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百万年の孤独 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010年6月16日(水) 半年ぶり

[]歌よみの眼

歌よみの眼
歌よみの眼馬場 あき子

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NHK短歌 作歌へのいざない 考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書) 「マイナス」のプラス ――反常識の人生論 鬼の研究 (ちくま文庫) 短歌の友人

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 歌人馬場あき子さんの随筆集。古今の短歌を読み解きながら感じ、考えたことを、さまざまな媒体で発表してきたものをまとめたもののようだ。

 前半に配された、長めの随筆群が殊に味わい深く素晴らしかった。いにしえの日本人の魂のあり方を、ゆっくりと探っていく。馬場さんはあまりご自身の生身はさらけ出されないが(なんとなく、そこには「はしたない」という美意識が存するように感じられて好ましかった)、彼女の長い長い心の旅のあとをついていくような愉しさがあった。

 卑近なことで言えば、この本には、わたしにとって目新しい言葉、いままで素通りしてきた言葉への新しい意味が登場し、一つひとつを覚えることがなにやら晴れがましくも感じられた。これからこの言葉をわたしのテーマに据えることにする。10代のころに覚えた古典への関心がまた、むくむくと呼び起こされたのもうれしかった。

 一番覚えておきたい単語は「たまきはる」。とても気に入ったので、これからわたしのテーマに据えることにする。

(↑以上、メディアマーカーに書いたのをそのままコピペ

2010年1月15日(金)

[]066:逝かない身体

〈ケアをひらく〉逝かない身体ALS的日常を生きる
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 高校同期の友人id:ajisunの初単著。感動的なできばえでした。以下、amazonにアップしたユーザーコメントをコピペ

 ほかの方も書いていらっしゃるように、“闘病記”と呼んでしまうことには躊躇を覚えます。単なる“介護記録”でもありません。著者は、ALSという難病を生きる母を見つめ、その母を介護する自分を見つめつつ、家族介護の閉じた関係性にこもってはいませんでした。またこの本は、「ALSという特殊な病気のお話」でもありません。人間なら誰でも病気にかかるという点で、誰にでも通じるテーマだと思います。

 学問で言うなら、社会学倫理学看護学、政治学……いろんな分野へのヒントが詰まっていました。この物語が、いわゆる論文ではなく、文学として提示されたのは、必然であったと考えます。病いをめぐる人間の営みをくまなく記述し伝えたいと思えば、ものさし一つではとうてい足りないからです。

 たとえば、母上の病気が進行し眼球の動きもとまってまったくコミュニケーションがとれない状態になったときに著者はこう書いています。

「想像には限界があった。だから母のために私に何かができるのだとしたら、それはありのままの母を認めて危害を及ぼすようなことは一切しないことだ。」(p.199)

 人工呼吸器を止めれば母は楽になれるのではないか、という考えを反芻した末に、著者がたどりついた結論でした。「家族の代理意思決定」だの「慈悲殺の是非」だのといった聞き覚えのある言葉では語り得ないことだと感じました。

 言語的なコミュニケーションがとれなくなってからも、母上がその身体でさまざまなことを伝えてきた様子もつぶさに書かれていました。身体からなにを読み取りどう応えるかは、ひとえにケアにあたる側の感受性にかかっています。押さえた筆致からは、著者が意図するのは読み手を感動させることではなくて、人間の生がはらむ可能性を見逃さないでほしい、大切にしてほしい、という気持ちなのだとわかるのですが、やはり体験から紡ぎ出された言葉には、人の心を動かすしずかな迫力があります。

 これからわたしは折々にこの本を読み返すことになると思います。そして、読むたびに新しい発見をしていくことになるだろうと思います。

 読んですぐにでも感想をアップしたいと思っていたのだけど、絶対この本いいんです、読んでください!という気持ちが強いほど、手がすくんでしまって書けないものでこんなに遅くなってしまいました。1か月も寝かせておいて、その分だけいいレビューが書けるとかというと、そういうわけでもない。これより遅くなっても状況は変わらない。だったら、不完全でもとにかくアップしたほうがいいよ、と思ってえいやとアップしました。なんのことはない、今日こそ書くぞと決めたら20分でできちゃったんだ。

 こんなレビューではぜんぜん伝わりません。読んでやってください。よろしくお願いします。

2010年1月8日(金) エンスト中。

[]065:あと千回の晩飯

あと千回の晩飯 (朝日文庫)
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死言状〔文庫版〕 (小学館文庫) 人間臨終図巻〈2〉 (徳間文庫) 人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫) 人間臨終図巻〈3〉 (徳間文庫) 風々院風々風々居士―山田風太郎に聞く (ちくま文庫)

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 山田風太郎、晩年の随筆。この本のことは奥川幸子さんの『身体知と言語』のなかに出てきて知った。約1年経って、やっと読んだわけだ。相変わらずやることがのろい。

 まあのろくてもそれなりでいいんだな、と自分を許せるようになるためにはこういう本を読んでおくといい。うまいこと年をとりたいなら、諦めたり、自分を笑ったりする姿勢が必要で、山田風太郎はそれを切なそうに、おもしろそうにやっているんだ。そこがおすすめ。

 そういう老人であるから、同じ話が何度出てきてもまあ愛嬌だ。これで原稿料もらってたのねー、などと妬んでいるようでは大老人にはなれんぞ、自分。

 もとは新聞・雑誌の連載であった。「いろいろな徴候から、晩飯を食うのもあと千回くらいなものだろうと思う」という書き出しは、初出が1994年。それから2年後の随筆まで収録。亡くなったのは、2001年であった。自分の予想より数年長生きされた。この随筆のなかにも出てくる、野生の象のようなわけにはいかなかった。だからなに? それでいいんじゃないかと思うのである。

2010年1月5日(火) 思い出したように更新

[]064:父・こんなこと

父・こんなこと (新潮文庫)
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 幸田文はいつ読んでも,こわい女だと思ってしまう。こんな女が友だちだったら一瞬でも気が抜けないと思ってしまう。翌日どこでどんな悪口を言われるかわかったもんじゃないからだ。それになんだか,毅然としすぎている。本人,自分のことを「かわいげがない」と書いているが,これは謙遜でも誇張でもなく,ほんとにかわいげのない女だと思う。じゃ,友だちになりたくないのかというと,そういうものでもない。こういう人が身の回りにいるというなら,その人自身も身ずまい正しくカッコ良い女なのだろうと思う。うらやましかったりする。

 という幸田文が,父・露伴を看取るまでのことを随筆にした作品。これまただいぶ前に読み終わって長らくここにメモを書かなかったので,どこがどうだったかは定かに覚えていないのだが,父を思い,世間と自分ら家族との位置をおもんばかり,出入りする人々の挙措を見つめる,いちいちが鋭く細かく,客観的でありながら直感的であり,何がどう書かれてあっても100%女であったことをつらつら思い出す。やさしくはないんだよね。自分がコレと決めた人にしかやさしくできない女だ。

 この人の書く文章は,詩みたいだ。どれだけ憧れても誰にもまねはできない。 

2009年12月29日(火) 積み残しを片付ける

[]063:臨床瑣談 続

臨床瑣談 続
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臨床瑣談 精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫) うつ病臨床のエッセンス (笠原嘉臨床論集) 精神科養生のコツ 改訂 日時計の影

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 月刊「みすず」で不定期連載中の中井久夫先生の随筆をまとめた本。水色の表紙だった『臨床瑣談』の続巻です。ブックフェアに行ったとき,ちょうどこれが出た直後でみすず書房のブースで売っていたので即購入。ブックフェアの会場では1割か2割安くしている版元が多くてみすず書房もそうでした。なんかほかにも買って5000円を超してしまたら,オリジナルのエコバッグもくれました。

 な〜んていうどうでもいい話をしてる場合じゃない。年末だ。実は忙しい。

 読んだのは買ってすぐだったから,もうずいぶん経っている。中井久夫はわたしの精神安定剤であって,速効のカンフルだ。このときも,読んです〜っと鎮まった覚えがある。でも何が書いてあったのかは正直,禁煙の章以外ほとんど覚えてない。いずれまた,思い立てば読むんだから覚えていなくてもまあいいんだ。

 禁煙のところでは,中井久夫自身が禁煙したときの体験談が書いてあるんだけども,二日目の夜がいちばんつらかったとあって,それが“嵐の中で大木に必死ですがりついているかのような”と書かれていたものだから,うーむ……と思ってしまって自分にはどうしても無理なような気がし,なかなか禁煙に踏み切れなくなってしまった。こういう副作用は,忠実な中井信者(わたしは信者ですからw)であるほどシンコク。な〜んていうどうでもいい言い訳はしてもしかたないのはわかっているので,わたしはもうすぐ禁煙をするでしょう,たぶん。

 いま,読んだ本を取り出してみたら,1枚だけ付箋がついていた。さて,どんな箇所にわたしは付箋をしたのだろうか――おぉ,禁煙の章だ。題して「煙草との別れ,酒との別れ」。

・・・・いずれの方法にしても何十パーセントかは再発するというが,いちから始め直す力を持ちつづけることは,再発のたびに重症化してゆかないくらいのプラスになりうるだろう。再発のたびに同一効果をえるためにより強い圧力を患者に加えてしまうという袋小路に入る確率が下るということである。

(p.116)