「Once in a blue moon」(67)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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☆ 夢の中で苦しむ蓮。その中にはたくさんの想いが詰まっていた。



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 67 ‥…━━━☆



















『蓮、さわこってこの子のこと好きなの?』

『蓮、爽子さんが好きなんでしょ?』


美穂?麻美?・・・二人が笑っている。それは冷笑と言える笑み。何を言っているん
だろう?今、彼女が幸せになろうとしているのに。その相手は俺が今まで出会った誰
よりもかっこいい男だ。すべてがかっこいい男。でも何よりもかっこいいのは彼女を
想う気持ち、守れるだけの強さ。すべてを持ち合わせている。それなのに?
麻美までどうしてそんなことを言うのだろう。


『蓮が好き・・・好き、好き、大好き』


真っ直ぐ向かってくる気持ち。俺にはないものばかりだ。あの店で目が合った時から
近い存在になると感じていた。ただ、一緒に居たいと思った。


『自分が壊れてしまうから私と付き合った・・』


壊れてしまう?そんなの今さらだ。俺は最初から壊れている。
幸せになる権利なんてない。人を傷つけてばかりいる俺には・・・


blue moon が見たい。そうすれば全て忘れられるような気がした。
最初から何もかったように。大切な人を傷つけることもない。


大切な人・・・


「・・・ごめんっ・・ぅっ・・」

「蓮さん??」


先ほどからベッドに横たわり目覚めない蓮を爽子と結月は心配そうに覗き込む。蓮の
頬には涙が伝う。爽子は初めて見る蓮の姿に驚きを隠せなかった。


* *


この日、爽子と結月は沙穂の家に遊びに行ったが、しばらくして結月が帰りたがった。
くいくいっと爽子のスカートを引っ張って離さない。何かを訴えたい時、結月は自分
を曲げない性格だ。その頑固なところは父親譲りなのか?とにかく爽子は結月の行動
に従うことにした。そして着いた場所が蓮のホテルというわけだ。結月がこの場所を
覚えていたことも驚いたが、何より驚いたのは・・・・目の前の光景だった。ホテル
で部屋番号を聞いて連絡してもらったが応答がなく、従業員に部屋を開けてもらうと
蓮が倒れていた。つまり結月は蓮の危機を察したということになる。慌ててベッドに
寝かし、医者を呼ぶと高熱のため倒れたということだ。でも安静にしていると大事に
至らないということで安心した。でも蓮はまだ目覚めず夢の中だ。涙を流して・・・


「ゆづちゃんっ!?」


そんな蓮を見つめていた結月もはらはらと涙を流していることに気づき爽子はハッと
した。爽子は結月をせつない目で見つめるとぎゅっと胸に抱きしめた。


「大丈夫だよ・・・大丈夫」


さいころから人の気持ちに同調してしまう結月。今は蓮の気持ちに同調しているこ
とが分かった。見るからに蓮は何かに苦しんでいるようだった。その苦しみを出来る
ことながら取り除いであげたい。それは爽子だけではなく翔太もそして麻美も思うこ
とだろう。夢の中でも苦しみ続けているのだから。爽子は麻美に連絡しようと考えた
が何となく感覚的に今はしない方が良いような気がした。


「でも、何に苦しんでるのか分からない・・・」


爽子が独り言のように結月を抱きしめながら哀しそうに呟く。その時、爽子に抱きし
められていた結月がバッと爽子から勢いよく離れた。


「ゆづちゃん?」


すると結月はぐいっと爽子の手を引き、蓮の手に持っていき重ねた。


「ゆ、ゆづちゃん??」


爽子はよく分からない結月の行動に戸惑ったが結月はにっこりと安心したように微笑
んでいる。そしてその上に自分の小さな手を重ねた。


「そっか・・・不安な時はこういうのがいいね。ゆづちゃん優しいね」


爽子にそう言われると結月の顔はぱぁっと輝き、嬉しそうにコクンッと頷く。
二人で想いを込めるように蓮の手を包み込む。


(なんだろう・・この感覚)


爽子は不思議な感覚を覚える。懐かしいような愛しいような温かい気持ち。

身体にビンビンと伝わってくるような感覚。それは熱くて激しい・・燃えるような?


「ゆづちゃん??何か・・した?」

「・・・・」


言葉で返ってくるはずがないのに爽子は尋ねていた。結月はそんな爽子をじっと見つめる。
こんな時結月に言葉があったら分かるのに・・・と爽子は今の状態を歯がゆく思った。


「・・っ!」


その後流れ込んできたのが悲しくて痛いくらいの苦しい気持ち。爽子の頬には自然に涙が
伝っていた。


「もしかして・・・これ、蓮さんの気持ち?」


結月は首を縦にも横にも振らずじっと爽子を見つめる。もしかして結月は人の気持ちを読
めるのだろうか?だから喋らないのか?でもこのような結月を見るのは初めてだ。


「蓮さんはゆづちゃんにとって特別なんだね・・・」


結月はにっこりほほ笑むとそのまま眠ってしまった。外は雨がしとしと降っている。すっ
かり夜は更けてしまった。翔太には蓮の元にいることをメールした。まだ飲み会の途中の
ようで返信はなかった。


「とりあえず・・・このまま寝かせてもらうしかないかな」


爽子はツインルームのもう一つのベッドに結月を寝かせると高熱でうなされている蓮の看
病をし続けた。相変わらず苦しそうな蓮を見つめて先ほどの感覚を思い出した。あれは蓮
の感情なのだろうか?あり得ないことなのに結月ならそんな不思議なことも信じられる気
がした。もし、先ほどの感覚が蓮の感情だとしたら苦しいことだけではない。温かいもの
も感じられた。蓮自身が諦めなければきっと幸せになれる。でも求めなければ蓮はこのま
ま苦しみ続ける気がした。爽子がぎゅっと蓮の手を握りしめる。


「幸せに・・・なってほしい」


爽子はそう呟きながら意識が遠のいていく。
いつしか爽子もそのまま蓮のベッドに伏せて眠ってしまった。






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あとがき↓

やっと先の話が書けたので記事出します。これから出来たところまで毎日?出せるか
なと思います。書いても書いても終わらない。100ぐらいまでいくの〜〜〜??