「ヒトにとって呼吸と血液循環は必須。」
と思ってる人には、
放射線障害 と言う危険は、ピンとこないよね。
以前、20人位の小学生の子どもたちと放射線の勉強をした時に
危険とは何か? どんなときに危ない! って言われる?
って聞いたことがある。
出てきたすべての答えが、物理的に何かにぶつかって 転んで 怪我をする。
そして、血を出す。って答えだった。
大人だったら、呼吸(火災による毒ガスでの呼吸困難)、火傷(温度上昇による細胞死滅)は出るだろうか?
でも、放射線障害の危険は、身の回りにあまり経験者が居ないし、見たことも無いから想像がつかないでしょうね。
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呼吸と血液循環 ってのは、体を構成する細胞が、瞬間瞬間生きて、酸素を必要としてるってこと。
酸素を運び、要らなくなった二酸化炭素や老廃物を運び出さないと細胞が生き続けられない。
でも他にも、2週間位の時間で生命を観察すると、生き続けるために必須の機能がある。
細胞が再生され続けるってこと。
それともうひとつ、
食べた物を体の中に、吸収するってこと。
つまり、
生きてるってことは:
(1)細胞が、酸素をもらい、二酸化炭素を吐き出すこと。
※血液循環と呼吸を通じ「外」とやりとりすること。
(2)食べたものが「体内」に吸収されること。
(3)細胞が新しく生まれ再生される事。
の3つがうまく回ってるってことだ。
そう考えると、(2)の事例を思いつく。
脱水症だ。 水が足りないだけで簡単にお年寄りが死ぬ。
そして、嘔吐などの下痢症状での脱水症だ。
では、(3)は?
普段の新聞報道では、(3)での死亡事故は思いつかない。
全身を火傷して、皮膚呼吸が出来なくなる事例などがそうだろうか。
他には、私の知ってるのは、1999年のJCO事故だ。
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腸は洗濯機の排水管の様な蛇腹のチューブだ。
長手方向に半分に切り、その断面の「壁」に注目すると
蛇腹を形作る「ヒダ」の部分は
膨らませる前の風船の様な形状に似ている。
腸の細胞は、この「ヒダ」の根元で日々生まれる。
産まれたばかりの腸の細胞は、隊列を組んで行進する。
ヒダの先端に少しづつ少しづつ移動して、
最後はヒダの終端で死滅して、剥がれて、腸に運ばれ排出される。
この腸の細胞の誕生から死滅までのサイクルが、約2週間。
つまり、「2週間以上生き続ける腸の細胞は居ない。」
心臓の細胞一個一個が一生死ぬまで選手交代しないのとは大違いだ。
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食物は、腸の細胞を通じて、体内に吸収される。
人の体がもしも「ドーナツ」ならば、ドーナツの中に食べた物が入るチャンスは腸の細胞の気分次第だ。
腸の細胞に無視されたら、ドーナツの穴を通過するだけ(口から入って、スルーしてうんちになるだけ)。
・・・
結果、
腸のヒダの根元で日々再生されるはずの腸の細胞の生まれる場所は、壊滅的に死滅する。
腸のヒダの根元から、ずっと続いていた細胞たちの行進が途切れる。
まるで、
新入生が入ってこないのに、学年だけが、毎年上がっていく、小学生の集団登校の様だ。
放射線を浴びる前に、既に生まれていた細胞たちは、ヒダの終端に向け地道に行進を続ける。
やがて、すべての腸の生きてた細胞が剥がれ落ちる。
つまり、
2週間で、食べた物が消化できなくなる。
つまり、人は死ぬ。
これが、放射線障害の危険だ。
図 出典:http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-04-05