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誰かの妄想・はてな版

2014-09-20

韓国側関係者が怒ったのは「日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたため」

朝日新聞記事が、日韓関係を損ねたという主張が政府メディアによってまかり通っていますが、1992年当時、NHKは以下のように報じています。

(514) 92.08.14 調査報告 アジアからの訴え〜問われる日本の戦後処理

https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_92_all.html

韓国

(佐藤俊行)

日本と韓国の関係が真に友好的な関係になるのを阻害する要因の一つが従軍慰安婦問題です。

去年12月、三人の従軍慰安婦東京で初めて訴訟を起こし、この問題が公のものとなりました。

韓国の関係者が怒るのは、最初、資料がないとして軍の関与を否定した日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたためです。

現在、日本政府は国の関与を認めてはいますが、動員にあたって強制を裏付ける資料は見つからなかったという立場を取っています。

韓国政府は先月、日本の資料と慰安婦の証言を基に中間報告を発表しましたが、動員は朝鮮総督府による強制的なものだったと、日本政府の主張に真っ向から反論しています。慰安婦問題は反文明的な蛮行だった、と公式文書には珍しい感情的な表現も目立ちました。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140504/1399218380

もちろん、番組中では吉田清治証言など重視されていません。

日本政府1990年6月に軍の関与を否定する発言をし、その直後の1990年7月に挺対協の前身である挺身隊研究会が結成され、1990年12月にも日本政府は関与を否定し、問題が日韓両国で大きく取り上げられるようになっていきます。そして1991年8月に金学順さんが元慰安婦であると名乗り出て1991年12月には提訴に至ります。しかし提訴直後の12月7日、日本政府はまたも「政府が関与した証拠はない」と関与を否定、1992年1月に軍関与資料発見の報道が出るに及びようやく、日本政府は「旧日本軍が何らかの形で関与していたことは否定できない」と認めますが、秦郁彦氏や産経新聞による吉田証言否定キャンペーンにより、慰安婦問題を否認する動きが活発化し、その流れの中で、「関与はしたが強制連行はしていない」という1992年7月の加藤談話に至ります。これに対して、韓国政府は7月末に「事実上の強制連行があった」と反論しています*1

その2週間後に放映されたのが、上記のNHK特集です。

韓国の関係者が怒るのは、最初、資料がないとして軍の関与を否定した日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたためです。」と評されるに十分な理由が日本政府の言動にあったわけです。

吉田証言とか朝日報道とか関係ありません。

ちなみに1968年時点では、日本政府慰安婦動員にあたって「軍が相当な勧奨をしておったのではないかというふうに思われます」*2と認めています。にもかかわらず、都合が悪くなると日本政府は「関与していない」と逃げたわけですから、不信感を抱かれて当然としか言えません。

*1:参照「河野談話に至るまでの経緯について」http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140408/1396883009

*21968年4月26日衆議院社会労働委員会厚生省実本博次援護局長発言

2014-09-19

この指摘は結構正しいと思う

冷泉氏の記事に書かれている「第5の誤解」というのは重要な指摘だと思います。

朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

 第5の誤解は、これは「朝日新聞」の立場に近い人々の間に見られると思いますが、日本の保守的な世論や、あるいは安倍政権がこの問題で強硬になれば、「いつかは強い外圧が来て何とかしてくれるだろう」という見通しがあるように感じられます。これも誤解だと思います。

 国際社会は「激しく日本批判をするような面倒なこと」はせず、むしろ日本を軽視したり無視したりするだけでしょう。というのは「慰安婦問題に関する事実関係の訂正をしたい」という日本の意向が「全く理解できない」からです。反発する以前に「理由が分からない」ことでの違和感、不快感がひたすら深まるだけだと思います。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

「いつかは強い外圧が来て何とかしてくれるだろう」という期待が感じられるコメントは確かに散見されます。ここまで明確な期待でなくとも、“海外が黙っていない”的なコメントは数多くあると言えます。海外が日本の歴史修正主義理解を示すことはないでしょうが、だからと言って、それを正そうとするかと言えば、それはまず期待できません。この点、「国際社会は「激しく日本批判をするような面倒なこと」はせず、むしろ日本を軽視したり無視したりするだけ」という冷泉氏の指摘は的を得ていると思います。

「日本の意向が「全く理解できない」から」かどうかは何とも言えませんが、理解したとしてもせいぜい非難決議くらいが関の山です。日本政府はいつも通り、非難決議を無視するか、真意が理解されていないと嘯くだけでまず効果はなく、何ともなりません。

“海外から誤解されている”と誤解している日本人の目を覚ますのは、結局日本人自身の手によらねばならないという覚悟が必要でしょう。

あるいは、中国問題について“海外から誤解されている”と誤解した日本人が薄目を開けた1945年のような事態を迎えるか、ですね。

2014-09-18

「朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解」の読解

冷泉氏の記事に書かれている誤解のうち「第5の誤解」を除く部分について。

朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

一点目

 一点目は、80年代末にこの「従軍慰安婦」問題が知られるようになって以降、たとえ偽りの証言や、誤報によって「狭義の強制」があったという伝わり方をしたとしても「現在の日本国の名誉や評判」はまったく傷付かなかったということです。

 ですから「国際社会における日本の評価に悪影響があった」という印象、あるいは加藤官房副長官の言う「誤報による影響」というのは、そうした理解の全体が「誤解」です。

 理由は簡単です。国際社会では、サンフランシスコ講和を受け入れ、やがて国連に加盟した「日本国」は、「枢軸国日本」つまり、常任理事国でありながら国際連盟を脱退し、更にナチス・ドイツファシスト党イタリアと組んで第二次世界大戦を起こした「枢軸国日本」とは「全く別」であることを認識しており、そこに一点の疑念もないからです。

 それは、講和を受け入れたという法的な理由だけではありません。戦後の日本政府日本企業、日本人が国際社会で活動するにあたって、国際法や各国法を遵守し、多くの国や地域の中で際立った国際貢献を行い、例えば国連安保理非常任理事国にも再三選出されているように、戦後の日本および日本人の行動が国際社会から信頼されているからです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

やや違和感の残る表現です。

そもそも旧日本に関しては、全世界が第二次世界大戦の元凶の一つという認識であって、従軍慰安婦問題によってその評価が変わったわけでもなく、旧日本のような侵略国であればさもありなん、としか思わないのが海外の普通の市民の感覚でしょう。

戦後日本に対する評価に影響したとすれば、戦前戦中の侵略や戦争犯罪行為を否定しようとする日本政府右翼の試みに対する不快感として現われたくらいでしょうね。

国際社会では、(略)「日本国」は、(略)「枢軸国日本」とは「全く別」であることを認識して」というのは、別に戦後日本が“優等生”だったからではなく、戦後50年近く経っていた1990年代において、戦前日本と同一視するような感覚を抱く人が少なくなっていたという要因の方が大きいでしょう。無論、大きな戦争をしていないが故に悪目立ちしなかった、という意味では、平和国家としての歩みが日本のイメージを改善させたとも言えるでしょうけど。

 現在の日本国枢軸国日本が別である以上、第二次大戦の戦中に枢軸国日本が起こした非人道的な行為に関しては、現在の日本国が、現在の世代として政府正式謝罪を行ったり、現在の世代の納税した国庫金から補償をしたりする必要はありません。

 補償に関しては「講和条約で解決済み」だというのは、別に責任から逃げているわけではなく、「講和によって枢軸国日本から日本国への移行が相手国により承認された」、つまり「現在の日本国枢軸国日本ではない」ことが相手国から承認されたことを意味するからです。これは、サンフランシスコ講和の対象外であった、日中、日ソの各講和や日韓条約でも全く同様です。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

この部分は相当に乱暴な意見です。今の日本人の民度と精神年齢を考慮すれば、こういう言い方をしないと拗ねてしまうのかもしれませんが、旧日本と戦後日本を、責任回避のために別の国扱いするのは果たしてどうでしょうか。

シベリア抑留で苦労した人たちは、旧ソ連ロシアは違うと言ってロシアには謝罪する必要がないとか思ってますかね?ロシアシベリア抑留を正当化する主張が蔓延してても気にもならないのでしょうか?そんなことはないと思うのですがね。

軍事政権韓国民主韓国では別の国だから、ベトナムに謝罪する必要はないとか言う人も見たことありませんしね。

補償に関して「講和条約で解決済み」だというのは、まさに責任逃れの建前に利用しているわけで、それを否定するのはどうかと思います。法律上の義務はない=法律上できない、ではありませんから、「講和条約で解決済み」という立場をとったとしても、やろうと思えば対応できるわけです。やらないのはやりたくないからで、まさに「責任から逃げている」わけです。

講和条約で解決済み」という主張は、少女を強姦した相手が強姦時効成立後に現われて「法律上、責任をとる義務はありません」と言っているようなものです。

そういう主張自体、日本の対外イメージを損なうでしょうね。


二点目

 第2の誤解は、したがって「枢軸国日本」の行動への批判がされると、まるで自分たちが批判されたように感じて、反論や名誉回復を行わなくてはならないという心情になる、そのこと自体が「誤解」であるということです。

 もちろん、「国のかたち」はサンフランシスコ講和によって変わったけれども、民族や文化の上で一貫性はあるし、その延長で、戦場で亡くなった多くの兵士も自分たちと同じ日本人であり、そうした犠牲者に「枢軸国の不名誉」を押し付けることはしたくない、それは自然な心情としてあると思います。

 ですが、この問題に関しても、個々の兵士に至る日本軍の「全員が戦争犯罪人」であるという考え方は「講和」の精神にはありません。あくまで誤った方針へと指導した責任者のみの罪を問うという「講和条件」で和平を実現したのであって、個々の兵士や戦没者の全員の名誉まで否定しているわけではありません。

 ですから、偽証言や誤報に基づく問題があったからといって「慰安所を設置した軍隊」としてまるで日本軍全体や個々の戦没者までが不名誉な印象で固定化されているわけではありません。批判の対象としては、そのような「慰安所を設けなければ士気が保てない」ような作戦を続けて、実際に「慰安所設置」に関わった軍の上層部へのものであると理解すべきです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

まあ、これはその通りでしょうね。

靖国参拝に対する海外の反応を見れば、このあたりは当然の理解ですし、冷泉氏の靖国参拝に対する意見もこのようなものだったはずですね。


三点目

 第3の誤解は、それでも軍の方針や軍の上層部の名誉を回復したいとして、これはこの欄でも再三申し上げてきたことですが、「狭義の強制」つまり銃剣を突きつけて「人さらいのように」女性を集めたというのは「事実でない」と主張することに「効果はない」ということです。

 つまり「強制連行ではなかったが人身売買だった」、または「軍や警察が女性の身柄を拘束した事例があるが、それは業者の財産権という社会秩序維持のためだった」、「脱走を取り締まったが、それは戦地での危険から保護をするためだった」、「一晩に大勢の相手をさせたが、少なくとも対価として金銭の支払いはあった」という「事実の訂正」をしたからといって、国際社会評価は変わらないと考えるべきです。

 というよりも、「事実関係の訂正キャンペーン」を強化すれば「日本軍従軍慰安婦という問題を初めて知ることになる」人を増やしてしまうだけです。そうした人々が「なるほど人身売買であって民間主導の経済行為だったのだ」と「理解」を示して「ポジティブな印象」を持つ可能性はゼロだと思います。

 この論点に関しては、「現在の価値観で過去の問題を断罪している」とか「19世紀まで奴隷制を実施していたアメリカに言われたくない」などという反論があるようですが、こうした言い方も日本を一歩外に出れば現実論として全く説得力は持ちません。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

これもまあ、その通りでしょうが、「「事実関係の訂正キャンペーン」を強化すれば「日本軍従軍慰安婦という問題を初めて知ることになる」人を増やしてしまうだけ」という助言は、できれば隠しておけ、という願望がにじみ出ていてどうかと思います。


四点目

 第4の誤解は、「狭義の強制はなかった」という点など、「枢軸国日本の名誉回復」を進めることが、国際社会での日本の立場を強化するという考え方です。これは大変に危険な誤解です。というのは、この考え方で押し切れば、中国韓国は「現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在」つまり「枢軸国の延長」だというプロパガンダを国内外で展開することが可能になります。

 そうしたプロパガンダがあるレベルを越えていくようですと、国際社会における日本の政治活動や経済活動に支障を来すばかりか、特に中国の場合は日本を仮想敵とした軍拡の口実にもなっていきかねません。そのように対立を激化させた責任が日本にあるとなれば、アメリカなど同盟国の心証も悪化させることになります。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

これもその通りですね。もっとも「「現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在」つまり「枢軸国の延長」だというプロパガンダ」に一番貢献しているのは安倍首相でしょうけど。

さすがに国際社会との認識のずれに気付く人も出てきたようですね。

こういう記事を見かけました。

Posted on 2014年9月18日 by 杉江義浩

クマラスワミ報告書の全文を読んでみたら、大きな勘違いに気づいた

僕はてっきり従軍慰安婦問題で日本の国際的評価を悪くしている、国連のクマラスワミ報告書なるものが、例の朝日新聞吉田証言をめぐる誤報をもとに作成されたと今まで思い込んでいた。読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理までそれっぽいことを言っているので、そう感じてしまうのも無理はない。

http://ysugie.com/archives/3315

確かに読売産経安倍政権だけでなく、毎日も含めたほとんど全てのメディアや言論人がそのように思わせる発言を連日繰り返しているわけですから、「そう感じてしまうのも無理はない」でしょうね。

実際に、クマラスワミ報告書を読んでみれば、吉田証言にほとんど依拠していないことくらいは容易に理解できるでしょう。

たったこれだけである。そして全体としては公文書や信頼性のある文書を得られなかったので、この特別報告書は元従軍慰安婦の女性による告白を主な根拠として書いたものである、とハッキリ記されていた。つまり吉田証言の影響なんて殆ど全くといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ。僕としたことがなんたる大きな勘違いをしていたのだろう。

http://ysugie.com/archives/3315

ちなみに、1992年に韓国の挺対協が出した証言集や1993年に韓国政府が出した報告書でも吉田証言の影響などはほとんどありませんので、読んでみることをお勧めします。

まだある誤解

朝日新聞が捏造に近い誤報をし、それを32年間も訂正せず、世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重いという僕の基本的な認識には変わりはない。河野談話が作成された時期は末期宮沢内閣で、自民党が結党以来初めて政権の座を奪われて下野するという、いわば死に体状態になっていた時であるというのも偶然ではないと思っている。次期首相社会党の村山である。そのタイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算であり、それも気に入らない。

http://ysugie.com/archives/3315

1982年、83年の報道は、こんな証言をしている人がいますよ、こんな本が出ましたよ、という紹介程度であって「捏造に近い誤報」と言うのはさすがに言い過ぎでしょう。これも実際の記事を読んでみてはどうかと思いますし、同時期に読売などの他紙がどう報道したのかも読んでおくべきでしょうね。

1997年には「真偽は確認できない」と訂正していますから、「32年間も訂正せず」という基本認識も誤りです。さらに宮澤内閣後の「次期首相社会党の村山である」というのも間違いで、実際は細川政権ですね。1993年6月の選挙では社会党も大きく議席数を減らしており河野談話当時に村山氏が首相になるとは誰も思ってなかったと思います*1

「そのタイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算」というのも、時系列としておかしいですね。“朝日報道が煽った”説は、1992年1月の宮澤首相訪韓直前の報道についてよく言われますが、この時点では衆院選より1年以上前です。1993年8月頃の報道で言うなら、どのメディア慰安婦問題を取り上げていましたから朝日どうこうという話にはならないでしょう。

朝日新聞の計算」というのは陰謀論の域を出ていないとしか言いようがありません。

「巷で一部の人が最近さわいでいる」?

ただ巷で一部の人が最近さわいでいる「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説だけは、大きな勘違いであることを今日ハッキリと確認したのであった。

http://ysugie.com/archives/3315

自分で最初に「読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理までそれっぽいことを言っている」と書いているのに、「巷で一部の人が最近さわいでいる」と表現するのはどうかなぁと思います。

杉江氏自身が勘違いであると確認した「「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説」を流布しているのがまさに「読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理」であるわけですが、朝日報道に対して「世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重い」とみなすのであれば、同じ基準で「「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説」で「世論を大きくミスリードして」いる「読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理」を批判すべきだと思うんですけどね。


それでも評価できる点

ちゃんとソースにあたって「吉田証言の影響なんて殆ど全くといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ」という結論にたどり着いたことは、十分に評価できます。

それすらやらない人が圧倒的に多いわけですから、自らちゃんと資料を読んで考えたというだけでも十分に評価に値します。


追加

今プロフィール見たら、杉江義浩氏ってNHK関連の人なんですね。

だとすると「河野談話が作成された(略)タイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算」とかいう発言はちょっとどうかと思います。

以前、取り上げましたが、NHK河野談話の約1年前の1992年8月14日に慰安婦問題を含むこういう特集を放送しています。

(514) 92.08.14 調査報告 アジアからの訴え〜問われる日本の戦後処理

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140504/1399218380

戦後処理関連では他にもこういうのがありました。

495 92.06.21 化学兵器 第1回 毒と薬のジレンマ

496 92.06.22 化学兵器 第2回 20世紀の負の遺産

512 92.08.10 シリーズ アジア太平洋戦争 第1回 日米戦は重慶で始まった

513 92.08.11 シリーズ アジア太平洋戦争 第2回 埋もれた延安報告

515 92.08.15 東京裁判への道〜なにが、なぜ裁かれなかったのか〜

https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_92_all.html

化学兵器」については旧日本軍の遺棄化学兵器に言及していたはずです。

1993年度はこんな感じです。

623 93.08.01 調査報告 朝鮮人強制連行〜初公開・6万7千人の名簿から〜

631 93.08.14 幻の外務省報告書中国人強制連行の記録〜

https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_93_all.html

朝鮮人強制連行の特集などは河野談話発表の3日前です。これで朝日が煽ったとか言う認識はさすがにどうかと思います。

*1河野談話当時の社会党委員長は山花貞夫

2014-09-17

大沼氏は次の生贄

アジア女性基金を通じての大沼氏の変節は、アジア女性基金が為しえた功績を分かち持つ大沼氏自身をも毀損するものですが、過去半世紀において最も強烈な反動の嵐の中では保身のためやむをえない点もあるでしょう。当事者の思いとしても、救済の申し出を拒絶した韓国団体に対する逆恨みもあるでしょうから、それが韓国団体に対する非難につながったとしても、個人としての大沼氏を全面的に責める気には私はなれません。

しかし、慰安婦問題否認が事実上完成した今、歴史修正主義勢力の矛先は他の戦争責任問題に向けられつつあります。そのひとつは、サハリン残留韓国人問題です。

サハリン残留韓国人は「4万3千人」の大ウソ

産経新聞 9月14日(日)12時36分配信

 産経新聞の連載小説『アキとカズ』は、ついに双子の姉・アキが24年ぶりに樺太から祖国・日本へ帰国を果たす。ソ連(当時)からも日本政府からさえも忘れられた樺太の日本人の存在を知らしめ、固く閉じられた“鉄の扉”をこじ開けるきっかけとなったのは、アキがソ連の最高権力者・フルシチョフ宛てに打った一通の電報であった。

 このエピソードは大筋「実話」である。アキのモデルのひとりである堀江和子さん(平成19年、80歳で死去)が、やむにやまれず打った“捨て身の作戦”。

 『サハリン韓国人はなぜ帰れなかったのか』(草思社)著者、新井佐和子さんは、この時の堀江さんの思い切った行動がなければ、いまだにサハリン樺太)に残っていた人々は帰れなかったかもしれない、としている。

 さて、このとき(昭和32年〜34年)、物語のアキと朴大成(パク・デソン)のように、ソ連は、日本人と「日本人の配偶者である朝鮮人」の帰国は許したものの、それ以外の朝鮮人の引き揚げは依然、認めなかった。彼らの多くは出身地の「韓国」への帰国を希望しており、激しく対立する北朝鮮への配慮から、ソ連が頑として出国させなかったからである。

 この問題が“自虐的な日本人”にあおられて、1990年前後になってから本格的に外交問題化してしまう。曰(いわ)く、「日本は戦前から戦中、4万3000人もの朝鮮人樺太に強制連行した上、戦後、朝鮮人だけを置き去りにした。日本政府の責任において故郷へ帰せ」というものである。

 物語の中でも再三、書いてきたが、「強制連行」も「朝鮮人を置き去りにした」こともまったく事実ではない。そして、いまだに語られる「4万3千人」という数字が戦後、“偽造された大ウソ”なのだ。

 戦後、樺太に残された朝鮮人は多く見積もっても約1万5千人。ところが、樺太実効支配したソ連政策によって、戦後になり、中央アジア朝鮮族北朝鮮から「新たな朝鮮人」が樺太に移住してくる。

 当然のことながら、戦後やってきた彼らは日本と何の関係もない。

 だが、この問題が外交問題化し、日本が「道義的責任」から支援を余儀なくされると、どういうわけか「彼ら」も支援対象に紛れ込み、『4万3千人』という数字が独り歩きしてしまう。オメデタイのは、日本政府がこれまでに約80億円もの巨額の支援をさせられながら、彼らの出自を精査した気配がないことだ。

 かつて、外務省の担当者が「これぐらいの金額なら…」と放言したことがあった。つまり、この程度の支出韓国が文句を言わないでくれるのなら良いのではないか、という意味である。日本と縁もゆかりもない朝鮮人に支払われ続けた80億円の血税は“はした金”なのだろうか? これこそ「事なかれ主義」の日本外交の象徴であろう。(『アキとカズ』作者、喜多由浩)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140914-00000510-san-soci

今のところ、産経新聞は個人名を挙げていませんが、「1990年前後になってから本格的に外交問題化」させた「“自虐的な日本人”」が、大沼氏らを指していることは自明です。

大沼保昭サハリン棄民 (中公新書)』)

内容紹介

戦前・戦中、炭坑資源開発のためサハリン(樺太)に渡った労働者の中には強制的・半強制的に募集・連行された韓国朝鮮人が数万人いた。終戦とともに始った引き揚げ事業サハリンにも及んだが、その中に帝国臣民として徴用された朝鮮人は含まれていなかった。彼らはソ連統治下のサハリンに残されたのである。冷戦・南北朝鮮対立という国際環境、そして日本の戦後責任への無自覚に抗し、故郷訪問に至るまでの45年の足跡を克明に辿る。

大沼氏自身にとって、サハリン棄民問題はアジア女性基金以上のライフワークのはずです。これを汚されることは、大沼氏自身の半生を否定するようなものですが、大沼氏はそれでも歴史修正主義側に尻尾を振るのでしょうか。

国会招致されて、自己批判を強いられることが望みなのでしょうか。

今、批判すべき相手が誰なのか、見誤らないことを願って止みません。

2014-09-16

“「強制性」がなかったことを否定できない”というのが共通認識ならいいんですけどね

少しは認識を改められればいいんですけどね。

いくつか指摘しておきます。

指摘1

慰安婦制度」は、たとえ官憲による強制がなかったとしても、不本意ながら涙を流している元慰安婦の方が存在していることは、「強制性」がなかったことを否定はできません。このことはアンチ慰安婦問題の方々も、概ね共通認識だと理解しています。

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

まず、この理解は甘いといわざるを得ません。せめてこれが共通認識であれば何ぼかマシです。

2012年5月に自民党竹本直一古屋圭司衆院議員山谷えり子塚田一郎参院議員の四人がニュージャージー州パリセイズパーク市に行って、慰安婦像を撤去するよう市長に圧力をかけたことがありますが、その時に彼等4人が主張した内容というのが、以下のように報道されています。

“Their purpose was to have us pretty much remove it,” he said on Wednesday as he stood in front of the library. “Regardless of whatever else they said their main goal was, to come here to think we would be intimidated to take it away, and we are not.” Rotundo said during a three-hour meeting last Sunday with town officials, the four Japanese legislators disputed the number of comfort women and claimed that they willingly served the soldiers.

http://www.northjersey.com/news/immigration/051012_Palisades_Park_ceremony_remembers_comfort_women.html
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120512/1336846498

「they willingly served the soldiers」ですよ。「不本意ながら涙を流している元慰安婦の方が存在していること」すらこれら4人の自民党議員は認めていないわけで、それがアメリカ報道されているわけです。ネット上での多くの「アンチ慰安婦問題の方々」も「不本意ながら涙を流している元慰安婦の方が存在していること」を理解していたら、売春婦だの嘘つきだのと言った暴言は吐かないでしょう。

指摘2

日本軍による強制」と「強制性」。8月5日の朝日新聞では前者を誤報であったことを認めて取り下げましたが、後者は「広い意味での強制性があった」と9月12日の紙面でも繰り返し述べています。日本国内ではこれを「朝日新聞の論理のすり替え」と憤る声が大きいですが、果たしてそうなのか?ということが疑問に感じるようになりました。

国連で人権問題が重要なアジェンダになったこと、国連では性的奴隷は「軍による強制」という狭い範囲ではなく広い意味での「強制性」と捉えていることなどを考慮すると、どうも朝日新聞の主張は国連アジェンダと一致しているように見えてきました。

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

「どうも朝日新聞の主張は国連アジェンダと一致しているように見えてきました」というのは、少しは歪んだ認識を訂正できてきたのかと思えますが、「日本軍による強制」と「強制性」という表現はちょっとおかしいですね。後者の表現はまるで日本軍が全く関与していないかのように読めます。厳密に言うなら、「朝鮮半島における日本軍による直接的な強制連行」と「日本軍管理下での強制性」と言った方が良いでしょう。

それでもまあ、「どうも朝日新聞の主張は国連アジェンダと一致しているように見えてきました」というのは一歩前進として評価したいです。


指摘3

民間業者がやったことだから、日本軍・日本政府の責任はない」という声があります。私もそう思います。「民間業者の中には韓国人もいたのではないか。韓国人非難されるべきではないか?」という声もあります。私もそう思います。しかし、英語圏では「日本軍による強制」が論点になっていない以上、日本人がこの主張を繰り返すことは徒労に終わるだけでなく、開き直りと取られかねません。

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

日本軍と全く関係の無いところで民間業者が売春強要したわけじゃなく、日本軍の要請により日本軍管理下での売春婦を民間業者に集めさせたわけですから、「日本軍・日本政府の責任はない」ということ自体ありえないわけですが、とりあえず、指摘1、指摘2をクリアしてもらいたいところです。

さらに言えば、当時の売春婦自体、詐欺や誘拐で集められることがあり性奴隷的な立場にあったことは周知の事実であり、それを防止する実効的な対策なしに日本軍管理下で漫然と慰安婦制度を運用したこと自体、軍政府が主導した性奴隷であるとしか言いようがありませんが、指摘1、指摘2が理解できなければ、これも理解できないでしょうから、とりあえずは置いておきます。


指摘4

もし、田淵さんに非があるとすれば、日本人が性的奴隷の意味を理解していないのに、性的奴隷という言葉を多用し、結果的に反感を招いている点です。もし、日本人の理解不足を知らなかったのであれば、説明を心がけてはいかがでしょうか?

http://naokis.doorblog.jp/archives/ianfu_issue.html

「もし、田淵さんに非があるとすれば」という留保があるものの、「日本人の理解不足」などと勝手に日本人を代表されるのもどうかと思いますし、そういった説明自体、何度もされてきたのに否認論者が受け入れなかったわけですから、さすがに説明責任を相手に押し付けすぎだと思います。