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2014-06-02 財政制度等審議会「財政健全化に向けた基本的考え方」にてポスドク問

【ひとこと編集後記】財政制度等審議会「財政健全化に向けた基本的考え方」にてポスドク問題取り上げられる

STAP細胞関連は別項にまとめています。

★財政健全化に向けた基本的考え方(平成26年5月30日)

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia260530/index.htm

財政制度等審議会が5月30日に発表した資料です。

ポストドクターについて

これまで、少子高齢化により大学の教員ポストの増加が見込めない状況にあったにもかかわらず、「我が国の研究開発能力を強化する」との名目の下、ポストドクターの増加が図られてきた。その結果、ポストドクターの総数は、1996 年には6,274 人であったものが2009 年には17,116 人と約2.7 倍に増加した一方、大学における若手教員数は、1998 年に36,773 人であったものが2010 年には34,779 人と減少し、大量に増加したポストドクターの受け皿として不足を来している。このため、本来は「研究者キャリアパスのステップ」として位置づけられていたはずのポストドクターの状態が、現実には継続・長期化する傾向にある。〔資料II−4−15 参照〕

また、ポストドクターの分野別の内訳を見ると、例えば、生物系のポストドクターは人数が多いにもかかわらず、他の専攻と比べて教員や研究職への転換が進んでいないなど、分野別にも偏在が見られる。〔資料II−4−16 参照〕

こうした問題を解決するため、ポストドクターが能力に応じたキャリアパスを的確に描けるようにしていく必要がある。具体的には、年俸制や混合給与の導入加速化によるシニア教員から若手研究者へのポスト振替等の推進や、産業界との連携・研究独法との人事交流・海外大学との共同研究を通じたポストドクターの進路の多様化が必要である。同時に、ポストドクターが滞留している学科については、学位授与を厳格に行い定員を抑制するなど供給の適正化を図る必要がある。こうした取組みを率先して行う大学については運営費交付金の配分において重点的に支援する仕組みを導入する一方、努力が不足している大学については縮減を図るなど、予算のメリハリのある配分を検討していく必要がある。

〔資料II−4−17 参照〕

以下、記事にもなっています。

ポスドク」就業、国が支援…研究ポストを拡大

http://www.yomiuri.co.jp/science/20140527-OYT1T50024.html

In Japan, Seeking More Jobs for “Posudoku”

http://sciencecareers.sciencemag.org/career_magazine/previous_issues/articles/2014_05_29/caredit.a1400132

Govt to help postdoc researchers find jobs

http://the-japan-news.com/news/article/0001310387

★科学技術担当大臣等と総合科学技術・イノベーション会議有識者との会合(平成26年5月29日)配布資料

http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20140529.html

分・厚−1人を対象とする医学系研究に関する倫理指針について(PDF形式:405KB)

http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20140529/siryomoko1.pdf

分・厚−2人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(草案)(PDF形式:303KB)

http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20140529/siryomoko2.pdf

★第3回研究開発法人部会(平成26年5月21日)配布資料

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/bukai/3kai/haifu_03.html

資料1国立研究開発法人の目標の策定及び評価に関する指針の作成について(ポイント)(PDF形式:126KB)

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/bukai/3kai/siryo1.pdf

資料2国立研究開発法人の目標の策定及び評価のあるべき姿について(検討)(PDF形式:324KB)

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/bukai/3kai/siryo2.pdf

総務省、平成26年度「独創的な人向け特別枠(仮称)」に係る業務実施機関を公募

http://johokanri.jp/stiupdates/technique/2014/05/009996.html

「和製ジョブズ」育成目指す…総務省が支援事業

http://www.yomiuri.co.jp/it/20140525-OYT1T50090.html

★第8回経済財政諮問会議

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0527/agenda.html

(1)歳出分野の重点化・効率化(教育)・教育再生について

(2)歳出分野の重点化・効率化(社会資本整備・国土強靭化)

(3)歳出分野の重点化・効率化(地方財政)、行政のIT化・業務改革について

(4)その他(財政制度等審議会における議論について)

資料1−1 時代の変化に対応した教育のあり方について(有識者議員提出資料)

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0527/shiryo_01_1.pdf

以下大学改革について触れられています。

大学改革について

○ 日本では、大学数の増加に加え18歳人口減少の影響もあり、90年代以降大学進学率は大幅に上昇しているが、日本の大学生の学修時間は、米国と比較すると大幅に少ない状況。大学教育において、学生数の確保といった発想では

なく、学生の人的能力を高める教育の質の向上を強化すべきである。このため、

・ 大学による厳格な成績評価や卒業認定の厳格化1を進めるとともに、企業においても中途採用枠を増やして学生の能力・スキルを重視した採用活動に転換していくべき。

・ 英語による授業の単位取得の必修化、文系・理系の垣根のないリベラル・アーツ教育の強化をすべき。

人財育成は我が国産業界にとっても極めて重要であることから、産業界・大学双方の連携によって、奨学金等の支援拡充や授業内容の充実を一層図るべき。また、国立大学授業料は、各大学の学部・学科毎に柔軟に設定2し、併せて、各大学における成績優秀者への授業料免除や多様な奨学金(地元就職の場合の返済免除型等)の導入等の学生支援の取組を充実すべき。

国立大学においても、教育研究の質の向上に向け、PDCAサイクルの確立が重要。

・ 可能な限り定量的な指標を用い、卒業生を雇用する企業等への調査を含め、教育、研究、地域貢献など大学の機能毎に比較可能な形で整理した上で第三者評価を交えた上で、公表すべき。

・ こうした成績評価を運営費交付金の配分に的確に反映し、教育の質の向上に努力した大学が報われるようにすべき3。また、国立大学独自の資金確保の努力を促進すべき。そのインセンティブとして、外部研究資金の確保の状況を運営費

交付金の配分に際し、積極的に評価に取り入れるべき。

・ 大学教員が研究や教育に専念出来るよう、事務スタッフの配置・増員や大学のガバナンスの見直しをすべき。

各大学の強みを活かす改革を促進すべき。具体的には、

・ 特に理工系研究について、世界トップレベルの研究を目指す大学及び大学院においては飛び入学4を実施し、若い時点から研究経験を積ませるとともに、若手へのポスト振替をすすめ、世界最高水準の研究人財を育成すべき。

・ 地域の国立大学においては、各地域の得意分野(農学水産学環境学鉱山学等)を活かす優れた教育、研究拠点(リージョナルCOE)を創設・選定し、特色ある人財育成、地域貢献を果たすべき。

★大学・公的機関における研究開発に関するデータの整備−ミクロデータ分析への貢献−[NISTEP NOTE(政策のための科学) No.11]の公表について

http://www.nistep.go.jp/archives/16898

★「健康長寿社会の実現に向けた疾病の予知予防・診断・治療技術の俯瞰-生活習慣

病(2型糖尿病)を対象として-」[調査資料-227]、「課題解決型シナリオプランニング

向けた科学技術予測調査-生活習慣病2型糖尿病)を対象として-」[NISTEP NOTE(政

策のための科学) No.10] の公表について

http://www.nistep.go.jp/archives/16786

サイエンスアゴラ2014企画出展の募集について

http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/

★「知的財産推進計画2014」の策定に向けた意見募集の結果について

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ikenbosyu/2014keikaku/kekka.html

★WHO postpones decision on destruction of smallpox stocks - again

http://blogs.nature.com/news/2014/05/who-postpones-decision-on-destruction-of-smallpox-stocks-again.html

★Nine Scientists Share Three Kavli Prizes

http://news.sciencemag.org/people-events/2014/05/nine-scientists-share-three-kavli-prizes

★Six Scientists Snare Shaw Prizes

http://news.sciencemag.org/people-events/2014/05/six-scientists-snare-shaw-prizes

★米、科学教師を10万人養成 10年で35億円投じ教育強化

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2800F_Y4A520C1EAF000/

★E.U. Commission Rejects Plea to Block Stem Cell Research Funding

http://news.sciencemag.org/europe/2014/05/e-u-commission-rejects-plea-block-stem-cell-research-funding

European Commission rejects petition on embryonic stem cells

http://blogs.nature.com/news/2014/05/european-commission-rejects-petition-on-embryonic-stem-cells.html

★Inside View: Euroscience Open Forum 2014

http://www.nature.com/naturejobs/science/articles/10.1038/nj0423

★German Politicians Break Research Funding Impasse

http://news.sciencemag.org/education/2014/05/german-politicians-break-research-funding-impasse

OECDデータとの格闘終わる・・・日本の論文数停滞・減少のメカニズム決定版!!(国大協報告書草案14)

http://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/7666f035ad385a95188332742fa332de

非常に重要な資料です。

★14歳の天才・日本人少年をカナダのトップ大学が奨学金付きで獲得合戦

http://news.nicovideo.jp/watch/nw1088459

★大学自治壊す学校教育法改悪案

若手研究者の将来奪う

廃案へ関係者らがアピール

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-31/2014053114_01_1.html

★--研究者時計--

http://www.kenkyusya-tokei.skr.jp/top.html

★復刊決定です!

背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062190958?tag=sciencepolicy-22

6月20日発売です。すでにamazonランクでは上位に。この問題を知りたい読者が多くいるということでしょう。

アカデミック大爆破

博士号取って働けば死!ブラック研究室に散れ!

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/24107

6月14日(土)、ロフト・プラスワンWEST (なんば)にてSSA代表榎木がお話させていただきます。

★第32回国立試験研究機関全国交流集会 日時:6月20日(金)会場:つくば国際会議場101号室

集会テーマ『安倍政権の下でどう変わる?国立研究機関』    

 主催:   国立試験研究機関全国交流集会実行委員会 【 学研労協 ・ 国公労連 】

 記念講演 「STAP 細胞問題と研究者社会的責任

  講演者  榎木英介氏  (サイエンス・サポート・アソシエーション代表)

  パネルディスカッション

       ・「STAP 細胞問題と研究機関の社会的責任

       ・ 奨学金などで貧困に陥る若手研究者ポスドク問題

       ・ 国立研究開発法人制度の検証など

http://gkn-rkyo.sakura.ne.jp/

★第73回 中崎北天満サイエンスカフェ

「研究現場はどうなっているのか? STAP細胞事件から考える」

2014年6月21日(土)14時〜16時

SSA代表榎木がお話させていただきます。

まぐまぐメルマガバックナンバー

http://archive.mag2.com/0000116394/index.html

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http://melma.com/backnumber_106623/

2014-02-01 安易に生命科学者を目指してはいけない

それでもあえて言う。安易に生命科学者を目指してはいけない

 理研発生再生研の研究者らの発表は、世界を驚かせました。

体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見−細胞外刺激による細胞ストレスが高効率に万能細胞を誘導−

細胞外からの強いストレスが多能性幹細胞を生み出す

 私もかつて、浅島誠博士の研究室で発生生物学の研究をしていたこともあり、多少発生生物学の知識がありましたので、仰天するほどすごい成果だと思いました。あと、私自身筆頭著者の小保方晴子博士が卒業した早稲田大学理工学部応用化学科に一年間だけ通ったこともあり、その点でも刺激を受けました。まあ、あくまで個人的なことではありますが…

なぜSTAP細胞は驚くべき発見なのか――STAP細胞が映し出すもの 八代嘉美 / 幹細胞生物学

 筆頭著者の小保方晴子博士に関する報道が加熱し、小保方博士個人のプライベートや容姿などに関することが話題になっている点も議論になっています。

「デート」「ファッション好き」革命的研究者の紹介に見る根深い新聞のおっさん思考

STAP細胞研究の小保方晴子博士が「研究活動に支障が出ている」と報道機関にお願い

一晩中泣き明かした30歳若手女性研究者と書く我が国にはゴシップ新聞しかないらしい

 これはこれで論じるべき問題だと思いますが、ここでは上記の記事の紹介にとどめ、あまり語られていない点を述べたいと思います。

 これだけ報道され、また、生物学の教科書を書き換えるような大きな成果ですから、子どもたちを含めた若い人たちが、生命科学、発生生物学再生医学に興味を持ったとしても不思議ではありません。私が中学生や高校生だったら、よし、生命科学研究者になるぞ、と思ったでしょう。

 また、今研究者になるか迷っている学部生くらいだと、大学院行くぞ、と思うかもしれません。

 人の人生を変えるくらい大きな成果だと思います。「理科離れ」を憂いている方々は、このニュースを喜んだでしょう。また、男女共同参画社会を推進している方々にとっても嬉しいでしょう。私自身、「女子中高生のための関西科学塾」に長年携わっているので、他人ごとではありません。

 だだ、この熱狂のなか、あえて水を差すようなことを言いたいと思います。

 安易に生命科学者を目指してはいけない、と。

 私はかつて、生命科学研究者を志していました。残念ながらまったくものにならず挫折したわけです。そういう経験を経たものから言わせていただくと、生命科学の研究というのは、自分でもデカイ成果が出せると思わせるところがあります。これが、結構厄介だと思います。人生を「こじらせる」原因になるかもしれません。

 実験系は多かれ少なかれそういう傾向ありますが、労働集約的で、実験の量がモノを言い、やったもの勝ちみたいなところがあります*1。自分の能力(口悪い言い方で言えば、アタマの「スペック」)が早々に分かる数物系とは違います。

 だから、一発逆転サヨナラ満塁ホームランにかけて研究を続けてしまうということがおきます。

 どういうことかというと、あとちょっと研究したら、大きな成果が出るかもしれない、もうちょっと、もうちょっと、とズルズルと研究してしまうようなことが起こるのです。こんなに長い間やったんだから、ここまでやったんだから、と思ってしまいます。辞めどきが難しいのです。こういう状態を「こじらせる」と表現したわけです。

 実際、私がかつて所属した生化学若い研究者の会の先輩Kさんは、博士課程を6年までやって、最後に生命科学の最高峰と言われる論文雑誌Cellに研究成果が出ました。

 でも成功できるのはごく一握りです。多くは研究以外の道で食っていく必要があります。

 今後たくさんの若者が生命科学者を目指したりすると、40歳でたいした成果がでなくて、けど別の道に転身したくても、どこにも行き先がないという人がたくさん出てくるかもしれません(今でもたくさんいます)。

 生命科学は、他の分野に比べて、民間企業に勤務することが難しいという実態があります。私は、文科省ポストドクター・インターンシップ推進事業の審査をしていましたが、どの大学、研究機関も、生命科学系の院生やポスドク民間企業インターンシップとして受け入れてもらうのが難しいと言っていました。

 生命科学に関する産業の規模が小さいことも大きな要因でしょう。また、物理や数学の知識に乏しい点が問題になっているという話も聞きます。

 博士やポスドクに対する社会、政治の目もきびしい。ずっと研究ばかりやっている博士に対し、「実社会から逃避して、大学に留まる人」などとけんもほろろに言っているわけです(行政刷新会議 事業仕分けなど)。

 だから、ここであえて言いたいわけです。本当に生命科学研究者になる覚悟ありますか、現実知っていますか、と。

 それでも行きたい、という人しか、大学院に行ってはいけないと思います*2

 かつてこじらせかけた*3私の役割は、「もうこの辺でいいだろ」「別の世界で活躍しようよ」と言い続けること、そして、青春?をかけて研究した「チャレンジャー」を、社会の様々な場所に売り込むことだと思って、今後も変わらず活動を続けていきたいと思っています。

 参考書籍

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

ここで書いたようなことはだいたいこの本に書いています。

現実知って大学院に進学してほしいという思いで、ネガティブ情報も含め盛り込みました。

*1:近年はさすがに研究が成熟してきており、必ずしも研究量を増やせばよい、というものでなくなってきているのは事実ではありますが

*2:まあ、このあたり、ミュージシャンやスポーツ選手と同じという意見もありますが、ミュージシャンやスポーツ選手の成功確率の低さはみんな知っていますし、若くして見切りつけられるので…ところが研究者は…というわけであえて言っているわけです

*3:私の場合、君は向いてないよ、とボスの浅島先生に言われて、博士中退して方向転換しました。そのときは浅島先生を恨みましたが(・_・;)今となっては心から感謝しています。こじらせることなく、キッパリと方向転換して今があるわけですから。

2013-11-27 研究開発力強化法改正をめぐる院内集会にて発表

研究開発力強化法改正に関する院内集会発表資料。

本日、「研究者を10年で使い捨て」で本当に研究開発力はUPするのか?〜ストップ! 「研究開発力強化法改正案」 緊急集会〜

呼びかけ人(団体):東京地区大学教職員組合協議会議長・荒井竜一

首都圏大学非常勤講師組合委員長・松村比奈子

関西圏大学非常勤講師組合委員長・新屋敷 健

に参加し、お話しました。

研究開発力強化法改正案は、本日正午、衆院文部科学員会に提出されたとのこと。来週には衆院を通り、参院に送られるそうです。

必ずしも全面的に法改正に反対というわけではありませんが、少なくとも、総合科学技術会議も、そして研究者自身も知らない間にことが進んでいる事態に強い懸念を感じています。

もっとじっくりと議論し、競争と安定を両立するような制度設計を考えるべきだと思っています。

2012-01-29 ポスドク最新データ

ポスドクの最新データ

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【ひとこと編集後記】

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■433号に掲載できなかった外国ニュースをお届けします。

科学技術政策研究所から

ポストドクター等の雇用・進路に関する調査

−大学 ・ 公的研究機関への全数調査 (2009 年度実績)− 

http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat202j/idx202j.html

が出ました。

「従来から行っていたポストドクター等の雇用状況の調査に加えて、職種変更・転出に関する調査を初めて行い、全数調査からポストドクター等の進路を明らかにすることが可能となりました」

とのことです。

以下プレスリリースや概略から抜粋

「2009 年度内でポストドクター等として計上された人数が最も多かった月は 11 月であり、同月におけるポストドクター等の総数は 15,220 人」

「2009 年 11 月在籍のポストドクター等の分野内訳を見ると、理学が最も多く 31%(4,754人)を占め、工学の 28%(4,267 人)」「人文・社会科学は 14%(2,133人)、保健は 14%(2,107 人)、農学は 11%(1,641 人)」

「競争的資金等の外部資金雇用されている者が 46%(6,990 人)」

「2009 年 11 月在籍のポストドクター等の中で、2010 年 4 月 1 日までに職種を変更したことが判別できた者 2,217 人に限定して職種変更後の職業を見ると、大学教員となった者が 56%(1,239 人)、公的研究機関等の研究開発職が 14%(229 人)、民間企業の研究開発職が 8%(176 人)」

「2009 年 11 月に在籍していたポストドクター等の年齢層内訳を 5 歳区分で見ると、30〜34 歳が最も割合が高く 42%を占めてい」る

40歳以上は12.5%。

2008年度は18000人でしたから、だいぶ減った印象です。重複を排除したのが理由とのこと。

前回データとの比較ができないので、これをどう評価すればよいのか分かりませんが、もしポスドク雇用情勢が改善しているのなら、喜ばしいとは思います。

もう少しデータを詳しく見てみたいと思います。

E.E

http://twitter.com/enodon

researchmap

http://researchmap.jp/enodon

最近はFacebookに書きこむ率が高いです。

https://www.facebook.com/enodon

Google+はあまり書きこんでいませんが…

https://plus.google.com/u/0/106037507954237537783/posts

【世界のニュース】

●How to tell policymakers about scientific uncertainty

http://www.scidev.net/en/science-communication/practical-guides/how-to-tell-policymakers-about-scientific-uncertainty-1.html

●Whistleblower Uses YouTube to Assert Claims of Scientific Misconduct

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/whistleblower-uses-youtube-to-assert.html

●Gates Foundation Boosts Coffers of Financially Strapped Global Fund

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/gates-foundation-boosts-coffers.html

●A Central Researcher in the H5N1 Flu Debate Breaks His Silence

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/a-central-researcher-in-the-h5n1.html

●Leukemia Drug and Magnet Material Net Japan Prizes

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/leukemia-drug-and-magnet-materia.html

●Global Fund Leader Quits After Board Appoints New General Manager

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/global-fund-leader-quits-after.html

Stem Cells Build a Better Rat Penis

http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/01/stem-cells-build-a-better-rat-pe.html

●Flu Researcher Ron Fouchier: 'It's a Pity That It Has to Come to This'

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/flu-researcher-ron-fouchier-its.html

●H5N1: Flu transmission work is urgent

Yoshihiro Kawaoka

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature10884.html

●Special: Mutant Flu

http://www.nature.com/news/specials/mutantflu/index.html

●Caution urged for mutant flu work

http://www.nature.com/news/caution-urged-for-mutant-flu-work-1.9882

●Crafoord Prizes for 2012 awarded

http://blogs.nature.com/news/2012/01/crafoord-prizes-for-2012-awarded.html

●Breakthrough in quest to turn seaweed into biofuels

http://www.scidev.net/en/climate-change-and-energy/biofuels/news/breakthrough-in-quest-to-turn-seaweed-into-biofuels-1.html

●Don't wait for wealth ― better health needs basic tools

http://www.scidev.net/en/health/opinions/don-t-wait-for-wealth-better-health-needs-basic-tools-1.html

●Don't teach maths and science in English

http://www.scidev.net/en/south-east-asia/opinions/don-t-teach-maths-and-science-in-english-1.html

●Break down boundaries in climate research

http://www.nature.com/news/break-down-boundaries-in-climate-research-1.9844

●Finding philanthropy: Like it? Pay for it

http://www.nature.com/news/finding-philanthropy-like-it-pay-for-it-1.9815

●Alternative funding: Sponsor my science

http://www.nature.com/news/alternative-funding-sponsor-my-science-1.9814

●Outreach: Field hospitality

http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7381/full/nj7381-399a.html

【アメリカ】

●NRC Report Calls for New Nano Safety Research Strategy

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/nrc-report-calls-for-new-nano-safety.html

▼FOR IMMEDIATE RELEASE

Health and Environmental Effects of Nanomaterials Remain Uncertain;

Cohesive Research Plan Needed to Help Avoid Potential Risks From Rapidly Evolving Technology

http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=13347

●White House Gives Up on NOAA Science Chief Nomination

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/white-house-gives-up-on-noaa.html

●HHMI Funds 28 Young Scientific Stars Abroad

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/hhmi-funds-28-young-scientific.html

●Smithsonian Director to Take Over Wildlife Conservation Society

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/smithsonian-director-to-take-over.html

●NIH Examines What Drove Its Grant Success Rate to a Record Low

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/nih-examines-what-drove-its-grant.html

●Candidates play to the right on science

http://www.nature.com/news/candidates-play-to-the-right-on-science-1.9884

●Fleshing out the US Alzheimer's strategy

http://www.nature.com/news/fleshing-out-the-us-alzheimer-s-strategy-1.9856

●An astronaut and a scientist

NASA science chief seeks a better union between human exploration and science

http://www.nature.com/news/an-astronaut-and-a-scientist-1.9835

●Support and some questions raised about proposed reorganization of genome institute

http://blogs.nature.com/news/2012/01/support-and-some-questions-raised-about-proposed-reorganization-of-genome-institute.html

●NIH salary cap falls by $20,000

http://blogs.nature.com/news/2012/01/nih-salary-cap-falls-by-20000.html

●U.S. Companies Doing More of Their Research Hiring Overseas

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/us-companies-doing-more-of-their.html

●Education Advocates Enter the Climate Tempest

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/education-advocates-enter-the.html

●Rough Sailing for Plan to Move NOAA?

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/rough-sailing-for-plan-to-move.html

●What Would Wiping Out the Commerce Department Mean for Science?

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/what-would-wiping-out-the-commerce.html

●Database tallies US emissions

http://www.nature.com/news/database-tallies-us-emissions-1.9817

●Gemini's twin telescopes reboot

http://www.nature.com/news/gemini-s-twin-telescopes-reboot-1.9824

●Jackson Lab to expand

Biomedical institute finalizes plans to open facility in Connecticut.

http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7381/full/nj7381-401b.html

●Scientists miss their peak

The average age of US researchers getting their first grant is on the rise.

http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7381/full/nj7381-401c.html

【イギリス】

●UK sets sights on gene therapy in eggs

http://www.nature.com/news/uk-sets-sights-on-gene-therapy-in-eggs-1.9883

●U.K. Looks for Way Through Misconduct Maze

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/uk-looks-for-way-through-misconduct.html

●British prospects grim

Job security for junior academics set to fall.

http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7381/full/nj7381-401a.html

【アジア】

●Research in Asia heats up

http://www.nature.com/news/research-in-asia-heats-up-1.9885

●Asian countries collectively top US R&D spend

http://www.scidev.net/en/science-and-innovation-policy/finance/news/asian-countries-collectively-top-us-r-d-spend.html

▼SCIENCE AND ENGINEERING INDICATORS 2012

http://www.nsf.gov/statistics/seind12/

【日本】

●Japanese Experts Question Safety of―and Need for―Nuclear Power

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/japanese-experts-question-safety.html

●University of Tokyo Considers Shifting Academic Year

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/university-of-tokyo-considers.html

Japan's Reconstruction Plans Hit Some Walls

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/japans-reconstruction-plans-hit.html

中国

●Cultural history holds back Chinese research

http://www.nature.com/news/cultural-history-holds-back-chinese-research-1.9901

●China: The gates are open

http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7382/full/nj7382-535a.html

【韓国】

●現代自、米名門大出身者の就職志望が急増

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/01/22/2012012200064.html

●“グローバル専門企業”育成のための政府R&D支援パラダイム転換中小・中堅企業のR&D

能力強化のために3機関(国家科技委・知識経済部・中小企業庁)共同戦略の策定

http://crds.jst.go.jp/watcher/data/20120127-004.html

【イスラエル】

●Israeli Company's E.U. Funding Under Scrutiny

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/israeli-companys-eu-funding-under.html

【インド】

●Fines expose failings in policing of Indian drug trials

http://www.nature.com/news/fines-expose-failings-in-policing-of-indian-drug-trials-1.9846

http://www.scidev.net/en/health/clinical-ethics/news/fines-expose-failings-in-policing-of-indian-drug-trials.html

●Indian government denies tuberculosis claim

http://blogs.nature.com/news/2012/01/indian-government-denies-tuberculosis-claim.html

●Indian scientists visit Pakistan

http://www.scidev.net/en/science-and-innovation-policy/south-south-cooperation/news/indian-scientists-visit-pakistan.html

【フランス】

●French institute prepares for gene-therapy push

http://www.nature.com/news/french-institute-prepares-for-gene-therapy-push-1.9898

【スペイン】

●Spanish Secretary of State for Science Promises to 'Do the Impossible'

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/spanish-secretary-of-state-for.html

【欧州】

●European Commission slammed for links to West Bank lab

http://www.nature.com/news/european-commission-slammed-for-links-to-west-banklab-1.9857

【イタリア】

●Italian Official Added to List of Defendants in Earthquake Trial

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/italian-official-added-to-list.html

【ロシア】

●Russian drug law hinders clinical trials

http://www.nature.com/news/russian-drug-law-hinders-clinical-trials-1.9845

【南米】

●Brazil chooses a scientist for science minister

http://www.scidev.net/en/latin-america-and-caribbean/news/brazil-chooses-a-scientist-for-science-minister-.html

●For Its New Science Minister Brazil Picks ... A Scientist

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/for-its-new-science-minister-brazil.html

●Ecuador launches its largest overseas scholarship scheme

http://www.scidev.net/en/latin-america-and-caribbean/news/ecuador-launches-its-largest-overseas-scholarship-scheme.html

【アフリカ】

●Egypt's scientists savour post-revolution year

http://www.scidev.net/en/science-and-innovation-policy/science-in-the-islamic-world/news/egypt-s-scientists-savour-post-revolution-year.html

●Egypt's scientists savour post-revolution year

http://www.nature.com/news/egypt-s-scientists-savour-post-revolution-year-1.9875

●Radioactive material stolen in Egypt

http://www.nature.com/news/radioactive-material-stolen-in-egypt-1.9867

●Morocco fireball yields rare Mars meteorites

http://blogs.nature.com/news/2012/01/morocco-fireball-yields-rare-mars-meteorite.html

●Colombia's mining royalties divide scientists

http://www.scidev.net/en/science-and-innovation-policy/finance/news/colombia-s-mining-royalties-divide-scientists.html

2011-04-25 「博士漂流時代」科学ジャーナリスト賞受賞

「博士漂流時代」が科学ジャーナリスト賞を受賞

(再追記)

日本科学技術ジャーナリスト会議のページに掲載されました。

科学ジャーナリスト賞2011 の受賞者が決定!

【科学ジャーナリスト大賞】

日本放送協会広島放送局

  チーフプロデューサー 春原(すのはら)雄策 殿

  同

  ディレクター     松木 秀文 殿

『封印された原爆報告書』の番組に対して

・授賞理由

――原爆被災者に対して日本自らがおこなった医学的調査の報告書を、密かに米国に渡して核戦略に利用されていたという驚くべき事実を掘り起こし、スクープ・ドキュメンタリーしてまとめあげた見事な作品。

【科学ジャーナリスト賞】(順不同)

病理診断医、 任意団体サイエンス・サポート・アソシエーション代表

  榎木 英介 殿

「博士漂流時代 『余った博士』はどうなるか?」

(ディスカバー・トゥエンティワン)の著作に対して

・授賞理由

――いわゆるポスドク問題、博士余剰の実態、原因、問題点などを多くのデータを示して浮き彫りにし、鋭く分析したうえ、これからどうすべきか著者なりの解決策も提言している。時宜にかなった好著。

京都大学霊長類研究所長、国際高等研究所学術参与

  松沢 哲郎 殿

『想像するちから―チンパンジーが教えてくれた人間の心』

(岩波書店)の著作に対して

・授賞理由

――30年におよぶチンパンジー研究の成果を「こころ」というキーワードに凝縮して分かりやすく解説した。科学者が自らの研究内容と「科学者のこころ」を伝える優れた啓蒙書の見本ともいうべきもの。

このブログを書いた時点でウェブページには未掲載ですが(追記:毎日新聞で報道されました→科学ジャーナリスト大賞:NHK広島放送局員に)、拙書

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

が、日本科学技術ジャーナリスト会議の「科学ジャーナリスト賞」を受賞することになりました。

ひとえに機会を与えてくださったディスカヴァー・トゥエンティワンの皆様、インタビューに答えてくださった橋本昌隆さん、vikingjpnさん、小林信一さん、奥井隆雄さん、そしてこれまで活動を支えてくださったすべての皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。

震災以来、ポスドク問題や博士の問題を語るどころではない状態であり、受賞に浮かれている余裕はありません。

これからも、科学と社会のあり方を考え、活動を続けていきたいと思っています。どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。

2011-03-23 成長戦略と博士

野村総合研究所 真・成長戦略としての科学技術系博士人材の育成

以下の資料が公表されました。

野村総合研究所 「NRIパブリックマネジメントレビュー」 2011年3月号

真・成長戦略としての科学技術系博士人材の育成

社会システムコンサルティング部 佐藤 将史

社会システムコンサルティング部 岩瀬 健太

博士と社会のミスマッチをどうするかという点を考察しており、「日本版AAAS」に言及しています。ご紹介まで。

2010-11-24 博士漂流時代に込めた思い

博士漂流時代で言いたかったこと

 すでにお伝えしてきているが、2010年11月16日、ディスカヴァー・トゥエンティワンより「博士漂流時代」を上梓した。

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

 発売一週間だが、幸いにして好評で、amazonのランキングでも最高700位程度になったこともある。

 ここで、この本を上梓するに至った過程を振り返り、この本に込めた思いを述べたい。

 「ポスドク問題の本を書きませんか」と執筆のお話をいただいたのは、2009年10月だった。

 文量は10万から13万字。ディスカヴァーが新たに立ち上げる科学新書の一つとして出版されるとのことだった。

 是非書きます!と即答。

 ただ、この問題について、10万字を超える量の文章を書くことができるのだろうか、と少し不安になったのは事実。

 また、この問題には、すでに

があり、また、ウェブなどでも散々語られた問題でもあり、どのような切り口で書くべきか、しばし悩んだ。


 そうこうしているうちに、行政刷新会議事業仕分けが、科学界に激震をもたらした。

 このとき思ったのが、誰かを糾弾して金くれ、では社会の支持を得られないということだった。

 残念ながら、このとき目の当たりにしたのは、自分の権利しか主張しない研究者たちだった。ノーベル賞受賞者をはじめとする著名な研究者たちが、科学研究は素晴らしいものである、予算が投入されて当然である、と声高に訴える姿が、はたして一般の人たちに受け入れられるのだろうか、と疑問に思ったのだ。

 もちろん、研究者たちの危機感は共有する。ただ、国に予算がなく、多くの国民が貧困や生活苦に苦しんでいる状況に触れずに、科学は大事だ、支持されて当然だ、と開き直っていいものか、と思ったのだ。

 私自身も、集会を開いたり、特別研究員制度の内定切りがないようにと、いろいろ動いたのだが、その中で、どのような本を書くべきか、だんだんと内容が固まっていった。

 空いた時間を使い、すこしづつ書き続けていった。この問題に少しでも触れている本があれば購入し、情報はエバーノートに集約させていった。

 9月に水月昭道さんが

ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)

ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)

 を上梓されたときは、方向性が重なってしまったかなとちょっと焦ったが、幸いにも補完するような内容だったので、すこしほっとした。

 春が来て、夏が過ぎ、秋の初めに書き終わった。最後のほうには、思いが溢れてきて、校正で120ページも削る事にさえなってしまったくらいだ。


 さて、肝心の内容について触れたい。

 この本で訴えようと思ったことは、知を大切にする社会、知が社会により広く、深く貢献する社会の実現〜サイコムジャパン以来追求してきた「知を駆動力とする社会」の実現だ。

 ポスドクや博士の就職難が語られる中で、知に挑む若者を馬鹿にする言動を見聞きするようになってきた。就職難は、この厳しい経済事情のなかで、ある程度は仕方ない面はある。しかし、大学院に進み、経済的な見返りを求めず、未知なものを探求する稀有な若者たちを、無能だと見下す風潮をなんとかしたかったのも大きい。

 ただ、経済が傾き、生きる事にさえ事欠く人たちが多くいるなかで、博士を救え、だけでいいのか。

 事業仕分けを考える集会の懇親会の場で見たテレビ。2010年に両親から虐待を受けて亡くなった岡本海渡(かいと)君が暴行を受ける映像。酒を飲みながら仕分けを語る我々との間に横たわるものは何か…

 もちろん、それでも研究は大事だ。けれど、それを言うためには、研究者が社会の声をもっと聞き、社会に関心を持たなければならないのではないか。

 水月さんの「高学歴ワーキングプア」は、この問題を世に知らしめた先駆的な本だ。その功績は大きい。しかし、2010年の今、それと同じことをやってはだめだ。博士の置かれた悲惨さを強調しても、理解は得られない。他にももっと苦労している人がいるからだ。

 だから、なるべく客観的な資料を紹介しようと思った。科学技術政策研究所の膨大な調査は、もっと世の中に知られてもいい。しかし、研究者の間でさえ知られていない。

 ウェブで語られる多くの俗説に対する回答は、科学技術政策研究所の資料のなかにあらかた書かれているのだ。それが埋もれているのはもったいない。

 社会のなかの博士という視点を外すことはできない。次世代に何を残せるかという未来の視点も取り入れなければならない。

 世間で流布する文科省陰謀説にも触れなければならないと思った。

 いつも物語は、判で押したように1991年の大学院倍増計画から始まっている。しかし、もしそうなら、1970〜80年代のオーバードクター問題をどう考えるべきなのか。諸外国でもポスドク問題は起きている。

 もちろん文科省、政府や大学の責任はないとは言わないが(そのあたりはきっちり批判させていただいた)、歴史や世界の情勢を無視して語ることはできない。

 終身雇用と年功序列という「日本型雇用」にも触れないといけないと思った。

 事業仕分けのときに、若手研究者はこんなに悲惨なんですよ、と若手を前面に出しているアピールを見た。確かにそうなのだが、少し考えれば、予算が削られることと若手が切られることはイコールではない。ここに、常勤、非常勤研究者の身分の差が広がっていることを痛感させられた。若手はいわば予算獲得のダシなのではないかとさえ思った。

 だから、雇用の流動化に触れた。このあたりは、意見が分かれるかもしれない。今の状況のまま流動化が起これば、安易な解雇の横行など、負の側面が大きすぎるとは思う。

 sivad氏が言われているように雇用の柔軟化のほうが重要かもしれない。

もちろん、様々な分野で博士の技能が活かせることは素晴らしい。ただ、上から一律に流動性を押しつけるとロクなことにならないのは、この10年でだいたい見えたのではないでしょうか。それは立場の弱いものの雇用不安定化を招くだけだし、個々の仕事の性質を考慮しない。

もともと流動的な職業もありますが、それらは仕事が標準化されており、異動のリスクやコストが低く、報酬が十分高い場合です。

逆にいえばそういう状況をつくれば、強制せずとも自動的に流動化するでしょう。

個人的には、雇用の流動化ではなく柔軟化、で対応すべきだと思います。雇用そのものは維持しつつ、仕事を柔軟に変えていく。

 そのあたりは今後も議論を続けていきたい。

 本の最後に引用したのは、

アフリカにょろり旅 (講談社文庫)

アフリカにょろり旅 (講談社文庫)

の一節。

 ここで言いたかったのは、人には知の営みを大切にする心があるはずた、研究者に向けられる声は、知そのものへの否定ではないはずだということだ。

 最後に、4人の識者の方々とのインタビューを掲載した。この問題はいろいろな見方があり、私の見方も一つの見方でしかないからだ。


 本書にアラがあるのは自覚している。物足りないと思われた方がいるかもしれない。

 sivadさんが言われたように、産業政策が薄いのも自覚している。ベンチャー企業にも踏み込んでいないし、水月昭道さんが言われているように、当事者の声は乏しい。

 是非お読みになった皆さんが突っ込んでいただきたい。

 sivadさんが言われているように、博士、ポスドク問題を問題として語るのはこれで終わりにし、次に進みたいと思う。

 宣伝文にもあるように、本書では、希望を書いたつもりだ。問題が深刻なのは重々承知している。しかし、その先には、博士の能力が様々な場面で発揮される希望の未来があると信じている。

 希望は空から降ってくるものじゃない。一人ひとりが作り出すものだ。

 知によって人々が幸せになる社会に向けて、行動する時だ。本書が、そのきっかけになればうれしい。

 

 あとがきで、本書を苗登明さんにささげたいと書いた。

 苗登明さんは、1995年に過労死された中国出身のポスドクで、私は裁判の証人として法廷で証言させていただいたことがある。

 いつか苗さんに、博士一人ひとりの能力がより広く、生かされる社会になったことを報告したいと思っている。

本書に触れたブログ

目次

第1章 博士崩壊

浮かれ気分でいるときに

「博士が100人いるむら」の衝撃

消えた先輩

東大は出たけれど……

医学部に殺到する博士たち

博士はバカ? 

激変する博士、ポスドク

ポストドクターという職業

長時間労働、薄給、不安定―ポスドクの実態

ポスドクの先の絶望

一生ポスドクはあり?

教員がポスドク化する

バイオの無残

心病む博士

もはや博士を目指さない

「高学歴ワーキングプア」の先に……

Column 1 博士とは

第2章 博士はこうして余った

始まりは戦後

余り始めた博士 1970年代

社会問題化する博士浪人

動き出した博士たち

OD問題解決の「秘策」はポスドクにあり

バブル―OD問題の解消

ふたたび大学院生倍増

大学院重点化は東大から

ポスドク1万人計画の誕生

必要だけど余る―ポスドクのパラドックス

予測された「博士余り」

科学者に当事者意識はあるか

博士の21世紀

第3期科学技術基本計画 多様なキャリアパスの支援へ

持参金500万円?

博士の完全雇用

博士余りは世界でも

政府に足りないもの

Column 2 研究室という世界

第3章 「博士が使えない」なんて誰が言った?

博士問題への厳しい意見1 博士は優秀じゃない?

博士問題への厳しい意見2 博士のマインドが問題だ

博士問題への厳しい意見3 自己責任だ

博士問題への厳しい意見4 外国に行けばよい

博士問題への厳しい意見5 もっと困っている人がいる

博士問題への厳しい意見6 博士なんか減らしてしまえ

結局、「適材適所」の問題だ

必要なのは雇用の流動化

不遇の先にあるもの

Column 3 博士の給料

第4章 博士は使わないと損!

活躍させないのは罪

若手研究者の活躍の場を拡大せよ

テニュア・トラックを拡充せよ

独立と自由を与えよ

博士+Xで生きよう

活躍の場は「中間的な科学・技術」

博士の活躍を促すために

Column 4 博士の質

第5章 博士が変える未来

ブダペスト宣言

社会のための科学と博士―科学2・0へ

研究は市民の権利

NPOがつくり出す多様な社会

科学に関わり続けよう

市民の役割

博士が変える未来

付録 博士の就職問題について識者に聞く

橋本昌隆さん「ポスドク問題 文科省と大学の共同謀議」

Vikingjpn氏「ポスドク問題は日本の基礎研究体制の構造的問題」

小林信一さん「このままでは大学院が見捨てられる」

奥井隆雄さん「博士の問題は「専門性」「指向」「能力」に分けて考えよ」

あとがき