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誰かの妄想・はてな版

2016-06-27

特攻隊の攻撃による米軍死者12300人ってどこソース?

まあ、産経文化人の井上和彦氏を真に受けること自体どうかとは思いますが。

 44年10月25日に始まった航空特攻は、45年8月15日までの約10カ月間に、海軍が2367機、2524人。陸軍特攻機は1129機、1386人が散華した(=資料によってデータは多少異なる)。

 一方、特攻で撃沈・撃破された連合軍艦艇は、筆者の調べでは、278隻にも上り、300隻超とする資料もある。米軍だけをみても、日本陸海軍機の特攻攻撃によって、戦死者が約1万2300人、重傷者は約3万6000人に上り、あまりの恐怖から戦闘神経症の患者が続出した。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160627/dms1606270830001-n1.htm

特攻攻撃による戦果として、撃沈・撃破隻数が300〜400隻というのは割りと一般的ですが、戦死者12300人、重傷者36000人というのはちょっと聞いたことありません。

米軍は戦死4900、戦傷4800としています。

“Approximately 2,800 Kamikaze attackers sunk 34 Navy ships, damaged 368 others, killed 4,900 sailors, and wounded over 4,800. Despite radar detection and cuing,

airborne interception and attrition, and massive anti-aircraft barrages, a distressing 14 percent of Kamikazes survived to score a hit on a ship; nearly 8.5 percent of all ships hit by Kamikazes sank.”

Dr. Richard P. Hallion, “Precision Weapons, Power-Projection, and the Revolution in Military Affairs”

http://www.onr.navy.mil/en/Conference-Event-ONR/science-technology-partnership/Past-Partnership-Conference-Highlights/~/media/Files/Conferences/Science-Technology-Partnership/2010/Work-Navy-Undersecretary-11082010.ashx

少し多めに見積っているのが、この死傷15000人という説です。

By war's end, kamikazes had sunk or damaged more than 300 U.S. ships, with 15,000 casualties.

http://www.pbs.org/perilousfight/psychology/the_kamikaze_threat/

井上説はこの4倍ですから、ちょっと信じがたいですね。

ちなみに、少ない見積もり*1では3000人程度というのもあります。

ここもおかしい

 この日だけで、「セント・ロー」のほか、護衛空母サンチー」と「スワニー」「カリニン・ベイ」が大破し、護衛空母サンガモン」「ペトロフ・ベイ」「キトカン・ベイ」が損傷した。米軍は128機を失い、戦死・行方不明者は1500人、戦傷者は1200人に上った。

 これは、わずか18機による戦果である。神風特別攻撃隊による体当たり攻撃は、その是非はともかく大勝利だったのだ。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160627/dms1606270830001-n1.htm

1944年10月25日の特攻隊攻撃以前に、カリニン・ベイは栗田艦隊に遭遇し砲撃で命中弾を受けています。キトカン・ベイも至近弾で損傷を受けています。これを「わずか18機による戦果」というのは、栗田艦隊の存在を無視しすぎです。

また、「戦死・行方不明者は1500人、戦傷者は1200人」というのも、26日までの死傷者が1200人というのはありますが、井上説ではそれが2倍になっています。

そもそも井上記事の本筋自体がおかしいんですけど、細部も色々とおかしく産経文化人に恥じぬ低レベルっぷりを発揮しています。

2016-06-25

“中国ウォッチャー”のレベル

中国国家主席に対して「始皇帝」だの「毛沢東」だのといった安易なレッテルを貼る中国ウォッチャーの言は、話半分以下に聞いておくのが良さそうです。

事例「中国の”新皇帝”習近平がねらう「日本潰し」、そして「パックス・チャイナ」という野望(2016年06月24日(金) 近藤大介 )

この近藤氏については、以前指摘したことがあります。その時は「「屈辱の100年を乗り越え、世界の王となれ」習近平率いる中華帝国の野望を読み解く(現代ビジネス 5月26日(木)11時1分配信 )」という記事でした。近藤氏の「中国の"新皇帝"習近平がねらう「日本潰し」〜」の記事は前回より輪をかけて中身のないレッテル貼りに終始した記事で呆れました。

中身そのものについて批判しても良いんですが、その前に。

(例)

安倍首相の特徴は「山口県人」。山口県人の特徴とは、保守的、男尊女卑、お金におおまか、体裁を気にする、目立ちたがり、政治好き。そんな人が、まともな経済政策や女性の活躍する社会の実現などできるだろうか。

などと日本国内で発言すれば、差別だと言われるでしょうし、私もそう思います*1批判するなら具体的な政策に対して批判するべきで、出身地なんかで判断するようなことじゃありません。

ですが、中国国家主席に対しては、そういう出身地差別をやっても構わないらしいですよ。少なくとも近藤的には。

私は、習近平政治の特徴を、「北京人」「毛沢東」「古代回帰」という3つのキーワードで言い表せると考えている。

まず、「北京人」について説明しよう。(略)中国は日本の25倍もの国土があるので、出身地が違えば、言葉から食事気質まで違うのである。

北京人の特徴とは、思いつくままに縷々書き連ねれば、プライドが高い、メンツ重視、頑固、短気、大胆、保守的、大雑把、お人好し、政治好き、経済オンチ……といったことだ。これは、過去2代の江蘇人指導者の最大の特徴だった「リスク回避の志向」とは、まるで異なる。

(略)

まず、1978年末に小平が主導して改革開放政策を始めて以降、怒濤のように成長してきた中国経済が、いまや青息吐息となりつつある。そんな時、中国の最高指導者は、毛沢東ばりの経済オンチである習近平主席なのだ。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48975

近藤氏が習近平主席をなぜ「毛沢東ばりの経済オンチ」だと決め付けているのか、この記事中にはその理由が「北京人」だから、としか書いてありません(そもそも毛沢東は湖南人なので、なぜここで「毛沢東ばりの」という修飾をつけているのかも不明です。まあ、レッテル貼りでしょうけど・・・)。

このレベルで、記事の末尾に「隣国の状況を深く識ることが大事である。」とか書いてあるので、苦笑いするしかありませんねぇ。


さりげない歴史修正

古代から19世紀前半まで、長年にわたってアジアには、「冊封体制」と呼ばれる「パックス・チャイナ」が機能していた。これは、宗主国である中国と、属国朝貢国)である周辺国との「緩やかな主従関係」だ。

ただし、中国大陸と海を隔てている日本と、高い山を隔てているインドは、このシステムに組み込まれずに生存できた。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48975

卑弥呼とか日明貿易とかは無かったらしい。

改正児童ポルノ法の附帯決議に関する件

山田氏は以下のように自画自賛しています。

先ほどの児童ポルノ禁止法改正案の参議院法務委員会で、私が原案を作成した附帯決議が全会一致で採択されましたのでその全文を掲載します。原案から多く削られてしまったとはいえ、衆議院ではなかった附帯がついたことは非常に大きいです

https://taroyamada.jp/?p=5701

その附帯決議というのはこういう内容です。

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2016-06-24

山田太郎に投票したくない理由、山田太郎に投票しなくてもいい理由

投票したくない理由

参議院議員山田太郎(全国比例)日ペ23a認証済みアカウント

@yamadataro43

放送法176条の業務停止や74条の電波停止の条項についてはどの様な場合執行できるのかは曖昧だから過度になる必要はないと思います。

放送法4条は、マスコミに圧力を掛けているという自民党であったとして...

http://npx.me/vW9m/QsKm #NewsPicks

2:48 - 2016年2月11日

https://twitter.com/yamadataro43/status/697733821177802752

報道の自由に対してこのような態度をとる人が表現の自由を守ると主張してもねぇ。

マンガやアニメが規制さえされなければ、報道メディア政府にコントロールされても構わない、とは全く思いませんので。


投票しなくてもいい理由

日本共産党の参院選挙政策(2016.6.9)

2016参議院議員選挙/各分野の政策 37、文化 ――助成制度、文化施設専門家の権利・地位向上、知的財産権

2016年6月

 芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障しています。ところが、第2次安倍内閣の発足以降、各地の美術館や図書館公民館など公の施設で、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いでいます。安倍首相のもとに開催される「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」のように、特定の価値観を創造活動に押しつける動きもあり、創作活動の委縮も懸念されます。安倍政権による放送の自由言論の自由への権力的介入もきわめて重大です。憲法基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

http://www.jcp.or.jp/web_policy/2016/06/2016-sanin-bunya37.html

上記引用部分だけじゃなく「37、文化」のページの内容はどの項目もオタクの人は賛成できそうだと思うんですけどねぇ。

共産党は、2014年児童ポルノ改正にも反対していて、国会で以下のような発言をしています。

186国会 参議院法務委員会

2014年6月17日

○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、今回の児童ポルノ改正案には反対の立場から討論を行います。

 児童ポルノ児童に対する最悪の性虐待、性的搾取であり、政府を先頭に社会全体がその根絶のため断固たる姿勢を示し、対策を強める必要があることは明白であります。その製造過程は無論のこと、インターネット社会において画像の流出は被害児童を著しく傷つけ苦しめ続けるものだからです。所持の禁止規定を置き、社会全体にその違法性を広く宣言することは適切だと考えます。

 しかしながら、本法案による単純所持の処罰化条項が、規制目的を達するために必要最小限のものと言えるか、その妥当性には疑問を持たざるを得ません。いわゆる三号ポルノの規定は、本法案で一定の明確化を試みられたものの、依然として不明確さを残しています。その単純所持を処罰することは恣意的な捜査を拡大するおそれが大きく、処罰する必要のないものにまで広範に捜査の網を掛けることが否定できないものです。個人の私的領域にまで捜査機関が踏み込み、冤罪を生むことも懸念されるからです。

 インターネット上の児童ポルノ画像のほとんどは単純所持を刑罰で禁止している欧米諸国から流出しているとの調査があり、それらの国々での処罰化は必ずしも効果的な歯止めとなっているとは言えません。

 今必要なことは、インターネット上への流出など、提供目的の行為を徹底して摘発すること、流出や被害実態の適切な把握と被害に遭った児童の手厚い保護です。警察による摘発と被害児童保護の連携を強化することを始め、政府の対策充実を求めるものです。

 本法の保護法益は実在する児童自由と人格であり、この観点から、今後、法の名称についても、ポルノから被害実態をより適切に表す児童虐待描写物などを検討し、その規定も、わいせつ性や主観的要素を構成要件とするのではなく、児童への被害の重大性を評価する必要があります。

 また、今後とも、表現物に対象を拡大することはあってはならないことを指摘し、反対討論を終わります。

このロジックは、児童ポルノ法に反対しているオタクの人たちとどこか違いますかね?


文化を支える専門家の地位向上、という視点

共産党公約

2016参議院議員選挙/各分野の政策 37、文化 ――助成制度、文化施設専門家の権利・地位向上、知的財産権

2016年6月

 年収300万円未満が5割以上という劣悪な状態にある実演家をはじめ、多くの芸術家やスタッフは、一般の勤労者に比べても低収入です。仕事のうえでの怪我であっても労災認定は5.3%にすぎないように、社会保障がほとんどありません。これでは、技能を高める前に辞めざるを得なくなり、技術の伝承のみならず、日本の芸術・文化の発展を阻害することになりかねません。そのため、ユネスコやILOは、芸術家の地位向上をはかることを求め、収入の向上や社会保障制度を実演家の実情に適合させることを求めています。専門家の地位向上を理念として掲げるだけでなく、一般勤労者並みに改善することを目標に施策を実施します。

http://www.jcp.or.jp/web_policy/2016/06/2016-sanin-bunya37.html

社民党公約

(10)アニメや漫画などのクリエーター、プログラマーデザイナー賃金・労働条件の実態把握と雇用環境の改善に取り組み、離職者の再就職を支援します。

http://www.sdpelection.com/#!blank-4/sjiya

この視点に関して、山田太郎氏がどういう意見を持っているのかはよく分かりませんでした。

2016-06-23

2016年6月8日〜9日にかけての尖閣諸島(釣魚島)接続水域への日中双方の軍艦侵入事案に関して、もう少し注目されるべき点

日経で以下のような記事があります。

「狙いは日本艦排除」 中国軍艦尖閣進入の深刻さ

編集委員 中沢克二

(略)

 6月8日午後9時50分、ロシア艦3隻が南から接続水域に入り、北に向かっていた。監視していた海上自衛隊護衛艦「はたかぜ」がこれを追尾する。当然、すぐに接続水域に入ったロシア艦の動きに目を奪われているが、中国側が注視していたのは実は日本の「はたかぜ」の動きだ。

 やや離れた尖閣北方海域にいた中国艦は直ちに反応した。そして一目散に接続水域を目指す。尖閣北方で監視中だった別の海自護衛艦「せとぎり」は危機感を抱き、中国艦の動きを追い始めた。このままでは接続水域に入るのは必至だ。強く警告したが、中国艦は応じない。

 この時、「はたかぜ」は接続水域内を北東に向けて航行中だ。これを知る中国艦が動きを止めるはずはない。ついに久場島の北東の接続水域に進入した。これを監視する「せとぎり」も接続水域内を航行し、今度は中国艦が万が一にも領海に侵入することがないよう警告・監視しながら追尾する。

 日中ロ3カ国の艦船6隻が至近距離で入り乱れながら並走――。大正島北西の接続水域内では、かつてない危険な事態が出現した。だが最後はロシア艦が接続水域を抜け、日中の艦船も外に出る。ひとまず危機は去った。

(略)

(強調引用者)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO03559330T10C16A6000000/

この経緯を見る限り、日本と中国のうち、先に尖閣諸島(釣魚島)の接続水域に進入したのは、日本側の護衛艦「はたかぜ」です。

尖閣諸島(釣魚島)は日中双方が領有権を主張している係争地域です。

中国側から見れば、中国領有権を主張している島の接続海域に日本の軍艦が侵入したわけですから中国側も軍艦を乗り入れて対抗せざるを得ません。

日本側護衛艦が先に接続海域に入ったことがあまり明らかになっていない時点で「中国が軍艦を入れたなら、日本も軍艦を入れないといけない」と主張している人もいますが、これは考え方としては正しいと言えます。実際、領有権を争っている当事国にとっては互いに相手国の実効支配実績を積み上げさせないことが「ゲームのルール」です(中国側が「黙契」と呼んでいるのはこのこと)。

とすれば、中国艦の尖閣諸島(釣魚島)接続水域進入を誘発したのは、日本艦の尖閣諸島(釣魚島)接続水域進入であったと言えます。

今回、中国側が軍艦尖閣諸島(釣魚島)接続水域に進入させたことに対して大騒ぎしている人たちは、日本護衛艦が先に尖閣諸島(釣魚島)接続水域に進入したことに対して、あまりにも無関心すぎるように思いますね。

2016-06-22

「「アベノミクスで増えたのは非正規雇用者ばかり」という的外れなプロパガンダ」という的外れなプロパガンダ

「アベノミクスで増えたのは非正規雇用者ばかり」という的外れなプロパガンダ」という記事があります。

記事を書いた竹中正治氏(龍谷大学経済学部教授)は「アベノミクス雇用は増えたと言うが、増えたのは非正規雇用ばかり、正規雇用者は増えていない。正規雇用者比率は低下している」という主張を否定ないし無効化する主張をしています。

その主張に竹中氏が使った指標が「20歳〜64歳人口に対する正規雇用者数の比率」というものです(以下、「竹中指標」)。

これは分母を「20歳〜64歳人口」としている一方で、「正規雇用者数」については年齢での限定をしていないため、この指標が具体的に何を指しているかは微妙です。実際、65歳以上でも正規雇用されている人は2015年に91万人いますが、竹中指標の分母に含まれないこの数字が分子には含まれています。

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竹中指標の特徴は、「20歳〜64歳人口」が減ると竹中指標は増え、65歳以上の正規雇用者が増えても竹中指標は増えることです。「20歳〜64歳人口」は2012年から2015年までに7437万人から7109万人まで4.4%減少していますが、同期間の65歳以上の正規雇用者は、76万人から91万人に20%増えています。この竹中指標が本来想定していない65歳以上の正規雇用者竹中指標を0.2%押し上げる効果があります。

つまり、竹中氏が「2015年は2012年対比で1.1%ポイント上昇している」と言っているうちの0.2%は、竹中氏自身が「引退した高齢者が、年金の補完のために就業する時は、正規雇用である必要性は乏しい」といって分母から除外している65歳以上の正規雇用者数によるわけです。これでは効果を水増ししているとも言えます。

で、年齢層別に分けて見るとこうなります。

f:id:scopedog:20160623011553p:image

年齢※2012年人口正規雇用者割合2015年正規雇用者割合
20-24歳62921634.3%62222235.7%
25-34歳149883255.5%138977455.7%
35-44歳189297151.3%182093351.3%
45-54歳157974447.1%166378547.2%
55-64歳183749226.8%161546028.5%
20-64歳7435324943.7%7109317944.7%
65歳- 3055762.5%3370912.7%
20歳- 10490333431.0%10479326530.3%
竹中指標7435333444.8%7109326545.9%

(※正規雇用者については15歳以上を含む)

65歳以上の取扱で良いとこ取りをするのは論外ですので、20〜64歳に限定して考察してみます。これを年齢層別に見ると竹中指標が2012年から2015年で改善しているのは、20〜24歳と55〜64歳の年齢層であることがわかります。

しかし、55〜64歳の年齢層は、竹中指標が増加しているものの正規雇用者数そのものは減少しています。つまり、この年齢層の人口減少分に比べて相対的に同年齢層の正規雇用者数減少分が少なかったために、竹中指標が増加しているわけです。これは、55〜64歳の正規雇用者に退職を先送りする人が増えたと考えられます。基本的に正規雇用者は、過去の労働運動の成果として法律で守られていますから、経済状況が不安な中では、なるべく長く正規雇用のまま働き続けたいというインセンティブが働くわけです。このため、55〜64歳の年齢層の人口が減っても相対的な正規雇用者数の割合は増えたと考えられるわけです。

なお、55〜64歳の竹中指標は基本的に過去ずっと増加傾向を示しています。

ちなみに55〜64歳の年齢層を除いた20〜54歳の年齢層での竹中指標で見ると、改善効果が消えてしまいます。

年齢※2012年人口正規雇用者割合2015年正規雇用者割合
20-54歳5598276349.4%5494271449.4%

20〜24歳の雇用状況

本来なら20〜24歳の正規雇用者数を使いたいのですが、労働力調査の結果には10歳区切りの年齢カテゴリしかありませんので、竹中指標的に「就学中の学生が正規雇用であることはあり得ない」という想定を用いています。

f:id:scopedog:20160623011554p:image

20〜24歳の年齢層の竹中指標は確かに改善していますが、この年齢層は基本的に新卒採用状況を示していると言えるでしょうからリーマンショック東日本大震災直後の影響を受けていた2012年1-3月期と比較してですから自然回復と区別が困難です。それでも改善しているのですから、安倍政権の成果だと主張できなくはありませんが、これを男女別に見てみるとこうなります。

f:id:scopedog:20160623011552p:image

2012年に男性は改善傾向に転じ、女性は悪化に転じていることがわかります。20〜24歳の女性の竹中指標は安倍政権下でも改善傾向が見られません。男性については改善傾向が見られますが、野田政権下から改善傾向に転じていますので、これを安倍政権の成果と呼べるかどうかは微妙ですね。


竹中氏のまとめは正しいか

竹中氏はこう主張しています。

見てわかる通り、90年代をピークに下がるが、2005年を底に上昇に転じている。また2013年以降、同比率の上昇は大きく、2015年は2012年対比で1.1%ポイント上昇している。一方、民主党政権時代の最終年2012年は09年対比で0.6%ポイントの上昇にとどまる。 

要するに、20〜64歳人口の漸減という人口動態変化を考慮すれば、安倍政権下で正規雇用者も含めて雇用回復に成功しているということだ。 もちろん、企業利益回復に比較して賃金増加率が低いことが、景気の自律的な回復力を弱め、マイルド・インフレ達成の障害になっている点は、筆者が昨年来指摘している通りであるが、雇用回復まで否定するのは、事実に対する政治的に歪んだプロパガンダに過ぎないと言えよう。 

http://blogos.com/article/180005/

竹中指標はその性質上、指標数値の改善が「雇用回復」を示すとは言えません。上記で示した通り、指標数値の改善に貢献したのは55〜64歳の正規雇用者が退職しなかったこととと20〜64歳人口の減少幅にあるのであって、安倍政権経済政策とほぼ無関係の要因によります。

そもそも「20〜64歳人口の漸減という人口動態変化を考慮」するのであれば、若年層の雇用回復しなければならないわけですが、20〜34歳という年齢層で見ると、竹中指標でも回復はしてないんですよね。

年齢※2012年人口正規雇用者割合2015年正規雇用者割合
20-34歳2127104849.3%201199649.5%

まとめ

政策としての「(正規)雇用回復」を評価するなら、正規雇用者数が実数としての増減で評価すべきで、分母の増減によって実数は減ったが比率は増加した、というのでは政策として評価するには値しません。なぜなら、分母の増減は政策に関係ない自然発生的な数値であるのに対し、正規雇用者数の増減は政策によって左右されるからです。

政策評価と無関係に雇用環境を観察・評価するなら竹中指標は意味を持つでしょうが、政策評価をする際には政策によって正規雇用者数がどう変動したかを見るべきです。

その意味では、「「アベノミクスで増えたのは非正規雇用者ばかり」という的外れなプロパガンダ」と主張するために「20歳〜64歳人口に対する正規雇用者数の比率」なる概念を持ち出したこと自体が誤っています。

政策評価という文脈においては、竹中氏がプロパガンダレッテルを貼ってる赤旗記事の方が適切で、むしろ、「20歳〜64歳人口に対する正規雇用者数の比率」なる概念を持ち出し、アベノミクス擁護している竹中氏の主張の方がプロパガンダと言えるでしょう。

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