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2014-04-11 放牧ラボ、ブロイラーラボ

放牧ラボとブロイラーラボ〜人材育成の流儀

 昨日の記事で、大学院生が増えたにも関わらず教員が増えず、競争的環境で指導者も業績にならないから、院生が放置されているのではないか、と書きました。

 放置されても、研究者として成功する人はいるので、結局は人による、ということなのでしょうが、実は院生を「自主性」の名のもとに放置するのは、今に始まったことではありません。

 テーマも研究方法も自分で考えろという、いわば「放牧」のような指導方法です。もちろん、まったく「ネグレクト」するわけではなく、教授や先輩がアドバイスしながら、研究方法を学び、研究テーマを決めていきます。

 この方法は極めて効率が悪いわけです。院生は壁にぶち当たり、悩み、考える。時間も必要です。ドロップアウトする院生も出る。

 けれど、ときに「ホンモノ」も生まれます。自分で考え、自分で方法を見つけたので、基盤がしっかりしていてぶれることはありません。「自己流」なのでしょうが、試行錯誤のなかで生まれた自己流なので、イチロー振り子打法王貞治一本足打法のように、しっかりした結果を残します。

 私がかつて所属した浅島誠先生の研究室も「放牧ラボ(研究室)」でした。もちろん研究室のテーマはありましたが、院生が必死に考え、先輩たちから方法を聞いたり、どこかに学びに行ったりして研究していました。論文を書くのも、エディターとのやり取りも、院生主導です。

 この方法だと、インパクトファクターの高い論文をバンバン出す、ということはなかなか難しいです。最初は影響力の低い雑誌にやっと出せる、という感じだと思います。けれど、自力でやっていく力は養えます。

 私は、この「放牧」に耐えられなかったのかもしれません。もうちょっと教えてくれよ、と思ったこともあります。

 けれど、研究者はいずれは独立します。そのとき、この「放牧」経験が生きてきます。院生のときに自主性を重視する教育をするのは、決して悪いことではないと思います。

 ところが、時代は変わりました。研究成果が厳しく求められ、論文生産数、論文のインパクトが重視されます。

 そうなると、悠長に院生の自立を待つ時間がありません。テーマを与え、こうやれ、と細かく指示する。医学系の研究室に多いと思いますが、院生は実験データだけ出すことを求められ、論文は書くことに慣れている教授が書いてしまう。そのほうが効率がよいわけです。院生にとっても、早く論文が出ますし、影響力の高い論文を出すこともできる。次の職を探す上で有利になります。

 ガクシン(日本学術振興会特別研究員)を取るにも、修士2年くらいで論文が出ている必要がある。そうなると、お膳立てされた研究をして論文を書くことが効率がよいわけです。試行錯誤していたら、あっという間に時間が経ってしまいます。

 これが極まると、医者ムラの真実に書きましたが、自分の論文が出たことを知らない院生がいる、ということにもなります。また、院生の行動をカメラで監視する「管理ラボ」、実験データを出すことを厳しく要求される「奴隷ラボ」につながります。ピペドという言葉は、まさにこの状況をあらわす言葉です。

 こういう研究室は「ブロイラーラボ」とでも呼ぶべきでしょうか。


 昔ながらの「放牧」をするラボもまだありますが、院生が増えたことが大きな影響を与えています。

 昔の院生は、放牧されてもなんとかやっていける人が多かったかもしれません。大学進学率が低い時代に大学院まで行くというのは、相当選抜された人材でしょう。そういう人材なら、放置でもよかったかもしれません。

 ところが、大学院生は昔と比べものにならないくらい増えています。以前のように放牧、放置していたら、何をしてよいかわからず右往左往してしまう…

 大学院が「大衆化」した、ということなのかもしれません。しかし、大学院が「大衆化」に対応していなかった…「自主性」「最近の院生はガッツが足りない」と精神論にされてしまい、「大衆化」にあわせた改善がされなかった…

 こうして、「未熟」で「自己流」、「勉強不足」と自認する研究者が生まれてしまった…ちょっと考えすぎでしょうか。


 放牧ラボ、ブロイラーラボ…いずれも大きな問題があるように思います。

 ブロイラーラボで育った人も、業績がありながら、PI(主任研究員)になったとき、自分で研究できなくて、業績がでなくなる、という話も聞きます。

 ラボのマネジメントも、考え直す時期に来ているのかもしれません。

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