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2009-08-31 新政権に望むこと

民主党に望むこと

メールマガジンの巻頭言より

【新政権に望むこと】榎木英介(NPO法人サイコムジャパン)

総選挙が終わった。

大方の予想通り、民主党を中心とする政権が誕生する。第一党が変わることによる政権交代は62年ぶりだという。

新政権は科学技術に対し、どのように取り組むのだろうか。

私たちの公開質問状に対する回答から、あらためて考えてみたい。

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090808/p1

マニフェストにもあったが、

  • 「科学技術戦略本部(仮称)」を、現在の総合科学技術会議を改組して内閣総理大臣のもとに設置

というのが、新政権の大きな目玉となる。

  • 「科学技術政策の基本戦略並びに予算方針を策定し、省庁横断的な研究プロジェクトや基礎研究と実用化の一体的な推進を図り、プロジェクトの評価を国会に報告する」

としている。

省庁の枠に縛られているといわれる科学技術予算を、トップダウンでもっと柔軟なものにするということだろう。

先週も述べたが、この「科学技術戦略本部(仮称)」がどのようなものになるのか、注目したい。

民主党にはたして科学技術に精通する議員はいるのか、という疑問が文部科学省から呈されているが*1、博士号をもつ鳩山代表、弁理士である管直人代表代行など、理工系出身者が要所にいる同党、民間や学界も含めて、人材の登用を柔軟に行えば、活路は開かれるかもしれない。

  • 民間セクターの投資が期待しにくい分野の増加に伴い、科学技術予算は、今後いっそう増額していく必要がある

と述べている。しかし、自公政権下でも科学技術予算は増額されていたので、どのように予算を配分するのか、ということになるだろう。「科学技術戦略本部(仮称)」にどのような人材を採用するのかが大きなカギを握るだろう。

さて、私たちが最も関心が深いのは、科学技術を担う人材の育成である。

これに関して民主党

  • 幅広く研究者や各研究機関の意欲を高め、研究の質の向上させていくためには、組織単位の補助金を増やすのではなく、研究内容そのものに着目し、研究者単位で資金を配分すべきである。
  • こうした施策を展開していく中で、若手の博士号取得者、研究者の雇用の確保、生活の向上に資する環境を整備していく。

と述べている。やや具体性に乏しいものの、研究費の過度な集中を改め、研究のすそ野を広げると方向に向かうと解釈する。また、ポストドクター問題とは明記していないものの、博士の雇用問題にも取り組むと明記している。

こうした施策の元になるのが、自公民の超党派で成立した議員立法「研究開発力強化法案」

正式名称

研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H20/H20HO063.html

だ。第二節 若年研究者等の能力の活用等で、「若年研究者等の能力の活用を図る」「若年研究者等の能力の活用の促進に必要な施策を講ずる」と明記されている。

与野党で相違点はすくない課題なので、具体的施策の実行を望む。

その他、国立大学法人化の見直しや、最先端研究開発支援プログラムがどうなるかという問題があるが*2、今後の動きに注目したい。


さて、方法論はさておき、民主党政権が取り組んでもらいたい課題は、個々の研究者の才能がのびのびと発揮される研究システムの構築だ。

自公政権下の科学は、予算の増加が継続的になされ、プロジェクト中心型の研究が行われた。小泉首相は科学の応援団と言われ、第3期科学技術基本計画でも25兆円の資金が投入される。

ノーベル賞受賞者が誕生し、iPSなど大きな成果も生まれている。

しかし、特定の研究者に過剰な資金が投入され、使わない研究機材が多数購入されるという弊害も生じた。また、プロジェクト終了後に、ポスドクが大量解雇されるという人材の問題も生じている。

経済界の論理が優先されているとの批判もなされている*3

民主党政権には、こうした前政権が残した課題に取り組んでほしい。

ノーベル賞は、数10年前の成果であるし、iPSは山中教授のアイディアを発掘した目利きである岸本忠三氏がいたからと言われている。将来の成果のためには、ある程度のばら撒き的な予算も必要だろう。少額でも、個の研究者が自由に使える研究費の増額が望まれる。

また、ポスドクなど、博士号を取得した人々の才能を有効に使うシステムを構築してほしい。

自らの政策秘書としてポスドクを登用するなど、具体先を進めてほしい。


最後に、私たち自身も、変わらなければならない。

●●してほしい、と上では書いたが、それだけではだめだ。

現場で何が課題であり、どうすればよいのか、私たち自身が声をあげていかなければ、政策課題として認識されない。博士号取得者に税金を投入することに反対の声は多く、待っているだけでは何も解決しない。

自らの主張を政策に反映させていく、したたかな姿勢を持つことも重要だろう。

政策提言を作り、支持を増やし、それを背景に政権と交渉する、マスコミも含め様々な手段を用いるといった姿勢だ。

前政権と違うと思わせるのは、民主党がNPOなどとの対話の姿勢を見せているところだ。

選挙前に私たちが参加した「市民パワーと民主党の懇談会」*4など、「聞く耳」を持っている印象を受ける。

これが人気取りの単なるパフォーマンスでないことを願いたい。


ダメ、と一言で嘆くのではなく、妄信するのではなく、適度な距離を置き、したたかに政権に向き合う、こうした成熟した科学コミュニティ、NPOを作ることができるか、私たちが問われているのだ。


選挙というお祭りは終わった。これからは日常で、科学政策に向き合っていこう。

2009-08-30 総選挙2009、科学技術政策評価

選挙始まる。科学技術政策評価を今回も…

総選挙で科学技術政策を語るon twitterを行いました。

http://kiwofusi.sakura.ne.jp/hashtag/output.cgi?name=kagakusenkyo&start_id=3623103856&limit=500

にそのときの議論が掲載されています。@kiwofusiさん、ありがとうございました!

以下告知です。

科学政策でヒウィる会8/30を開催します!

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20090830/p1

8月30日20:00頃より、衆議院選挙開票にあわせて科学政策でヒウィる会(別名:科学政策を語る会@ついった)を開催します!

ハッシュタグは「 #kagakusenkyo」。

http://twitter.com/#search?q=%23kagakusenkyo

サイコム代表の榎木さんやカソウケンの内田さんなど日本全国、科学コミュニケーション関連の皆さんが参加予定です。

科学と政治について思うところのあるorちょっと一言いっときたい皆みなさま、ぜひともここでヒウィっときましょう!

【公開質問状に対する回答】

民主党日本共産党国民新党から回答をいただきました。

公開質問状に対する民主党からの回答

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090808/p1

公開質問状に対する日本共産党の回答

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090818/p1

公開質問状に対する国民新党の回答

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090822/p1

sivadさんが感想を述べられています。

科学政策に関する公開質問状、雑感

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20090829/p1

【各党科学技術政策関連マニフェスト

以下に掲載しています。

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090814/p1


この記事は8月30日までトップにおいておきます。

いよいよ総選挙です。

8月30日投票までの40日あまり、私たちは、各党の科学技術政策に注目し、マニフェストの評価等を行います。

過去のマニフェスト評価は以下のとおりです。

2007年参院選

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20070715/p1

2005年総選挙

http://scicom.jp/document/manifesto2005.html

2003年総選挙

http://scicom.jp/mailmag/manifesto2003.html

NPO法に基づき、特定の候補、政党への応援はできませんが、皆さんが投票する際の資料になれば、と考えています。

よろしくお願いいたします。

本科学技術政策クリップ、メールマガジン、あるいは、今回新しい試みとして、twitterを用い、情報提供等を行います。

代表理事榎木のtwitter

http://twitter.com/enodon

どのような活用ができうるのか、まだ模索中ですが、フォローくだされば幸いです。

過去の発言はこちらから

http://twilog.org/enodon

2009-08-24 各党マニフェスト評価

各党マニフェスト評価

深島守(NPO法人サイエンス・コミュニケーション)

 NPO法人サイエンス・コミュニケーションでは、過去3回の選挙に際し、マニフェスト比較を発表した。

2007年参院選

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20070715/p1

2005年総選挙

http://scicom.jp/document/manifesto2005.html

2003年総選挙

http://scicom.jp/mailmag/manifesto2003.html

 今回も各党の政策をながめてみたい。環境、医療政策も科学技術に密接に関わるが、今回は割愛させていただく。

 まず、今回の選挙で感じるのは、ようやく科学技術が選挙の論点の一つになったということだ。

 科学技術に深く関連する高等教育では、給費制奨学金や授業料免除が各党の政策に取り入れられた。以前は共産党を中心とするごく少数の政党の主張だっただけに、大きな変化を感じる。

 また、Nature誌が民主党の政策をとりあげるなど、「政権交代」が取りざたされ、科学技術政策がどのように変化するのか関心が高まっているように感じる。補正予算の動向、国立大学法人の行方など、選挙の結果が研究現場に影響を与える可能性が取りざたされている。

●Japan election sparks science pledges

http://www.nature.com/news/2009/090819/full/460938a.html

 以上の点を踏まえ、科学技術政策に関するマニフェストを評価してみたい。以下、各党の政策の抜粋を分野別に行ったあと、各党を講評したい。

 各党の政策は以下をご参照されたい。

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090814/p1

奨学金

  • 【自民党】
    • 低所得者の授業料無償化、就学援助制度の創設、新たな給付型奨学金の創設
  • 【公明党】
    • 給付型奨学金を創設、無利子奨学金や返還免除制度を拡充
      • 大学ごとの採用枠を撤廃し、1次募集の段階ですべての学生に奨学金が貸与できるようにする
    • 民間企業等による奨学金事業を拡大するための環境を整備
    • 大学等における授業料減免措置を拡充
    • 優秀な大学院生をティーチング・アシスタント等として雇用するなど経済的支援を拡充
  • 民主党
    • 大学などの学生に、希望者全員が受けられる奨学金制度を創設
      • 所得800万円以下の世帯の学生に対し、国公私立大学それぞれの授業料に見合う無利子奨学金の交付を可能にする
      • 所得400万円以下の世帯の学生については、生活費相当額についても奨学金の対象とする
    • 国際人権A規約(締約国160カ国)の13条における「高等教育無償化条項」の留保を撤回し、漸進的に高等教育の無償化を進める
  • 【共産党】
    • 給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強める
      • 国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、返済猶予を拡大
      • 就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設
      • 国公立大学・高専については国及び地方の減免予算枠を引き上げ、東京大学がはじめた「世帯年収400万以下は全員免除」などの制度を全国でおこなえるようにする
    • 国公立大学の授業料減免を広げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくる
    • 国の奨学金をすべて無利子に戻し、一定の収入(年300万円)に達するまで返済猶予
      • 返済なしの「給付制奨学金制度」を創設し、当面、経済的困難をかかえる学生に支給
    • 「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約の「留保」を撤回
  • 【社民党】
    • 高等教育(大学、短期大学、大学院等)の無償化に向け、漸進的な無償化を定めている国際人権規約(社会権13条)の留保を撤回し、無償化をめざす姿勢を明確にする
    • 無利子奨学金の拡充を図るとともに、選考基準については経済的条件のみとする改善も行う
    • 返還義務のない給費奨学金を創設
  • 国民新党
    • 教育の機会均等のため、高校教育の無償化と奨学金の充実を図る
  • 【改革クラブ】
    • 「我が国の宝」である「人材」育成のため、教育に重点的に投資
    • 親・保護者の教育費負担を減らすための給付制の奨学金や税控除を組み合わせ活用
  • 【みんなの党】
    • 高校、専門学校、大学等の高等教育への奨学金制度の拡充(出世払い・返済不要型の活用等。)

高等教育、国立大学

  • 【自民党】
    • OECD諸国並みの公財政教育支出の確保を目指す
    • 国立大学運営費交付金や私学助成の充実等により、高等教育の財政基盤を強化
    • 地方大学を重点的に支援
    • 「留学生30万人計画」を進め、国際化拠点大学30大学を重点的に支援
  • 【公明党】
    • 協定を結んだ他大学等での授業受講を可能とし、取得した単位を自分の大学等の卒業単位とすることができる「授業単位互換制度」を拡充
    • 日本人留学生の20 万人派遣と海外留学生の受け入れ体制の強化
    • 2020 年までに留学生受け入れ30 万人を目指し、当面5年間で大幅な拡大と留学生を受け入れる環境整備を推進
  • 民主党
    • 国立大学法人など公的研究開発法人制度の改善、研究者奨励金制度の創設などにより、大学や研究機関の教育力・研究力を世界トップレベルまで引き上げる
      • 「学生・研究者本位の大学」「創意ある不断の改革を現場から創発する大学」「社会に開かれ、社会と連携・協働する大学」を目指し、「象牙の塔」から「時代が求める人づくり・知恵づくりの拠点」として大学改革を進める
      • 世界的にも低い高等教育予算の水準見直し
      • 産業振興的な側面ばかりでなく、学問・教育的な価値にも十分に配慮を行う
  • 【共産党】
    • OECD加盟国で最下位の教育予算を、早期に平均にまで引き上げ
    • 私学助成を増額し、公私間格差を是正
    • 「基盤的経費の連続削減」を中止し、予算を増額
      • 国立大学法人の運営費交付金を充実
      • 私立大学の経常費二分の一補助を実現
      • 大学関係予算を大幅に引き上げる
    • 「大学の自治」を尊重するルールを確立し、大学の自主的改革を支援
    • 国立大学法人制度を根本的に見直す
      • 大学の自主性を尊重した制度に改める
      • 教授会を基礎にした大学運営と教職員による学長選挙を尊重する制度を確立
    • 独立した配分機関を確立
      • 大学関係者、学術関係者などからなる独立した配分機関の確立と審査内容の公開をはかり、公正に資金配分を決める
      • COE(センター・オブ・エクセレンス、卓越した拠点)予算やGP(グッド・プラクティス、優れた取り組み)予算などを見直す
      • 大学の自主性を尊重するものへ切り替え
    • 私立大学の設置審査を厳正な基準で行うようにし、私学のもつ公共性を高める
      • 私立大学の財政公開を促進し、教職員によるチェック機能を高める
      • 株式会社立大学の制度は廃止し、私立大学(学校法人)として再出発できる環境を整備
    • 任期制教員の無限定な導入や成果主義賃金の導入に反対し、国による誘導策をやめさせる
      • 大学における教育・研究の公共的役割にふさわしく、教員の安定した身分を保障
    • 大学院生が経済的理由で研究を断念しなくてすむように、無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給付制奨学金の導入を実現
    • 日本学生支援機構の奨学金の返済猶予事由を弾力的に運用し、年収300万円に達しない場合に返済を猶予する期限(5年)をなくし、広く適用させる
  • 【社民党】
    • 国立大学・高専運営交付金、私学助成費のシーリング・マイナスの方針を転換

理科教育

  • 【公明党】
    • 子どもの理科離れ対策に取り組む
      • 実験や観察に必要な設備などを充実させるとともに、外部人材を活用した魅力ある授業の実施など理科教育を充実
  • 民主党
    • スーパーサイエンスハイスクール(科学技術・理数教育を重点的に行う学校)を拡充する
    • 産業界の協力を得て、サイエンスキャンプ(研究所などでの実験体験など)や研究者の小中学校への派遣などを行う

基礎研究、イノベーション

  • 【自民党】
    • ものづくり技術の開発、イノベーションの推進などによる産業の高付加価値化を実現
    • 世界トップレベルの研究拠点の約30カ所設置や、研究費基金を創設し、現場にフィットしない予算の単年度ルールを廃止
    • 競争的な環境を作り上げるための各大学の改革の支援等
    • 世界をリードするわが国の革新的研究・技術開発を戦略的に行い、「第3期科学技術基本計画」による研究開発投資25兆円の達成を目指す
    • 次期基本計画における投資目標を設定し、拡充
    • 最先端研究開発支援プログラムの実施や「研究開発力強化法」「宇宙基本計画」「海洋基本計画」等に基づく投資を充実
    • 科学技術の成果を国民に還元し、地域発の豊かな社会を実現していくため、47都道府県に産学官連携拠点を整備
  • 【公明党】
    • 宇宙・海洋・生命科学・脳科学など先端分野の基礎研究を強力に推進
    • イノベーションの源泉となる基礎科学力の強化に取り組む
      • 産学官の連携強化による研究開発投資、人材育成、民間投資等を加速
      • 研究開発の成果を国民生活の向上に直結させる革新的技術特区の整備
      • ロボット・燃料電池・次世代環境航空機・宇宙利用に取り組むとともに、最先端医療・ナノ技術の開発など人々の暮らしの利便性を向上させる新技術の創出に集中投資
  • 民主党
    • 研究開発力強化法の趣旨を踏まえ、今後とも科学技術を一層発展させ、その成果をイノベーション(技術革新)につなげていく
    • IT、バイオ、ナノテク、環境、エネルギーなどの先端技術分野における研究者・技術者の質的・量的不足の解消に向けて、集中的に施策を展開し、民間経済の成長・拡大を支える
    • 世界をリードする燃料電池、超伝導、バイオマスなどの環境技術の研究開発・実用化を進める
    • 新エネルギー・省エネルギー技術を活用し、イノベーション等による新産業を育成
    • 「科学技術戦略本部(仮称)」を、現在の総合科学技術会議を改組して内閣総理大臣のもとに設置
      • 科学技術政策の基本戦略並びに予算方針を策定し、省庁横断的な研究プロジェクトや基礎研究と実用化の一体的な推進を図り、プロジェクトの評価を国会に報告
    • 素粒子物理学や再生医療等の巨額な予算を要する基礎科学研究分野において、世界的な研究拠点となることを目指して、欧米やアジア諸国との連携強化に積極的に取り組む
    • 知的財産権の強化に取り組む
      • 知的財産権に関する専門家の育成、地域をはじめとする産学の連携強化、研究開発予算の見直し、研究者の意欲向上につながる環境の整備、技術移転機関(TLO)の充実
    • 2009年度中に各省庁の宇宙関係セクションと宇宙航空研究開発機構(JAXA)企画部門を内閣府のもとに再編一元化するとともに、将来的にはJAXAを含む独立した組織の創設を検討
  • 【共産党】
    • 科学・技術の総合的な振興計画を確立
      • 国の科学技術関係予算の配分を全面的に見直し、人文・社会科学の役割を重視する
      • 基礎研究への支援を抜本的に強める
      • 大企業への技術開発補助金や防衛省の軍事研究費など、不要・不急の予算を削減
      • 研究者が自由に使える研究費(大学・研究機関が研究者に支給する経常的な研究費)を十分に保障
    • 任期制の導入を抑え、安定した雇用を保障する制度を確立する
    • 研究支援者を増員するとともに、劣悪な待遇を改善
    • 国立大学法人・独法研究機関への人件費削減の義務づけをやめさせる
    • 科学技術基本計画を政府がトップダウンで策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立
    • 科学、技術の軍事利用、とりわけ、宇宙基本法の具体化による宇宙の軍事利用をやめさせる
    • 科学研究費補助金を大幅に増額し、採択率を抜本的に引きあげる
      • 幅広く大学・研究機関の研究者に配分
      • 業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改める
      • 科学者による専任の審査官の大幅増員や日本学術会議との連携強化をはかるなど、専門家による十分な審査体制を確立し、審査内容を公開する
    • 不正の温床となっている業績至上主義による過度の競争を是正するとともに、科学者としての倫理規範を確立
      • 大学における外部資金の管理を厳格におこなうとともに、研究機関や学術団体が不正防止への自律的機能を強めるよう支援
    • 国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにする
    • 産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充
    • 大学と企業との健全な関係をむすぶため、ガイドラインを作成
      • 企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が原則として保障され、だれでもひろく使えるようにする
      • 共同研究や委託研究での相当額の間接経費や、共有特許での大学の「不実施補償」を、企業側が負うようにする
      • 企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない
  • 【新党日本】
    • 水素、バイオ等の新エネルギーを、日本の戦略的資源として、集中的な技術開発を行う
  • 【改革クラブ】
    • IT と環境・エネルギー問題への取組みを融合し、新産業分野を創造
    • 環境・バイオ・IT など新たな経済成長戦略によって税の自然増収を図ることで、歳入、財源の確保を図る
  • 【みんなの党】
    • 産業構造を従来型から高付加価値型へ転換。ヒト、モノといった生産要素を、予算、税制等でバイオ、エレクトロニクス、新素材、環境、エネルギー等の将来成長分野へシフト
  • 【平沼グループ】
    • 将来性のある技術・プロジェクトを発掘することにより、イノベーションを促し、1500兆円の個人資産を国際競争力強化のための投資に向かわせる

研究人材

  • 【自民党】
    • 最先端技術が、研究室止まりではいけない。世界と闘える研究者を、もっと増やします
    • 若手研究者育成に重点を置いた科学研究費補助金など競争的資金を拡充
    • 基金の創設による研究費の単年度制約からの脱却や女性や外国人研究者など多様な人材が活躍できる環境の整備
    • 最先端の研究分野などで国際的に活躍できる人材の育成や環境整備を行う
  • 【公明党】
    • 大学院の博士課程を修了した研究者(ポストドクター)の就労支援を強化するため、大学や産業界との連携の強化を図るなど、就労支援体制を強化
    • 研究開発力強化法に基づき研究者の養成・確保を図り、ポストドクターや女性研究者、外国人研究者などの処遇の改善を進める
    • 高校生・大学生の海外留学や海外の研究者の受け入れを進める
    • 若手や女性の優秀な研究者が能力を発揮できるような環境整備を進める
  • 民主党
    • 研究者奨励金制度を創設するとともに、国内の優れた研究プロジェクトへの支援を強化
    • 研究者ビザの拡充など優れた外国人研究者がわが国に集まる環境をつくる
  • 【共産党】
    • 留学生に魅力ある環境を整備する
      • 低廉な宿舎の確保、奨学金の拡充、日本語教育の充実、就職支援などの体制を国の責任で整備
    • 女性研究者の地位向上、研究条件の改善をはかる
      • 大学・研究機関が男女共同参画推進委員会などを設置し、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高めるとりくみを、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めるように奨励
    • 出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮、休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関内保育施設の充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備を促進
    • 「女性研究者支援モデル育成」の採択枠を大幅に拡大し、保育所の設置・運営も経費負担に含めるなど利用条件を改善
    • 非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生にも出産・育児のための休学保障と奨学金制度をつくるなど、子育て支援策を強める
    • セクシャルハラスメントやアカデミックハラスメントなどの人権侵害をなくすため、大学・研究機関の相談・調査体制の充実をはかる
    • 文科省の「キャリアパス多様化促進事業」を継続・拡充し、人文・社会科学系にもひろげ、採択機関を増やす
    • 機関間の情報交換、連携を強化
    • 大学・研究機関がポスドクなどを研究費で雇用する場合に、期間終了後の就職先を確保するよううながす
    • 博士が広く社会で活躍できるように、大学院教育を充実させる
    • 博士の社会的地位と待遇を高め、民間企業、教師、公務員などへの採用の道をひろげる
    • 博士を派遣社員でうけいれている企業には、直接雇用へ切り替えるよう指導を強める
    • 院生やオーバードクターへの研究奨励制度の抜本的拡充、ポスドクの職場の社会保険への加入を促進
    • 大学院を学生定員充足率で評価することや、画一的な大学院博士課程の定員削減はやめ、大学院の定員制度の柔軟化をはかる
    • 大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」の処遇を抜本的に改善するため、専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかる
    • 一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障
  • 【改革クラブ】
    • 技術立国(ものづくり)日本を支えるための高等教育とりわけ理工系人材育成強化に取り組む

【講評】

 まず、各党の政策の中身をみてみる。

 奨学金の拡充に関しては、与野党とも、多少の表現の違いがあるものの、ほぼ一致して拡充をとなえている。また、民主、共産、社民が国際人権A規約(締約国160カ国)の13条における「高等教育無償化条項」の留保撤回に言及しており、実現に向かう可能性が高い。

 国立大学の運営費交付金削減については、与党を含め、増額に言及しており、これも実現の可能性が高いだろう。

 国立大学の法人化は民主が改善、共産が見直しを述べている。与野党の争点の一つとなっている。以前民主党は法人化見直しに言及しており、仮に民主党を中心とする政権が誕生した場合、「改善」がどのような内容かに注視する必要がある。

 科学技術政策のマネジメントについては、与野党で意見が分かれた。自公民はいずれも「研究開発力強化法案」を共同で提出しており、基本姿勢としては、トップダウン、分野別投資ということになるだろう。そこが共産のボトムアップとは真っ向から対立することになる。以前にも述べてきたが、自公民と共産の科学技術政策には思想の違があり、どちらがよい、悪いというものではないと思う。皆さん自身がよく考えて選択されたい。

 だが、自公と民主は、方法論が異なる。民主が提唱する「科学技術戦略本部(仮称)」、補正予算における「世界最先端研究支援プログラム」2700億円の執行の行方など、研究現場に大きな影響を与える可能性がある。独立行政法人の改革が、JST(科学技術振興機構)とJSPS(日本学術振興会)に与える影響も無視できないだろう(このあたりは、現在発売中のメディカルバイオ誌で、当NPOの尾内が詳細な解説をしているので参考にされたい。

メディカルバイオ 2009年9月号

http://www.ohmsha.co.jp/medicalbio/

 そのほか、公明、共産がポスドク問題にふれており、自民、公明、共産が女性研究者問題に言及している。

 次に、政党別に述べたい。

 自民党は政権与党であり、政策比較をする際には、野党と異なる。現政権の政策が問われるわけであり、字面を追うだけではいけない。Nature誌が言うように、科学技術関連予算はここ数年例外的に増え続けており、与党が科学技術を重視していることがうかがえる。多額の研究費を持つトップ科学者は、現政権の政策におおむね満足しているかもしれない。

 ただ、そうは言うものの、現政権の政策を箇条書きにするだけでは心もとない。具体性にも欠ける。科学技術政策が、そもそもこの国や社会に何をもたらすために必要なのか、というビジョンをもっと語ってもらいたい。もちろん、景気対策、産業育成という意図が見え隠れするわけであり、それゆえ、基礎研究者にとっては、政策に声が反映されていない、という不満をもたらす。実際、基礎研究に対する言及は乏しい。しかし、運営費交付金の見直し、地方大学への言及など、若干方向修正もみられている。

 また、トップダウン志向であり、研究現場や若手の声をどのように政策に反映させるのか、記載は乏しい。

 公明党は科学技術政策に関しては、自民と同様であり、具体的記載に乏しい。ただ、公明はポスドク問題をマニフェストに明記している。この点は評価したい。共産党もポスドク問題に関して詳細に触れているが、個別政策の中であり、マニフェスト自体に記述を入れたのは大きい。理科教育に触れているのも評価したい。ただ、具体的な記載には乏しい。

 民主党の科学技術政策が乏しい、という声はブログなどでも聞かれているが、今回、「科学技術戦略本部(仮称)」に言及するなど、やや踏み込んだ表現も多かった。研究開発力強化法案への参加など、経験も蓄積したのだろう。

 ただ、この「科学技術戦略本部(仮称)」が、どのような形態で運営されるのか、言及されていない。政権を取った後の検討事項になるのだろうが、「脱官僚」を唱えている同党が、はたして官僚抜きで科学技術政策を運営するのか、現在作成中の第4期科学技術基本計画がどうなるのかといった点が不明であり、実現可能性の評価が難しい。

 これはマニフェスト外の話であるが、NPOなどの意見を政策により取り入れるということもあり、「科学技術戦略本部(仮称)」にも、現場の研究者、NPO、市民の声をどの程度反映させるのか、という点が注目される。

 その他、マニフェスト、政策INDEX中に、科学技術人材に関する記載が乏しいのは残念である。私たちの公開質問状にはその点の記載もあるが、あくまでマニフェスト評価なので、その点は考慮に入れない。

 理科教育に言及している点は評価したい。

 共産党は、非常に詳細な政策を提示し、政策立案能力の高さがうかがえる。私たちが関心の深いポスドク問題に関しても、多様なキャリアパスの具体例を提示するなど、具体的である。以前のマニフェストでは、研究者の雇用を増やすといった表現であったが、より現実的になったといえる。その他、ポスドクや若手研究者など、現場で苦労している研究者の声を反映した政策が並んでいる。先にも述べたが、現場の声を反映するボトムアップ志向の政策である。

 アカデミックハラスメントへの言及があるのは共産党だけであった。

 以前は共産党の政策はばらまきにつながりかねないと書いたが、現在各政党とも高等教育や科学技術に対する予算増額に言及しており、その批判は当たらないかもしれない。ただ、ボトムアップで果たして経済成長につながるのか、という意見もあるだろう。そのあたりは、科学技術に何を求めているのかの考え方の違いであり、有権者それぞれの考えのもとで選択されるべきものだろう。

 給付型奨学金、国際人権規約の「留保」撤回など、実現可能な主張もあり、「建設的野党」を自称する同党が、その政策をどのように実現させていくのか、注目したい。

 他の政党に関しては、奨学金や学費以外の科学技術政策、高等教育政策に関する記載が乏しかった。

 以上、長くなったが、マニフェスト評価を行った。

 マニフェスト評価には、実現可能性、予算などを考慮すべき、との声もある。その点、今回の評価では踏み込み切れていない。というのも、マニフェストの多くが、項目だけを並べたリップサービスのような文書で埋められているからである。私の力不足もあり、申し訳なく思う。

 しかし、まだまだマイナーな問題ではあるものの、科学技術政策が選挙の問題として徐々に認識されつつあるように思う。

 抽象的なマニフェストをどう肉付けしていくのか、マイナーな問題を社会の問題としてどう認識させるのか、実はこれは私たち一人一人に投げかけられた問題である。

 政治は利害の調整の場であり、それゆえ、きちんと意見を表明しなければ、問題を問題として取り上げられない。どのような政権が誕生しても、科学コミュニティ、NPO、市民は、時の政権に対し、きちんと態度を表明していくことが必要だ。

 科学の政治化に批判的な意見は多いだろうが、ブダペスト宣言から10年、科学はもはや科学者だけの問題ではなく、社会の問題だ。

 今回の選挙にとどまらず、科学技術政策を考える人が増えることを願って、これからもこうした試みを続けていきたい。

2009-08-22 国民新党からの公開質問状に対する回答

公開質問状に対する国民新党の回答

以下回答をいただきましたので、掲載いたします。

a)科学技術研究全般について

日本の科学研究は1995年に制定された科学技術基本法、および5年ごとに策定される科学技術基本計画により重点分野が明確に示され、競争的資金が投入されるようになりました。

しかし一方で、応用研究と基礎科学の峻別がうまくなされておらず、巨大プロジェクトの実用化へのロードマップが不明確であったり、多様性を重視する基礎研究の基盤が弱体化するといった事態への懸念が聞かれます。

社会的イノベーションを目的とする応用研究と、知の多様性を確保するための基礎研究ではおのずとマネジメント方針が異なると考えられますが、この点に関して貴党の考えをお聞かせください。

回答

 本件については、今後、科学技術の専門家などから意見を徴収し、党としての基本的な考えをまとめていきたい。

b)科学技術コミュニケーションについて

第三期科学技術基本計画には国民の意見を聞きながら研究を進めるアウトリーチ活動が盛り込まれるなど、科学技術コミュニケーションの重要性が認識されるようになっており、各地の大学院で人材育成が始まっています。

しかし、若手研究者を政策フェローとして雇用するアメリカ、大学・メディア・NGOが合同でナノテクノロジーに関する市民陪審を開くイギリスなど、制度として参加型テクノロジーアセスメント機関を持つ欧米に比べ、真に「双方向で参加型」のコミュニケーションが図られているという状況ではありません。

また育成した科学コミュニケーターの雇用も、2ー3年の短期のものがほとんどで、極めて不安定なものとなっています。

今後の科学技術コミュニケーション政策は、具体的な制度や人員配置も含めて、どのようなものであるべきだとお考えか、お聞かせ下さい。また、科学技術政策の意思決定に、こうした人材を活用する考えがあるかをお聞かせください。

回答

 前記「a)」の回答と同じ

c)高等教育政策について

日本は世界でただ2か国、国連人権条約の高等教育無償化条項を批准していない国の一つだといわれています。

このことには、高等教育は社会的な権利ではなく「受益者負担」であるという、日本政府の(世界的に見れば特殊な)見解が反映されていると思われます。

確かに日本の実情として、たとえば国立大学が無償化されれば、多くの私立大学が深刻な経営難に陥るでしょう。

アメリカでは安い州立大学が貧困層、低学力層の教育を担い、私立名門校が奨学金を集められる優秀な学生と富裕層の教育を担っていますが、日本ではこの構造が逆転しており、東京大学の学生の世帯所得が統計的に優位に高い一方、地方の貧困家庭が子どもを私学に入れることを余儀なくされる、という状況が見られます。

これらの状況をふまえた上で、高等教育無償化条項についてどうお考えか、また日本の高等教育に対する包括的な改善案をお持ちであるか、お聞かせ下さい。

回答

 国民新党は教育の機会均等を確保するため、国際人権A規約13条にある「高等教育無償化条項」の留保を撤回し、高等教育の無償化に向けて、積極的に取り組んでいきます。具体的には、高等教育の無償化や国立大学の授業料引き下げ、私学助成の増額、奨学金の拡充などを選挙公約に掲げ、その実現を図っていきます。

d)研究者の雇用問題について

1990年代からはじまった大学院重点化とポストドクター等一万人支援計画によって、若手の博士号取得者や研究者がこの10年で大幅に増員されました。

しかし特に重点的に育成されたバイオなどの分野は社会インフラの意味合いが強く、医療、農業、資源、教育など政策的な事業の中で活かされるべきスキルがほとんどです。現在その多くは年収200ー

400万円での不安定雇用に従事し、将来不安を抱えています。またワークライフバランスの悪さから、未婚・子供なしの率が高いという調査もあります。

科学技術に対する投資は微増しているにもかかわらず、科学技術人材の雇用環境はそれに反し悪化の一途をたどっているといえます。このため博士課程志望者も減少しています。

この状況は新産業育成やイノベーション創生においても大きな問題だと思われます。貴党は、こうした問題にどのような対策を考えているのかお聞かせください。

回答

 今後、党として議論していきたい。

e)リスク管理と科学について

内閣府食品安全委員会の委員人事に関して、吉川泰弘・東京大教授を起用する人事案が国会に提示されたが、6月5日、参院にて野党の反対多数で不同意となりました。この件に関して、日本学術会議の金澤一郎会長が、リスクの概念が理解されていないと、異例の会長談話を公表し、懸念を表明しています。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d4.pdf

この件に関する貴党の見解をお聞かせください。

回答

なし

f)大学政策について

1)国立大学の法人化がスタートして5年が経過しました。この間、東大など一部の「勝ち組」をのぞいて多くの大学が疲弊した、また本来の意図とは逆に中央省庁の影響力が強まった、など、問題点も指摘されています。貴党における、国立大学法人化制度の評価と、今後の国立大学の役割について、お聞かせください。

回答

 今後、党として議論していきたい。

2)また米国の州立大学をみれば分かるように、地方分権の観点からは地方大学は地域の知的拠点としてますます大きな役割をになうと考えられます。そこで、分権における地方大学の役割についてもうかがいます。地方大学の復興を必要と考えるのか。もしそうならどのような対策を考えておられるのか、お聞かせください。

回答

 国民新党は国と地方の協議を法制化し、地方の声、現場の声を聞きながら国と地方の役割を見直し、地方に権限を大幅に譲渡します。

 その結果、地方が自由に使える財源が増加し、自治体が地域のニーズに適切に応えられるようになり、地方の活性化が期待されます。その意味で、地方の大学が知的拠点としての観点から、今後、益々地方の活性化に果たす役割は大きくなるものと思われます。

2009-08-18 日本共産党からの公開質問状に対する回答

公開質問状に対する日本共産党の回答

以下回答をいただきましたので、掲載いたします。

a)科学技術研究全般について

日本の科学研究は1995年に制定された科学技術基本法、および5年ごとに策定される科学技術基本計画により重点分野が明確に示され、競争的資金が投入されるようになりました。

しかし一方で、応用研究と基礎科学の峻別がうまくなされておらず、巨大プロジェクトの実用化へのロードマップが不明確であったり、多様性を重視する基礎研究の基盤が弱体化するといった事態への懸念が聞かれます。

社会的イノベーションを目的とする応用研究と、知の多様性を確保するための基礎研究ではおのずとマネジメント方針が異なると考えられますが、この点に関して貴党の考えをお聞かせください。

回答

 科学、技術は、その多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野から基礎研究と応用研究のつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。とりわけ、基礎研究は、ただちに経済的価値を生まなくとも、科学、技術の全体が発展する土台であり、国の十分な支援が必要です。

 自民・公明政権による科学技術政策は、大企業が求める技術開発につながる分野に重点的に投資し、それ以外の分野、とりわけ基礎科学への支援を弱めてきました。また、業績至上主義による競争を研究現場に押し付けたことから、ただちに成果のあがる研究や外部資金をとれる研究が偏重されようになり、基礎研究の基盤が崩れるなど、少なくない分野で学問の継承さえ危ぶまれる事態がうまれています。

 日本共産党は、こうした経済効率優先の科学技術政策を転換し、科学、技術の調和のとれた多面的な発展をうながすための振興策と、研究者が自由な発想でじっくりと研究にとりくめる環境づくりのために力をつくします。

b)科学技術コミュニケーションについて

第三期科学技術基本計画には国民の意見を聞きながら研究を進めるアウトリーチ活動が盛り込まれるなど、科学技術コミュニケーションの重要性が認識されるようになっており、各地の大学院で人材育成が始まっています。

しかし、若手研究者を政策フェローとして雇用するアメリカ、大学・メディア・NGOが合同でナノテクノロジーに関する市民陪審を開くイギリスなど、制度として参加型テクノロジーアセスメント機関を持つ欧米に比べ、真に「双方向で参加型」のコミュニケーションが図られているという状況ではありません。

また育成した科学コミュニケーターの雇用も、2ー3年の短期のものがほとんどで、極めて不安定なものとなっています。

今後の科学技術コミュニケーション政策は、具体的な制度や人員配置も含めて、どのようなものであるべきだとお考えか、お聞かせ下さい。また、科学技術政策の意思決定に、こうした人材を活用する考えがあるかをお聞かせください。

回答

 科学者、技術者が科学、技術に対する国民の意見、考えを尊重し、自らの社会的責任への自覚を高めることは社会の発展にとって重要なことです。また、科学、技術が高度に発展し、その成果を国民が享受するうえで、国民が自らの科学リテラシーを高めることも必要になっています。こうした点から、科学者と国民の相互のコミュニケーションを深めること、いわゆる「科学技術コミュニケーション」を促進することは必要だと考えます。

 そのために、この役割を直接になう人材として「科学・技術コミュニケーター」を大学などで育成するとともに、その社会的地位の確立をはかることが重要です。科学・技術コミュニケーターは、大学や研究機関において教育や研究にも従事する専門職であり、競争的資金による短期雇用ではなく、安定した雇用を保障すべきです。

c)高等教育政策について

日本は世界でただ2か国、国連人権条約の高等教育無償化条項を批准していない国の一つだといわれています。

このことには、高等教育は社会的な権利ではなく「受益者負担」であるという、日本政府の(世界的に見れば特殊な)見解が反映されていると思われます。

確かに日本の実情として、たとえば国立大学が無償化されれば、多くの私立大学が深刻な経営難に陥るでしょう。

アメリカでは安い州立大学が貧困層、低学力層の教育を担い、私立名門校が奨学金を集められる優秀な学生と富裕層の教育を担っていますが、日本ではこの構造が逆転しており、東京大学の学生の世帯所得が統計的に優位に高い一方、地方の貧困家庭が子どもを私学に入れることを余儀なくされる、という状況が見られます。

これらの状況をふまえた上で、高等教育無償化条項についてどうお考えか、また日本の高等教育に対する包括的な改善案をお持ちであるか、お聞かせ下さい。

回答

 日本政府は、国際人権規約に加わりながらこの条項について「留保」したままです。無償化条項を留保している国は、条約加盟国160カ国中、日本とマダガスカルの2カ国だけです。教育を受けることは基本的人権の一つであり、経済的理由で妨げられるべきではありません。若い世代が高校や大学で新しい知識や技術、理想を身につけることは、社会の発展にとって不可欠ないとなみであり、それは社会全体にとっての貴重な財産となります。それだからこそ、学費をできるかぎり低額にとどめ、無償に近づけてゆくことが世界の大勢になっているのです。ただちに「留保」を撤回し、「世界一高い学費」の負担軽減をすすめる姿勢を明確にすべきです。

 また、誰もがお金の心配なしに教育を受けられる条件を整えることは、若者に安心と希望をもたらし、日本の未来を支える安定した基盤となります。困難なもとでも真面目に学ぼうとしている若者の努力に応えることこそ政治の責任です。国公立と私立との格差が大きく、私学に学ぶ学生の負担が重いわが国の現状では、とくに私立大学生への支援に力をいれるべきです。

 日本共産党は、経済的理由で学業を断念する若者をこれ以上出さないために、以下の提言をおこなうとともに、「世界一高い学費」を軽減させるための国民的な運動をよびかけています。

(1)高校授業料の無償化をすすめる

(2)国公立大学の授業料減免を広げる。私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくる

(3)国の奨学金をすべて無利子に戻し、返済猶予を拡大する。経済的困難をかかえる生徒・学生への「給付制奨学金制度」をつくる

(4)国際人権規約の「学費の段階的無償化」を定めた条項の留保を撤回する

d)研究者の雇用問題について

1990年代からはじまった大学院重点化とポストドクター等一万人支援計画によって、若手の博士号取得者や研究者がこの10年で大幅に増員されました。

しかし特に重点的に育成されたバイオなどの分野は社会インフラの意味合いが強く、医療、農業、資源、教育など政策的な事業の中で活かされるべきスキルがほとんどです。現在その多くは年収200ー

400万円での不安定雇用に従事し、将来不安を抱えています。またワークライフバランスの悪さから、未婚・子供なしの率が高いという調査もあります。

科学技術に対する投資は微増しているにもかかわらず、科学技術人材の雇用環境はそれに反し悪化の一途をたどっているといえます。このため博士課程志望者も減少しています。

この状況は新産業育成やイノベーション創生においても大きな問題だと思われます。貴党は、こうした問題にどのような対策を考えているのかお聞かせください。

回答

 今日の事態を生んだ要因は、(1)自民党政治が、財界の要求をうけて1990年代以降の「大学院生の倍加」政策をすすめながら、博士の活躍できる場を大学・研究機関や民間企業など、ひろく社会につくりだす施策を怠ったこと、(2)小泉内閣以来の「構造改革」路線が、大学・研究機関の予算削減、人件費削減と、研究費の競争的資金化を推進したこと、(3)大企業が、博士課程修了者を専ら契約社員や派遣社員などの非正規で働かせ、正規雇用を怠ってきたことです。

 若手研究者の「使い捨て」といえる事態を生んだ自民党政治の責任を明確にし、解決をはかるべきです。日本共産党は、国の責任で若手研究者の劣悪な待遇と深刻な就職難の解決をはかるために、昨年2月に関係者によびかけてシンポジウムを開催し、国会で繰り返しとりあげるなど、力をつくしてきました。総選挙の政策でも、以下の公約をかかげています。若手研究者が研究に夢をもてる環境を確保するために、新しい国会で全力をつくします。

(1)若手研究者の就職難の解決をはかります

 大学・研究機関による博士の就職支援、ポスドクの転職支援が充実するように政府の対策を抜本的に強化すべきです。文科省の「キャリアパス多様化促進事業」を継続・拡充し、人文・社会科学系にもひろげ、採択機関を増やすとともに、機関間の情報交換、連携を強化します。大学・研究機関がポスドクなどを研究費で雇用する場合に、期間終了後の就職先を確保するよううながします。博士が広く社会で活躍できるように、大学院教育を充実させるとともに、博士の社会的地位と待遇を高め、民間企業、教師、公務員などへの採用の道をひろげます。博士を派遣社員でうけいれている企業には、直接雇用へ切り替えるよう指導を強めます。

 日本の大学の本務教員1人当たりの学生数は、イギリスの1.4倍、ドイツの1.7倍であり、大学教員の増員は必要です。大学教員の多忙化や後継者不足を解消するために若手教員を増員し、研究者の非正規雇用の拡大をおさえます。

 大学院を学生定員充足率で評価することや、画一的な大学院博士課程の定員削減はやめ、大学院の定員制度の柔軟化をはかります。

(2)若手研究者の劣悪な待遇を改善し、じっくりと研究できる環境をつくります

 院生やオーバードクターへの研究奨励制度の抜本的拡充、ポスドクの職場の社会保険への加入を促進します。日本共産党は政府に働きかけて、独立研究機関が雇用するポスドクの公務員宿舎への入居を実現しました。国立大学法人の宿舎整備をすすめ、ポスドクの入居をひろげます。

 大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」の処遇を抜本的に改善するため、専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかります。また、一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障させます。

 大学院生が経済的理由で研究を断念しなくてすむように、無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給付制奨学金の導入を実現します。卒業後、低賃金などの事情で返済が困難な研究者を救済するため、日本学生支援機構の奨学金の返済猶予事由を弾力的に運用し、年収300万円に達しない場合に返済を猶予する期限(5年)をなくし、広く適用させます。

e)リスク管理と科学について

内閣府食品安全委員会の委員人事に関して、吉川泰弘・東京大教授を起用する人事案が国会に提示されたが、6月5日、参院にて野党の反対多数で不同意となりました。この件に関して、日本学術会議の金澤一郎会長が、リスクの概念が理解されていないと、異例の会長談話を公表し、懸念を表明しています。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d4.pdf

この件に関する貴党の見解をお聞かせください。

回答

国会同意人事について、日本共産党は、案件となる審議会や委員会の任務と役割にてらして、ふさわしい人選かどうか、利害関係はないか、再任の場合であれば、これまでの活動ぶりなどもみたうえで、国民の立場にたって職務を遂行していくことができる人事かどうかを総合的に審査し、賛否を判断しています。

 内閣府食品安全委員会は、厚生労働省や農林水産省などのリスク管理機関から、リスク評価機関を独立させる必要性から設けられたものです。しかし、そのリスク評価機関の「独立性と中立性」に疑いが生じれば、これを黙過することはできません。リスク評価機関である食品安全委員会の存在理由にもかかわることとなります。

 吉川泰弘氏は、政府のBSE対策が焦点となっていた時期、内閣府食品安全委員会の下に設けられたプリオン専門調査会の座長として、さまざまな報告書の取りまとめを行いましたが、取りまとめられた報告書やその議論の過程で示された行政よりの姿勢は、委員の批判の対象になってきました。吉川泰弘氏の姿勢は、他の委員らの批判により報告書の取りまとめ段階では修正されるなどの経緯もありましたが、その後、専門調査会の半数の委員が辞任する事態にも至っています。

 こうしたことは、専門調査委員として持つべき科学性と座長としての運営手法の両面から、吉川泰弘氏の適格性に疑義が提出されたものといわざるを得ません。

 日本共産党は、以上の点をふまえて、吉川泰弘氏を食品安全委員会委員に任命する政府の人事案に不同意の態度をとりました。

f)大学政策について

1)国立大学の法人化がスタートして5年が経過しました。この間、東大など一部の「勝ち組」をのぞいて多くの大学が疲弊した、また本来の意図とは逆に中央省庁の影響力が強まった、など、問題点も指摘されています。貴党における、国立大学法人化制度の評価と、今後の国立大学の役割について、お聞かせください。

回答

 自民・公明の政権は、国立大学法人化によって運営費交付金を毎年1%削減し、一方で競争的資金(評価によって配分する研究費)を旧帝大系大学に集中させました。その結果、各大学の財政ひっ迫による教育・研究基盤の弱体化、基礎研究の衰退、大学間格差の拡大と地方大学、人文系、教育系大学の経営危機など、極めて深刻な事態をもたらしました。また、国が各大学の中期目標を決め、それに基づく各大学の業績評価を行い、その結果による組織の再編を決めるという世界に例がない制度のもとで、「学問の自由」を保障する「大学の自治」が脅かされています。こうしたもとで、多くの大学教員は研究費獲得とそのための業績競争にかりたてられ、長期的視野にたって自由に、腰をすえた研究や教育にとりくむことが困難になっています。

 わが国の大学・大学院は、学術の中心を担い、地域の教育、文化、産業の基盤をささえるという大事な役割をはたしている、国民の大切な共通財産です。大学改革はこうした大学の役割を尊重し、その発展を応援する方向ですすめるべきです。日本共産党は、「今日の国立大学の深刻な事態をうみだした「大学の構造改革」路線に終止符をうち、国立大学法人制度の抜本的見直しを行います。

運営費交付金を毎年削減する方針を廃止し、基盤的経費として十分に保障します。法人化後に削減した720億円は直ちに復活させます。国立大学法人の施設整備補助金を大幅に増やし、老朽施設を改修します。

国が各大学の目標を定め、その達成度を評価し、組織を再編するなど、大学の国家統制を強めるしくみを廃止し、大学の自主性を尊重した制度に改めます。教授会を基礎にした大学運営と教職員による学長選挙を尊重する制度を確立します。

2)また米国の州立大学をみれば分かるように、地方分権の観点からは地方大学は地域の知的拠点としてますます大きな役割をになうと考えられます。そこで、分権における地方大学の役割についてもうかがいます。地方大学の復興を必要と考えるのか。もしそうならどのような対策を考えておられるのか、お聞かせください。

 地方の大学は、国立、公立、私立の違いを問わず、それぞれが地域の教育、文化や経済の発展に大きな寄与をしています。そうした役割を尊重し、国の支援を以下のように強めるべきです。

国立大学は、運営費交付金を増額するとともに、政府が検討している競争的資金化を中止し、財政力の弱い地方の大学に厚く配分するなど、大学間格差を是正する調整機能をもった算定ルールに改めます。また、地方の国立大学の地域貢献をきめ細かく支援するとともに、国による一方的な再編・統合や地方移管には反対します。

公立大学については、地方交付税交付金における大学運営費の算定を増やし、公立大学予算の増額をうながします。

地方の私立大学は、多くが中小規模で経営が困難であり、国の支援を強めるべきです。私大助成を大幅に増額し、定員割れ大学・短大への補助金カットをやめるとともに、定員確保の努力を支援する助成事業を私学の自主性を尊重しつつ抜本的に拡充します。