けた。龍は奥で片づけをしている。


「ねぇ、せんせーさぁ爽子さんがもし生徒だったらどうする?」

「ぶっ・・な、なんだよいきなりっ」


風早は動揺して飲み物を吹き出しそうになった。


「いや、年の差とか立場とか気にすんのかな〜と思ってさ・・・その年で照れんなよ」

「ーっさい///」


そう言いながらも真剣な顔で考える。風早はいつもそうだ。生徒を子ども扱いとかし

ないで、人間として必ず向き合う。


「・・・多分、気にしない。というか年齢とかそんなじゃないと思う。恋愛って」

「じゃ、生徒と付き合うとか・・アリなんだ?」

「いや・・・っなんでそーなるんだよ」

「・・・なんとなく?聞いてみただけ」

「なんじゃ、それ」


はは〜〜っと風早は大笑いしてる。でも俺は知ってる。そんなの有り得ないことを。


「せんせーさ、爽子さん以外の人と恋愛すること、これからあんのかな?」

「有り得ない」


風早が自信たっぷりの表情で即答した。少しのためらいもなく。ずきっと胸が痛む。


「高倉は?」

「えっ?」

「高倉は年齢とかそーいうの気にするの?」

「・・・・」


こういう時、風早はからかうとかしない。だから嫌になる時ある。こういう時こそふ

ざけて欲しいのに。真剣な風早の目が俺に刺さってくる。


(基本・・・熱いんだよなこの人)


「気にしないけど、運命とか・・・そういうのは信じてない」

「運命?」

「うん。せんせー見てるとそんなものを信じてるように感じるから」


そう言うと、風早はふっと目を細めた。それはきっと爽子さんを思い出している目。

幸せそうな風早の顔を見ると同時に琴音の悲しげな顔が脳裏に浮かぶ。


ずきんっ


「信じるも信じないも相手がいないと始まんないだろ?」

「・・まぁね」

「でも・・・もう出会ってるかもな」

「え・・・?」


思わず、真っ直ぐな風早の目を逸らした。見透かされそうに思う。こんなに真っ直ぐ

だから琴音は好きになったのかな?この人も琴音と一緒で周りに流されない。二人は

似ているのかもしれないな。自分がない俺と違って・・・。


風早は表情が曇った賢をじっと見つめていた。


* * *


それからも琴音の態度がおかしくて、さすがに気になり始めた頃・・・。


がらっ


「・・・何、話って?」


ある放課後、琴音に呼び出されて誰もいない教室に行った。この日はテスト前で珍し

く俺は図書館で勉強していたところ、琴音からメールが来たのだ。俺は必死で最近の

自分の素行を思い出していた。


(やっぱ、俺なんかした??)


琴音は窓の外を見ていて、俺が来ても背中を向けたままだ。やっぱり様子が変だった。


「琴音?」


それでも琴音はこちらを向かない。俺は何を見ているのかと琴音が見ている窓の外を

覗きこんだ。


「!」


すると、2階にある教室から花壇が見える。そこに風早の姿があった。琴音に視線を

移すと、虚ろな瞳で風早を見ていることに気付いた。


「琴音」

「・・・さっきから見てるんだけどさ、先生、すごく嬉しそうなんだ」

「え?」

「知ってた?」


琴音はくるっと今度は窓に背中を向け、俺の方を見て言った。


「風早先生ってこの学校の出身なんだよ」

「え?そうなんだ」

「・・・・」


そして表情を曇らせて視線を下に向けた。その姿に胸がきりっと痛む。


「先生の彼女も・・・ここ出身なんだって。同級生だって」


どくっ


俺は口を開けたまま動作が止まった。そしてどくどくと脈が速くなった。


知ってた・・・。


琴音は・・・知ってたんだ。


固まったままの俺を琴音はちらと見ると、また窓の方に顔を向けた。


「あの花壇・・・その彼女が残したものなんだって」


(爽子さんが・・・!?)


その花壇にはシソやアロエドクダミやウコンなど薬草が生えている。確か理科部が

管理していたような気がする。あまり興味ないけど、この学校のウリになっているら

しく、学校祭などでは薬草を買うためにやってくる人もいると聞いた。

そっか・・・そのもとを作ったのは爽子さんなんだ。俺は爽子さんを思い浮かべると

妙に納得できるものがあった。


「あっ・・・・」


そう言えば、風早は運動部もやってたけど、理科部の顧問でもあった。

そっか・・・爽子さんの花壇を守ってるんだ。


「琴音・・・どうして知ったの?」

「・・・そんなことより、賢は私に言う事あるんじゃないの?」

「え・・・」


琴音にじっと睨まれて、俺は視線を外せなくなった。明らかに怒っている様子の琴音

の姿に焦る。


どくんっ


ずっと言わないといけないと思ってた。嘘をつき続けることで琴音の傷を深くするこ

とが分かっていたのに・・・っ。


俺は琴音の顔を見れなくて・・・ただ、胸の奥がどうしようもなく痛んだ。




<つづく>



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あとがき↓

いろいろ追われるようになってくると二次に逃げてしまうという・・・。現実逃避
です(笑)それも出来なくなった時、ボロボロだと思うけど。今はまだ余裕ありで
す。別マもやってくるしね♪次回この話も終わりです〜〜〜(* ̄ー ̄*)