Hatena::ブログ(Diary)

誰かの妄想・はてな版

2014-09-28

「我が闘争」を“ユダヤ人が嫌いな方”にオススメするような書店をどう思う?

例えば、こういう煽り方で「我が闘争」を売る書店をどう思いますか?

【4F】『我が闘争アドルフ・ヒトラー

ユダヤ人が嫌いな方、なぜ嫌われているか気になる方や、ベルサイユ条約、選民気取り、金融問題、反独、それらについて疑問をお持ちの方にオススメです。

単純にユダヤ人に関する問題に興味がある人に対しての紹介なら、「我が闘争」じゃなくてもいくらでも本はあるでしょう。わざわざ「我が闘争」を上のような表現で紹介することがどのような意味を持つかくらいは容易に理解できるはずです。

普通の感覚であれば、ユダヤ人迫害を行ったナチスがどのような思想の下で差別を推進したか、それを知りたい人にオススメするのが、真っ当な売り方と言えるでしょう。

元ネタ

もちろん元ネタはこの話題です。

【4F】新刊『大嫌韓時代』桜井誠(青林堂)

隣国が嫌いな方、なぜ嫌われているか気になる方や、植民地支配、戦勝国気取り、領土問題反日、それらについて疑問をお持ちの方にオススメです。

http://togetter.com/li/724047

上述した内容を踏まえれば、この煽りがいかに問題かは容易に理解できるでしょう。

しかし、まあ当然のように理解を拒絶する人たちが沸くのが、今の日本のネットです。

etc-etc 「アメリカが嫌いな方、なぜ嫌われてるのか気になる方」というのはヘイトスピーチだったのか。本を売るのは問題ないけど、本の紹介は問題なのか。なるほど、最近の左翼の無自覚反リベラルファシストは目覚ましいわ 2014/09/27

kirifuu どれが排外主義に対応する言葉なのかわからん。この界隈は相変わらず異次元に生きてんな。反ヘイトなどと言いつつ己の気に食わない言葉をヘイト排外主義に分類する排外主義者の集まり。怖いねぇ。 2014/09/27

CelestialFire twitter 差別 カウンターデモの暴力肯定姿勢もそうだけど、ファシズムを批判する側が自らファシズム的行動原理に接近していく状況に困惑させられる昨今。 2014/09/27

aceraceae 本屋が書籍を宣伝するのは普通なんだけどな。書籍に書かれている思想を紹介することと本屋の思想を混同する人が多すぎる。 2014/09/27

hanbey64 はあ?おすすめってヒトラーのわが闘争をおすすめしてもいけないのか?何を売ろうがすすめようが買おうが自由なんじゃね 2014/09/27

te2u タイトルや内容がどうであれ、それが書籍であれば販促するのは書店として当然だし、クレームをつけるなら出版社では。/排外主義だと主張している人たちの言動が極めて排外的。 2014/09/27

poko_pen 単なる本の紹介すら禁止する事のほうが、言論弾圧になっているんだけども、ヘイトを声高に叫ぶ人達はそんな言論弾圧は容認するってことだよね(苦笑)。 2014/09/27

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/724047

反論したつもりなんでしょうけど、反論になってませんね。

私自身はこの本を書店が売ること自体を問題視しませんが、売るにあたって、「排外差別ヘイトスピーチを繰り返す右翼団体がどのような思想で差別を正当化しているのか、それを知りたい人にオススメです」くらいは言っておいた方がいいでしょうね。


「調べるとっかかり」?

こういう人もいました。

wonodas 「隣国が嫌いな方」以外の文言は特に問題に感じられないが。嫌いな人がいるのは事実だしそれがなぜかと知るのも大事だし実際のところどうなのかと調べるとっかかりになればいいんでないの 2014/09/26

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/724047

日韓日中問題を「調べるとっかかり」として、このような本を推奨するという神経がよくわかりません。

オウム事件をよく知らない人に「調べるとっかかり」として、教団が出版した本を推奨するような人なんているでしょうか?いたとしたら、その人に対してどう思うのでしょうか。

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2014-09-25

韓国政府以外には通じるとでも思ってるのかな?

韓国は侵略戦争の被害者ではなく共犯者だったと言っても韓国政府に通じない理由」という記事について。

この手の理屈って加害者側が責任逃れに使う方便ですから、本来まともに相手にする価値もありません。

よくあるパターンとして「韓国」というのが、政府を指すのか、住民を指すのか、不明瞭にしているというのがあります。件のタイトルも「韓国侵略戦争の被害者ではなく共犯者だった」という部分の「韓国」が何を指すのか不明瞭になっています。これが韓国政府を指すのであれば、明らかに間違っていますね。臨時政府は統治すべき国土と人民を日本に奪われた被害者であり、日本の侵略戦争の共犯者ではないからです。韓国の住民を指すのであれば、まあ理解できなくはありませんが、日本の植民地支配と侵略戦争の共犯となった韓国人もいたことは、別に現韓国において否定されているわけではなく、むしろ「親日派」として糾弾される対象になっていますよね。一方で植民地支配や侵略戦争に抗した韓国人もいたわけですから、「韓国侵略戦争の被害者ではなく共犯者だった」と表現するのはやはりおかしいと言うことになります。

韓国政府に通じない理由」とかいっていますが、韓国政府以外には通じるとでも思っているのでしょうか。

韓国臨時政府に似た事例としては、ポーランド亡命政権フランス亡命政権がありますし日本も自由インド仮政府なるものを作ったりしていますので歴史的にはさほど珍しいものではありません。


 このネタ話だが、前提を簡単にまとめておく必要があるだろう。曰く……戦前の朝鮮半島は日本の領土であり、その地の市民は日本国籍であり、志願兵は日本兵である。だから、朝鮮人朝鮮民族国家も日本の侵略戦争の被害者ではなく共犯者だ……という枠組みである。

 私としはその枠組みにはさほど関心はない。現在の日本から見るとそういう見方もありうるだろうなというくらいである。

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2014/09/post-8b1c.html

むしろ日本から見てこそ、そういう見方はありえないと思いますね。

例えば、2012年に発覚した尼崎事件では、主犯に支配された家族内で息子・娘らによる母親の殺害が起きていますが、この場合、息子・娘らは共犯ではあります。しかし、母親の殺害を強いた主犯本人が、息子・娘らを「お前らは共犯で、被害者ではない」と主張した場合、第三者はどう思うでしょうか。

共犯を強いた主犯である日本が「朝鮮人朝鮮民族国家も日本の侵略戦争の被害者ではなく共犯者だ」などと主張するのは、厚顔無恥の極みと言えますが、実際に厚顔無恥なんだからどうしようもないですね。


事実なのに偽史扱い

 この韓国側から見た韓国の歴史を世界がどう見ているかというと、支持している国は存在しないようだ。経緯から見ても、米国も認めていない。では間違いかというと、歴史学的には間違いと言ってもよいのかもしれない。そもそも大韓民国臨時政府による対日宣戦布告も他国に認められていないはずだ。また、独立は米国によって創作されたと見るほうが自然だろう。

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2014/09/post-8b1c.html

1919年の三・一独立運動から臨時政府の成立、日本敗戦後の朝鮮半島南部での単独選挙強行を経て大韓民国が成立したのは歴史上の事実であって、これを偽史扱いするのはどうかと思いますね。「支持している国」とか「米国も認めていない」とか言うのも意味不明ですが、米国を初めとする世界中の国々は、三・一独立運動や臨時政府の存在そのものを否定しているのでしょうか?だとすれば驚きですけどね。

朝鮮半島南部で単独選挙を強行して成立した大韓民国に正統性があるのか、という議論は成立しえるでしょうが、これそういう話でもないですよね。



韓国建国8月13日説はデマです。

そもそもfinalvent氏が書いている内容自体にデマがあります。

 その後、連合国としては、南北朝鮮総選挙を実施し朝鮮統一政府を樹立させようともしたが、ソ連の反対により頓挫した。しかたなく米軍は、韓国だけで1948年5月10日に憲法制定国会総選挙を実施させ、この結果、「大韓民国臨時政府」の李承晩が初代大統領なり、1948年8月13日に大韓民国建国した。なお、現代韓国では、この日は、日本の終戦の日に合わせて2日ずらして15日になっている。

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2014/09/post-8b1c.html

どの韓国史の教科書を見ても、大韓民国建国1948年8月15日となっていて、8月13日ではありません。8月13日と書いているものがあれば、それは誤記です。

韓国建国は8月13日なのに、8月15日に修正している”というのは、ネトウヨが流行らせたデマで根拠のないものです。独立宣布も記念式典も1948年8月15日に行なわれており、13日ではありません。

で、こういう嘘にのせられてホルホルしている人たちが湧くわけです。

2014-09-20

韓国側関係者が怒ったのは「日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたため」

朝日新聞記事が、日韓関係を損ねたという主張が政府メディアによってまかり通っていますが、1992年当時、NHKは以下のように報じています。

(514) 92.08.14 調査報告 アジアからの訴え〜問われる日本の戦後処理

https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_92_all.html

韓国

(佐藤俊行)

日本と韓国の関係が真に友好的な関係になるのを阻害する要因の一つが従軍慰安婦問題です。

去年12月、三人の従軍慰安婦東京で初めて訴訟を起こし、この問題が公のものとなりました。

韓国の関係者が怒るのは、最初、資料がないとして軍の関与を否定した日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたためです。

現在、日本政府は国の関与を認めてはいますが、動員にあたって強制を裏付ける資料は見つからなかったという立場を取っています。

韓国政府は先月、日本の資料と慰安婦の証言を基に中間報告を発表しましたが、動員は朝鮮総督府による強制的なものだったと、日本政府の主張に真っ向から反論しています。慰安婦問題は反文明的な蛮行だった、と公式文書には珍しい感情的な表現も目立ちました。

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140504/1399218380

もちろん、番組中では吉田清治証言など重視されていません。

日本政府1990年6月に軍の関与を否定する発言をし、その直後の1990年7月に挺対協の前身である挺身隊研究会が結成され、1990年12月にも日本政府は関与を否定し、問題が日韓両国で大きく取り上げられるようになっていきます。そして1991年8月に金学順さんが元慰安婦であると名乗り出て1991年12月には提訴に至ります。しかし提訴直後の12月7日、日本政府はまたも「政府が関与した証拠はない」と関与を否定、1992年1月に軍関与資料発見の報道が出るに及びようやく、日本政府は「旧日本軍が何らかの形で関与していたことは否定できない」と認めますが、秦郁彦氏や産経新聞による吉田証言否定キャンペーンにより、慰安婦問題を否認する動きが活発化し、その流れの中で、「関与はしたが強制連行はしていない」という1992年7月の加藤談話に至ります。これに対して、韓国政府は7月末に「事実上の強制連行があった」と反論しています*1

その2週間後に放映されたのが、上記のNHK特集です。

韓国の関係者が怒るのは、最初、資料がないとして軍の関与を否定した日本政府が、新しい資料が出るたびに態度を変えたためです。」と評されるに十分な理由が日本政府の言動にあったわけです。

吉田証言とか朝日報道とか関係ありません。

ちなみに1968年時点では、日本政府慰安婦動員にあたって「軍が相当な勧奨をしておったのではないかというふうに思われます」*2と認めています。にもかかわらず、都合が悪くなると日本政府は「関与していない」と逃げたわけですから、不信感を抱かれて当然としか言えません。

*1:参照「河野談話に至るまでの経緯について」http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140408/1396883009

*21968年4月26日衆議院社会労働委員会厚生省実本博次援護局長発言

2014-09-19

この指摘は結構正しいと思う

冷泉氏の記事に書かれている「第5の誤解」というのは重要な指摘だと思います。

朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

 第5の誤解は、これは「朝日新聞」の立場に近い人々の間に見られると思いますが、日本の保守的な世論や、あるいは安倍政権がこの問題で強硬になれば、「いつかは強い外圧が来て何とかしてくれるだろう」という見通しがあるように感じられます。これも誤解だと思います。

 国際社会は「激しく日本批判をするような面倒なこと」はせず、むしろ日本を軽視したり無視したりするだけでしょう。というのは「慰安婦問題に関する事実関係の訂正をしたい」という日本の意向が「全く理解できない」からです。反発する以前に「理由が分からない」ことでの違和感、不快感がひたすら深まるだけだと思います。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

「いつかは強い外圧が来て何とかしてくれるだろう」という期待が感じられるコメントは確かに散見されます。ここまで明確な期待でなくとも、“海外が黙っていない”的なコメントは数多くあると言えます。海外が日本の歴史修正主義理解を示すことはないでしょうが、だからと言って、それを正そうとするかと言えば、それはまず期待できません。この点、「国際社会は「激しく日本批判をするような面倒なこと」はせず、むしろ日本を軽視したり無視したりするだけ」という冷泉氏の指摘は的を得ていると思います。

「日本の意向が「全く理解できない」から」かどうかは何とも言えませんが、理解したとしてもせいぜい非難決議くらいが関の山です。日本政府はいつも通り、非難決議を無視するか、真意が理解されていないと嘯くだけでまず効果はなく、何ともなりません。

“海外から誤解されている”と誤解している日本人の目を覚ますのは、結局日本人自身の手によらねばならないという覚悟が必要でしょう。

あるいは、中国問題について“海外から誤解されている”と誤解した日本人が薄目を開けた1945年のような事態を迎えるか、ですね。

2014-09-18

「朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解」の読解

冷泉氏の記事に書かれている誤解のうち「第5の誤解」を除く部分について。

朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

一点目

 一点目は、80年代末にこの「従軍慰安婦」問題が知られるようになって以降、たとえ偽りの証言や、誤報によって「狭義の強制」があったという伝わり方をしたとしても「現在の日本国の名誉や評判」はまったく傷付かなかったということです。

 ですから「国際社会における日本の評価に悪影響があった」という印象、あるいは加藤官房副長官の言う「誤報による影響」というのは、そうした理解の全体が「誤解」です。

 理由は簡単です。国際社会では、サンフランシスコ講和を受け入れ、やがて国連に加盟した「日本国」は、「枢軸国日本」つまり、常任理事国でありながら国際連盟を脱退し、更にナチス・ドイツファシスト党イタリアと組んで第二次世界大戦を起こした「枢軸国日本」とは「全く別」であることを認識しており、そこに一点の疑念もないからです。

 それは、講和を受け入れたという法的な理由だけではありません。戦後の日本政府日本企業、日本人が国際社会で活動するにあたって、国際法や各国法を遵守し、多くの国や地域の中で際立った国際貢献を行い、例えば国連安保理非常任理事国にも再三選出されているように、戦後の日本および日本人の行動が国際社会から信頼されているからです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

やや違和感の残る表現です。

そもそも旧日本に関しては、全世界が第二次世界大戦の元凶の一つという認識であって、従軍慰安婦問題によってその評価が変わったわけでもなく、旧日本のような侵略国であればさもありなん、としか思わないのが海外の普通の市民の感覚でしょう。

戦後日本に対する評価に影響したとすれば、戦前戦中の侵略や戦争犯罪行為を否定しようとする日本政府右翼の試みに対する不快感として現われたくらいでしょうね。

国際社会では、(略)「日本国」は、(略)「枢軸国日本」とは「全く別」であることを認識して」というのは、別に戦後日本が“優等生”だったからではなく、戦後50年近く経っていた1990年代において、戦前日本と同一視するような感覚を抱く人が少なくなっていたという要因の方が大きいでしょう。無論、大きな戦争をしていないが故に悪目立ちしなかった、という意味では、平和国家としての歩みが日本のイメージを改善させたとも言えるでしょうけど。

 現在の日本国枢軸国日本が別である以上、第二次大戦の戦中に枢軸国日本が起こした非人道的な行為に関しては、現在の日本国が、現在の世代として政府正式謝罪を行ったり、現在の世代の納税した国庫金から補償をしたりする必要はありません。

 補償に関しては「講和条約で解決済み」だというのは、別に責任から逃げているわけではなく、「講和によって枢軸国日本から日本国への移行が相手国により承認された」、つまり「現在の日本国枢軸国日本ではない」ことが相手国から承認されたことを意味するからです。これは、サンフランシスコ講和の対象外であった、日中、日ソの各講和や日韓条約でも全く同様です。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

この部分は相当に乱暴な意見です。今の日本人の民度と精神年齢を考慮すれば、こういう言い方をしないと拗ねてしまうのかもしれませんが、旧日本と戦後日本を、責任回避のために別の国扱いするのは果たしてどうでしょうか。

シベリア抑留で苦労した人たちは、旧ソ連ロシアは違うと言ってロシアには謝罪する必要がないとか思ってますかね?ロシアシベリア抑留を正当化する主張が蔓延してても気にもならないのでしょうか?そんなことはないと思うのですがね。

軍事政権韓国民主韓国では別の国だから、ベトナムに謝罪する必要はないとか言う人も見たことありませんしね。

補償に関して「講和条約で解決済み」だというのは、まさに責任逃れの建前に利用しているわけで、それを否定するのはどうかと思います。法律上の義務はない=法律上できない、ではありませんから、「講和条約で解決済み」という立場をとったとしても、やろうと思えば対応できるわけです。やらないのはやりたくないからで、まさに「責任から逃げている」わけです。

講和条約で解決済み」という主張は、少女を強姦した相手が強姦時効成立後に現われて「法律上、責任をとる義務はありません」と言っているようなものです。

そういう主張自体、日本の対外イメージを損なうでしょうね。


二点目

 第2の誤解は、したがって「枢軸国日本」の行動への批判がされると、まるで自分たちが批判されたように感じて、反論や名誉回復を行わなくてはならないという心情になる、そのこと自体が「誤解」であるということです。

 もちろん、「国のかたち」はサンフランシスコ講和によって変わったけれども、民族や文化の上で一貫性はあるし、その延長で、戦場で亡くなった多くの兵士も自分たちと同じ日本人であり、そうした犠牲者に「枢軸国の不名誉」を押し付けることはしたくない、それは自然な心情としてあると思います。

 ですが、この問題に関しても、個々の兵士に至る日本軍の「全員が戦争犯罪人」であるという考え方は「講和」の精神にはありません。あくまで誤った方針へと指導した責任者のみの罪を問うという「講和条件」で和平を実現したのであって、個々の兵士や戦没者の全員の名誉まで否定しているわけではありません。

 ですから、偽証言や誤報に基づく問題があったからといって「慰安所を設置した軍隊」としてまるで日本軍全体や個々の戦没者までが不名誉な印象で固定化されているわけではありません。批判の対象としては、そのような「慰安所を設けなければ士気が保てない」ような作戦を続けて、実際に「慰安所設置」に関わった軍の上層部へのものであると理解すべきです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

まあ、これはその通りでしょうね。

靖国参拝に対する海外の反応を見れば、このあたりは当然の理解ですし、冷泉氏の靖国参拝に対する意見もこのようなものだったはずですね。


三点目

 第3の誤解は、それでも軍の方針や軍の上層部の名誉を回復したいとして、これはこの欄でも再三申し上げてきたことですが、「狭義の強制」つまり銃剣を突きつけて「人さらいのように」女性を集めたというのは「事実でない」と主張することに「効果はない」ということです。

 つまり「強制連行ではなかったが人身売買だった」、または「軍や警察が女性の身柄を拘束した事例があるが、それは業者の財産権という社会秩序維持のためだった」、「脱走を取り締まったが、それは戦地での危険から保護をするためだった」、「一晩に大勢の相手をさせたが、少なくとも対価として金銭の支払いはあった」という「事実の訂正」をしたからといって、国際社会評価は変わらないと考えるべきです。

 というよりも、「事実関係の訂正キャンペーン」を強化すれば「日本軍従軍慰安婦という問題を初めて知ることになる」人を増やしてしまうだけです。そうした人々が「なるほど人身売買であって民間主導の経済行為だったのだ」と「理解」を示して「ポジティブな印象」を持つ可能性はゼロだと思います。

 この論点に関しては、「現在の価値観で過去の問題を断罪している」とか「19世紀まで奴隷制を実施していたアメリカに言われたくない」などという反論があるようですが、こうした言い方も日本を一歩外に出れば現実論として全く説得力は持ちません。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

これもまあ、その通りでしょうが、「「事実関係の訂正キャンペーン」を強化すれば「日本軍従軍慰安婦という問題を初めて知ることになる」人を増やしてしまうだけ」という助言は、できれば隠しておけ、という願望がにじみ出ていてどうかと思います。


四点目

 第4の誤解は、「狭義の強制はなかった」という点など、「枢軸国日本の名誉回復」を進めることが、国際社会での日本の立場を強化するという考え方です。これは大変に危険な誤解です。というのは、この考え方で押し切れば、中国韓国は「現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在」つまり「枢軸国の延長」だというプロパガンダを国内外で展開することが可能になります。

 そうしたプロパガンダがあるレベルを越えていくようですと、国際社会における日本の政治活動や経済活動に支障を来すばかりか、特に中国の場合は日本を仮想敵とした軍拡の口実にもなっていきかねません。そのように対立を激化させた責任が日本にあるとなれば、アメリカなど同盟国の心証も悪化させることになります。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00134630-newsweek-int

これもその通りですね。もっとも「「現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在」つまり「枢軸国の延長」だというプロパガンダ」に一番貢献しているのは安倍首相でしょうけど。

さすがに国際社会との認識のずれに気付く人も出てきたようですね。

こういう記事を見かけました。

Posted on 2014年9月18日 by 杉江義浩

クマラスワミ報告書の全文を読んでみたら、大きな勘違いに気づいた

僕はてっきり従軍慰安婦問題で日本の国際的評価を悪くしている、国連のクマラスワミ報告書なるものが、例の朝日新聞吉田証言をめぐる誤報をもとに作成されたと今まで思い込んでいた。読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理までそれっぽいことを言っているので、そう感じてしまうのも無理はない。

http://ysugie.com/archives/3315

確かに読売産経安倍政権だけでなく、毎日も含めたほとんど全てのメディアや言論人がそのように思わせる発言を連日繰り返しているわけですから、「そう感じてしまうのも無理はない」でしょうね。

実際に、クマラスワミ報告書を読んでみれば、吉田証言にほとんど依拠していないことくらいは容易に理解できるでしょう。

たったこれだけである。そして全体としては公文書や信頼性のある文書を得られなかったので、この特別報告書は元従軍慰安婦の女性による告白を主な根拠として書いたものである、とハッキリ記されていた。つまり吉田証言の影響なんて殆ど全くといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ。僕としたことがなんたる大きな勘違いをしていたのだろう。

http://ysugie.com/archives/3315

ちなみに、1992年に韓国の挺対協が出した証言集や1993年に韓国政府が出した報告書でも吉田証言の影響などはほとんどありませんので、読んでみることをお勧めします。

まだある誤解

朝日新聞が捏造に近い誤報をし、それを32年間も訂正せず、世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重いという僕の基本的な認識には変わりはない。河野談話が作成された時期は末期宮沢内閣で、自民党が結党以来初めて政権の座を奪われて下野するという、いわば死に体状態になっていた時であるというのも偶然ではないと思っている。次期首相社会党の村山である。そのタイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算であり、それも気に入らない。

http://ysugie.com/archives/3315

1982年、83年の報道は、こんな証言をしている人がいますよ、こんな本が出ましたよ、という紹介程度であって「捏造に近い誤報」と言うのはさすがに言い過ぎでしょう。これも実際の記事を読んでみてはどうかと思いますし、同時期に読売などの他紙がどう報道したのかも読んでおくべきでしょうね。

1997年には「真偽は確認できない」と訂正していますから、「32年間も訂正せず」という基本認識も誤りです。さらに宮澤内閣後の「次期首相社会党の村山である」というのも間違いで、実際は細川政権ですね。1993年6月の選挙では社会党も大きく議席数を減らしており河野談話当時に村山氏が首相になるとは誰も思ってなかったと思います*1

「そのタイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算」というのも、時系列としておかしいですね。“朝日報道が煽った”説は、1992年1月の宮澤首相訪韓直前の報道についてよく言われますが、この時点では衆院選より1年以上前です。1993年8月頃の報道で言うなら、どのメディア慰安婦問題を取り上げていましたから朝日どうこうという話にはならないでしょう。

朝日新聞の計算」というのは陰謀論の域を出ていないとしか言いようがありません。

「巷で一部の人が最近さわいでいる」?

ただ巷で一部の人が最近さわいでいる「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説だけは、大きな勘違いであることを今日ハッキリと確認したのであった。

http://ysugie.com/archives/3315

自分で最初に「読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理までそれっぽいことを言っている」と書いているのに、「巷で一部の人が最近さわいでいる」と表現するのはどうかなぁと思います。

杉江氏自身が勘違いであると確認した「「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説」を流布しているのがまさに「読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理」であるわけですが、朝日報道に対して「世論を大きくミスリードしてきた罪は極めて重い」とみなすのであれば、同じ基準で「「朝日新聞誤報=日本の名誉を国際社会で傷つけた原因」というまことしやかな説」で「世論を大きくミスリードして」いる「読売新聞産経新聞、おまけに管官房長官安倍総理」を批判すべきだと思うんですけどね。


それでも評価できる点

ちゃんとソースにあたって「吉田証言の影響なんて殆ど全くといっていいくらい関係なかったのだ。したがって朝日新聞誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいいことだったのだ」という結論にたどり着いたことは、十分に評価できます。

それすらやらない人が圧倒的に多いわけですから、自らちゃんと資料を読んで考えたというだけでも十分に評価に値します。


追加

今プロフィール見たら、杉江義浩氏ってNHK関連の人なんですね。

だとすると「河野談話が作成された(略)タイミングで慰安婦問題をあおったのも朝日新聞の計算」とかいう発言はちょっとどうかと思います。

以前、取り上げましたが、NHK河野談話の約1年前の1992年8月14日に慰安婦問題を含むこういう特集を放送しています。

(514) 92.08.14 調査報告 アジアからの訴え〜問われる日本の戦後処理

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140504/1399218380

戦後処理関連では他にもこういうのがありました。

495 92.06.21 化学兵器 第1回 毒と薬のジレンマ

496 92.06.22 化学兵器 第2回 20世紀の負の遺産

512 92.08.10 シリーズ アジア太平洋戦争 第1回 日米戦は重慶で始まった

513 92.08.11 シリーズ アジア太平洋戦争 第2回 埋もれた延安報告

515 92.08.15 東京裁判への道〜なにが、なぜ裁かれなかったのか〜

https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_92_all.html

化学兵器」については旧日本軍の遺棄化学兵器に言及していたはずです。

1993年度はこんな感じです。

623 93.08.01 調査報告 朝鮮人強制連行〜初公開・6万7千人の名簿から〜

631 93.08.14 幻の外務省報告書〜中国人強制連行の記録〜

https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_93_all.html

朝鮮人強制連行の特集などは河野談話発表の3日前です。これで朝日が煽ったとか言う認識はさすがにどうかと思います。

*1河野談話当時の社会党委員長は山花貞夫