菊地直子釈放

オウム真理教菊地直子元信者 2審で無罪 釈放(NHK 2015年11月27日)


無罪判決 判断のポイントは

裁判では、菊地直子元信者が事件のことをどのように認識していたかが焦点となりました。菊地元信者が罪に問われたのはオウム真理教による東京都庁の郵便物爆破事件で、爆薬の原料だと認識したうえで薬品を教団の元幹部のもとに運んだとして、殺人未遂の犯行を手助けした「ほう助」に当たるとされました。一方、菊地元信者は裁判で、「運んだ薬品が事件に使われるとは思わなかった」として、人を殺傷するような爆薬を作れるという認識はなかったと主張しました。

1審の東京地方裁判所は、元幹部の証言や薬品のラベルに「劇物」と表示されていたことなどから、菊地元信者には危険な爆薬を作れるという認識があったと判断しました。これに対して東京高等裁判所は「1審の判決は根拠の不十分な推認を重ねたもので、認めることはできない」と指摘しました。

東京高裁が問題視したのは、1審で証言したオウム真理教の元幹部、井上嘉浩死刑囚の証言でした。井上死刑囚は「本人に爆薬を見せて『あなたのおかげで準備ができつつある』とことばをかけたら、『頑張ります』と言われた」と証言し、1審では有罪の根拠の1つになりました。

しかし東京高裁は、「自分にとって重要性のないエピソードを長年覚えているのは不自然だ」として、信用できないと判断しました。

一方で、「爆薬を作っているとは思っていなかった」という菊地元信者の主張については、「教団の指示や説明に従うしかない立場で、化学の知識にも乏しいことを考えると、弁解が不合理だとして退けることはできない」と評価しました。

また、薬品のラベルに「劇物」という表示があり、薬品名が記載されていたことについても、「一般的に、その薬品で危険な爆薬を大量に製造できることまで思いつくようなものではない」として、有罪の根拠にはならないという判断を示しました。
東京高裁はそのうえで、「1審の時点で事件から19年の歳月が流れ、関係者の記憶もあいまいで、菊地元信者が爆薬の原料だと認識していたことをうかがわせる具体的なエピソードや本人の言動を認めることはできず、有罪とするには合理的な疑いが残る」と結論づけました。