無所属なのに党役員ってどういうこと?

無所属なのに党役員ってどういうこと? こんな脱法行為を是とする民進党立憲主義を掲げる資格があるのか(産経新聞 2016年4月12日)


民主党が維新の党を吸収合併した民進党が3月27日に発足し、150人規模の野党第一党が誕生した。ただ、新代表は旧民主党岡田克也代表が「続投」したとあって、「新党」のイメージを欠き、政党支持率も伸び悩んでいる。あまり注目されない中で、党に所属しない無所属の国会議員が党の要職に就くという不可解な“脱法行為”が、淡々と実行されていた。

経緯が複雑なので、順を追って説明する。民進党旧民主党の130人、旧維新の党の21人、解散した改革結集の会の4人、無所属だった水野賢一参院議員の計156人で発足した。解散した旧維新の党は議員26人の政党だったが、参院議員の小野次郎川田龍平、柴田巧、寺田典城真山勇一の各氏は民進党に参加しなかった。正確に言えば、この5人は参加したくてもできなかった。比例代表選出議員の政党の移動を原則禁じた国会法の規定があるためだ。

小野、柴田、寺田3氏は平成22年の参院選で当選した。真山氏はこの選挙で落選したが、24年に繰り上げ当選している。川田氏は25年の参院選で当選。いずれもみんなの党比例代表で当選した。だが、党内抗争が激化したみんなの党は26年12月の衆院選を前に解散した。

国会法は、比例選出議員の政党の移動禁止の「例外」として、選挙時には存在しなかった新党への参加や、他党との合併に伴う移籍などを認めている。ただし、合併の場合は比例名簿を届け出た政党が存続していることが条件となる。

本来ならば、松野頼久衆院議員(比例九州)ら旧維新の党の比例当選議員も民進党に参加できない。しかし、民進党民主党を存続させた上で維新の党が合流する「存続合併」方式で誕生した。松野氏らは旧維新の党として合併を意思決定したので、合流が可能となった。

一方、みんなの党はすでに解散していたため、当選時にみんなの党に所属していた小野氏ら5人の民進党への合流を意思決定すべき主体が消滅したとみなされている。そのため5人は民進党に参加できないのだ。

しかし、小野氏は民進党の副代表に、川田氏は「次の内閣」厚生労働相にそれぞれ就任した。副代表は、党規約で「党運営に関する重要事項を議決する機関」と定めた常任幹事会のメンバーだ。川田氏も、党の政策を審議、決定する「次の内閣」の一角を占める。いずれも要職といえる。民進党には今後、税金による政党助成金が97億4300万円(28年分)交付される。巨額の税金が投入される公党の意思決定に、「部外者」の国会議員が深く関与するというわけだ。

なぜ、このような事態が生じたのか。

川田氏をのぞく4人は夏の参院選で改選を迎える。真山氏は参院選神奈川選挙区に「国替え」出馬する見通しで、小野氏ら3人は比例代表で出馬する予定だ。だが、比例代表は政党が候補者の名簿を提出して争うので、「無所属での比例候補」は存在し得ない。改選を迎える小野氏ら参院議員の任期満了は7月25日。参院選の投開票日は7月10日が有力視され、告示は6月中となる見込みだ。無所属のままでは民進党公認として戦えないので、小野氏らが民進党から比例代表で出馬するためには告示前に辞職する必要がある。

つまり、国会法の規定で民進党に参加でないとはいえ、いずれ「民進党公認」で参院選を戦うのだから、今から「民進党の議員として扱う」という意図があったと推測される。晴れて当選した暁には、堂々と党所属参院議員として迎えるのだろう。

そこで「苦肉の策」として編み出したのが、党規約の付則の「経過措置」という項目だった。そこには次のように明記してある。

「本規約にかかわらず、2019年9月末日までの間、共同会派に所属する国会議員で、本党所属議員でない者に、役員又は役職を委嘱し、両院議員総会の決議に基づき両院議員総会における議決権を付与することができる」

さらりと書いてあるが、「超法規的措置」といえるこの項目により、小野氏らは事実上「民進党所属の国会議員」として扱われているのだ。期限は2019年9月末。川田氏が改選を迎える平成31年夏の参院選の後までなので、川田氏は少なくとも今後3年余り、「無所属なのに民進党議員」として扱われるという異常な事態が続く。要職を務める小野、川田両氏以外の3人も、党大会に次ぐ議決機関である両院議員総会での議決権を持つことになった。

付則を含め党規約は3月27日の結党大会や4月5日の両院議員総会で、異論なく了承された。「無所属議員を党所属議員として扱う」という政党政治の根本が問われるような異常な事態に対し、誰も異を唱えなかったのだ。

すごいなあ(笑)。もし川田龍平が2019年参院選までに民進党代表になれば、無所属議員ながら巨大政党党首ということになるのかな(笑)。