三年という長さ

死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。

いわゆる必要的弁護事件についての条文である(他に350条の9あたりも参考に)。見ての通り、必要的弁護事件はそれなりに重い罪に限られている。懲役3年というと軽い刑のように思えるが、自分が「3年間シャバからお別れです」といわれた所を想像したら、その重さがわかるだろう。その3年を超える場合に、やっと必要的弁護事件となるのである。
殺人罪は法定刑の上限が死刑であるから、必要的弁護事件の一つである。殺人事件の場合、弁護人がいなければ開廷することができない。殺人事件の弁護人に対し、「人を殺した人間をなぜ弁護するのか!」などという言葉が自称一般人の口から飛び出すことがあるが、誰も弁護しなかったら、たとえその被告人が真犯人であっても刑罰を科すことができなくなってしまうという事実をどう思っているのだろうと思っていた。だが驚いたことに、自称一般人のさらに一部には、必要的弁護事件というものを知らない、あるいは知らなかった人がいることを知った。

光事件ではいろいろなことが起きて、法律の世界と日常生活とのかけ離れていることが分った。
(中略)
死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の場合では、必ず弁護士がつかねばならないこと。

実は、南雲研究室の中でもっとも驚いた記述がこれである。なにしろ「研究室」と銘打っているブログである。滅茶苦茶なことを書いていても、必要的弁護事件等のたいていの人は知っている知識ぐらいは習得しているであろう、知っていてあんなことを書いているのであろうと、内心そうだと思い込んでいた。しかしそれは、単なる私の思い込みに過ぎなかったようである。もしこれが自称一般人というものであれば、「人を殺した人間をなぜ弁護するのか!」などという言葉が出てくるのも納得というものである。平成19年度道弁連大会で「国選弁護に対する報酬の大幅増額を求める決議」が出たが、国民的理解を得ようと思ったら、国選弁護報酬が他国と比べて著しく低いことだけでなく、「必要的弁護事件というものが存在する」こと自体を知らせていかなければならないのではなかろうか。

ちなみに、国選弁護制度について、Yahoo!知恵袋に以下の質問があった。

事件や事故の犯罪者に対して弁護士はどうして弁護なんてするのか解りません。
あきらかに、むごい殺人者なんかは即死刑だと思いませんか?
法律が甘いから平気で殺人をするのでは?と思います
出所してまたすぐ犯罪を犯す人とか・・・
平和な世の中は来ないのでしょうか?

Yahoo!知恵袋らしい質問といえばそれまでだが、それに対して以下の回答があった。

明らかに罪を犯したかどうかを審理するのが裁判です。
判決が出るまでは、犯人ではありません。
犯人を決めるのは裁判所で、警察ではないのです。
警察は、犯人だと思うと被疑者を検察に送り、検察も、そうだと思うと起訴をします。
その警察や、検察の調べた結果が正しいか否かを裁判所で判断するのです。
その場合、警察や検察の言い分だけを聞くのは不公平ですから、被疑者に代わって弁明をするのが弁護人の役目なのです。

Yahoo!知恵袋の回答とは思えない内容である。素晴らしい。しかしベストアンサーに全然別の回答が選ばれているあたり、さすがYahoo!知恵袋といったところか。

第六回雑文祭
お題

  • 題名は「三年」で始まること(例: 三年目の浮気)
  • 「口から飛び出す」「内心そうだと思い込んでいた」「大会」を、この順序で雑文中に含めること。
    • 順序を守ること。たとえば「内心そうだと思い込んでいた」よりも前に「大会」を使ってはならない。
    • お題はそのまま使うこと。漢字をひらいたり、語尾を変えたりするのは不可。

ちなみに五年前に終わっています。