2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

カルロス四世の家族 小説家の美術ノート 井上靖 ☆☆☆☆

久々の井上靖。やはり、スゴイ。大作家にふさわしく、彼は眼前の名作から、作者の姿を透かし見る。たとえば桂離宮のくだり。「しかし、樹木も敷石も何もあわてて決める必要はない」作者のなにげない機微を説得力のある文にする、観察眼。知ることは、不自由…

「わかっていて」読んでしまった本たち ☆

多忙な時期、読書は易きに流れる。こういう読書を時間の消費という。慰みにすらならない。反省。絶対泣かない/山本文緒/☆を所詮つけられないとをわかっていながら。働く女性、そんな単純なもんかしら、時代差かもしれない。再婚生活/山本文緒/ウツ療養中…

鍵のかかった部屋 ポール・オースター ☆☆☆☆

ひさびさのオースター。自己/他者、追うもの/追われるもの、過去にとらわれえる現在/現在がつくる過去、一人称/三人称の相克。そうそう、この感じ。明快な構図は好みだがやや物足りない。南米系の迷宮がそろそろ恋しい?ねじれ、ゆがむ、あの空間、時間。

プーさんの鼻 俵万智 ☆☆☆☆

なにがかなしくて 短歌をよむのだろう なにかひびくから たまにはいいと思う ひとり夕飯たべるなさけなさ 少しごまかすことばの優しさ

星への旅 吉村昭 ☆☆

気がつけば、女性のエッセイばかり読んでいたので、気分転換。もの書くために、生まれる人もあるのだなあ、と毎度のごとく感心する。けれども読書中断。電車に轢かれたり集団自殺だったりすでに棺の中にいたり、やはり精神衛生上よろしくない。いきいきでき…

かなえられない恋のために 山本文緒 ☆☆

小公女と少女たち きっと似ている。そんな予感がしたのは、幼いころ好きだった本が、バーネットの「小公女」だと彼女がいっていたからです。とかく悩みがちだった、かつての私と同じ選択。彼女の小説に興味はないけれど、以来、彼女の名を意識するようになり…

かーかん、はあい 子どもと本と私 俵万智 ☆☆☆☆

母になった俵万智、大人になって俵万智 自意識過剰!彼女の世界にふれたとき、そう反発したものです。私こそ、「山西記」にいたく共感するような、実に自意識過剰な中学生でした。元新聞記者に俵万智を薦められたのは半年前のこと。母になって感性がまた一皮…

海からの贈物 アン・モロウ・リンドバーグ 吉田健一(訳)☆☆☆☆

すべての女性たちへ この島には空間がある、時間がある―生真面目な良心は世界におしつぶされ、静かな心は日常に駆り立てられる。私たち女性はもう、枯れ果てるまで自らを与えてきてしまった。同時に、与える術を知らず、途方に暮れてもいる。コネチカットの…

白洲正子自伝  ☆☆☆

潔く、それでいて温かい。たしかにそれは薩摩隼人の血かもしれないし、これぞ白洲正子なのかもしれない。―私は幸福だった。というより、この雑木林の前に、明るく開けた野原が見えるが、そこへ行けば幸福が待ちうけているような感じがしたのである。―西国の…

今夜もひとり居酒屋 池内紀 ☆☆

ざくっと斜め読み。手抜きのエッセイの感があり、何より他人の居酒屋論ほどつまらぬものはないようです。場数踏んでなんぼ、我流でなんぼ。 居酒屋の「なんかいい」というところは、ひとりほくそえむ感じと、居合わせた客との連帯感が同居するあたり。「やあ…

異国を楽しむ 池内紀 ☆☆☆

他人の旅論ほどつまらぬものもないようです。それともシットかな。もちろん、旅の土産話は大歓迎。GW明け、たくさんの方から体験話と世界の味をいただいて、早くも一か月以上、経ちました。 エッセイでは、オペラや動物園のくだりが面白い。旅先で非日常と…

ミシュラン三つ星と世界戦略 国末憲人 ☆☆

ここに、3つの職。あなたはどれを選びますか?サービス時間、料金、主な商売道具、そしてお客様との関係は次の通り。A 15分〜1時間半/2000円〜15000円/鋏/鏡の中にお客様の表情の変化を見ながら。 B 数時間〜1日(仕込を含む)/ほぼ上限なし/包丁/…

芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったのか 擬態するニッポンの小説 市川真人 ☆☆☆

村上春樹はダシといってもよく、本書は日本の近現代小説における、近代化・アメリカ(「父性」)へのコンプレックスを解いています。既視感のある展開ですが、わかりやすい読み物でした。ただ村上春樹以降の小説家たちについてはどうでしょう。結びに触れら…

朱の丸御用船 吉村昭 ☆☆☆☆☆

村の文学 読みかけたままにしていた「朱の丸」を再び手にとる。「村」の文学に久しくお目にかからないと、前出の「アヘン王国」できづいたためだ。「一人称単数」の独善にすぎる、ややナルシシズムなお手頃小説とはちがう、人間関係の厚みが村にはあるだろう…

SOUND OF MUSIC ☆☆☆☆

十数年ぶりに観る、不朽の名作。ペギー・ウッド演じる修道院長が、今みても一番慈愛に満ちて、美しかった。勇気づけられます。

アヘン王国潜入記 高野秀行 ☆☆☆☆☆

ビルマにあってビルマでないワ州。そこはアヘン生産の「黄金の三角地帯」。素朴な村人たちと自らケシ栽培に勤しみ、村の酒宴に、そして生や死に立ち会う。その筆者が町でもらしたのひとこと、「世界」はまだ存在していたんだな、というのが率直で印象に残る…

レキシントンの幽霊 村上春樹 ☆☆☆☆

なにもかも、脈略のなさそうなこと、それがなぜかぽつぽつとつながってくること。とてつもない悪意や孤独、ナンセンス、平常や諦め。村上春樹らしさが端的に感じられる良質な短編。

すき・やき 楊逸(ヤン・イー) ☆☆☆

うん、面白いです。主人公、かわいいです。歳とって冷め切った自分を思わずふりかえってしまうのでした。

【yoku yomuご覧のみなさまへ】

今晩も調子にのって飲んだくれ、本の整理を始めました。少しでもカロリー消費を。以下の本、興味のある方は差し上げます。6月いっぱい、里親募集中です。ほかにもブログにアップしている本は八割がた自前なので、読んでみたい!という方はお知らせください…

ALPS!

Heute bin ich nach den Alpen gegangen! Nicht in Europa aber in Japan, die Schönheit verliert nicht!