「僅少なる一部不逞の徒の言動を誇大に報道」した事例と日本のタブー

天皇の血縁者が排外差別発言を行って批判されている最中を狙ったかのように報道された“通名を悪用した”事件報道です。

「通称」悪用して端末不正売買 容疑の韓国人を逮捕 埼玉

2013.11.1 21:41
 外国人が日本で名乗る通称を悪用して携帯電話を不正売買したとして、埼玉県警組織犯罪対策課と大宮西署は1日、組織犯罪処罰法違反(隠匿)と詐欺容疑で、韓国籍の無職、文炳洙(ぶんへいしゅ)容疑者(通称・青山星心(しょうご))=別の同容疑で処分保留、さいたま市西区清河寺=を再逮捕した。通称を悪用した犯行を組織犯罪処罰法で立件するのは全国初という。
 同課の調べでは、文容疑者は区役所で短期間に通称登録を何度も変更。新旧の通称を使い分け、平成22年10月以降、約160台のスマートフォンタブレットなどの端末を購入、古物商へ転売したとみられる。
 再逮捕容疑は8月7日、「青山星心」の通称で、さいたま市の家電量販店でスマートフォン2台を詐取。過去の通称だった「清永泰斗」を名乗り東京都内の古物商で転売し、約7万2千円を得たなどとしている。
 同課によると、文容疑者は端末代を分割して月々の料金に上乗せする制度で端末を購入したが、支払いは一切せずそのまま転売。同課の調べに「料金を踏み倒す気はなかった」と犯意を否認する一方、売却で得た金は競馬などのギャンブルに使ったという。
 頻繁に通称変更することを不審に思った区役所の届け出を受けて捜査したところ、犯行が発覚した。文容疑者は通称の違う複数の身分証を使い分け、売買を重ねていた。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/131101/stm13110121480007-n1.htm

名を5回変更…韓国籍の男、通称悪用し携帯詐取

 埼玉県警組織犯罪対策課と大宮西署は1日、韓国籍さいたま市西区清河寺、無職文炳洙容疑者(43)を詐欺と組織犯罪処罰法違反(隠匿)容疑で再逮捕した。
 発表によると、文容疑者は8月7日、さいたま市の家電量販店で「青山星心」という通称を使い、携帯電話2台(販売価格計約12万円)をだまし取り、東京都内の携帯電話買い取り店で過去の通称名「清永奏斗」でこの携帯電話2台を売った疑い。
 文容疑者は2010年10月〜今年9月、さいたま市西区役所で5回も通称を変更して携帯電話やタブレット端末などを契約し、即座に転売する手口で、約160台(被害総額630万円)をだまし取っていたという。
 西区役所が昨年10月、「通称を頻繁に変える外国人がいる」と同署に通報した。
 文容疑者は「同じ名前の人が犯罪を起こして迷惑している」などとうそを言い、通称を変更していた。県警は10月11日、文容疑者が昨年10月に同じような手口で携帯電話とタブレット端末2台をだまし取ったとして逮捕していた。
 調べに対し、文容疑者は「料金は払うつもりだった。(転売で得た金は)ギャンブルに使った」などと供述しているという。
(2013年11月2日15時21分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131102-OYT1T00532.htm

詐欺・組織犯罪処罰法違反:通称名複数使い、携帯電話を詐取 容疑者再逮捕−−県警 /埼玉

毎日新聞 2013年11月02日 地方版
 通称名を何度も変更して携帯電話をだまし取るなどしたとして、県警組織犯罪対策課と大宮西署は1日、韓国籍さいたま市西区の無職、文炳洙容疑者(43)=通称名・青山星心=を詐欺と組織犯罪処罰法違反(隠匿)容疑で再逮捕した。
 再逮捕容疑は、8月7日、同市北区の家電量販店で、通称名スマートフォン(多機能携帯電話)2台をだまし取り、同10日に東京都内の買い取り店で過去の通称名「清永奏斗」を使って売却したとしている。
 「売却したことは間違いないが、料金を踏み倒すつもりはなかった」と容疑を一部否認している。
 同課によると、文容疑者は2010年10月から今年9月までの約3年間に六つの通称名を使って携帯電話など約160台をだまし取り、転売。被害総額は約630万円に上るという。【川畑さおり】

http://mainichi.jp/area/saitama/news/20131102ddlk11040221000c.html

概要

事件そのものは、携帯を購入直後に売ることで、本来なら携帯利用料金に加算されて支払うことになっている携帯機器料金を踏み倒し売却益との差額を取得していた、という単純な犯罪にすぎません。
似たような事例を警視庁もホームページに挙げて注意を促しています。

犯罪となる例
○ インターネット上の掲示板で、携帯電話の購入アルバイトを募っていたので応募した。携帯電話を実際に利用するつもりはなかったが、携帯電話を契約し、アルバイト斡旋業者なる者に渡して日当をもらった。
○ 白ロムの購入バイトは金になると聞き、悪いことと知りつつも携帯電話を契約し、機種変更を繰り返して端末を複数台入手し、購入代金を支払うことなくアルバイト斡旋業者なる者に転売した。

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku413.htm

言うまでもなく、在日外国人限定の犯罪ではなく日本人だって容易に出来る犯罪で、通名など必要ありません。通名の変更回数はわずか5回で、携帯の転売は160台ですから同一名称で平均32台の転売ができたことになります。ですから、この犯罪手口そのものには通名など必要ないと言えるでしょう。文炳洙容疑者の場合、「西区役所が昨年10月、「通称を頻繁に変える外国人がいる」と同署に通報した」ことでアシがついたわけですから、むしろ通名を変更したことで逮捕へのきっかけを作ったようなものです。通名の変更をしていなければ、区役所からの通報はなく、携帯端末会社が警察に届け出ない限り捕まらなかった可能性が高いように思えます*1

文炳洙事件の場合、2012年10月に西区役所から警察に通報が行き、約1年後の2013年10月11日に逮捕されています。逮捕時点で詐欺目的を立証できるくらい複数の転売事実を警察は把握していたはずですから本来なら後は取調べだけですが「「売却したことは間違いないが、料金を踏み倒すつもりはなかった」と容疑を一部否認している」とのことですから、自白させるための常套手段として他の事件での再逮捕をしたようです。これが10月11日逮捕から21日後の11月1日ですから、最初の逮捕容疑での拘留期間が切れるタイミングでの再逮捕で事実上の拘留期間延長を行ったわけですね。日本警察の悪名高い常套手段です。

組織犯罪処罰法違反(隠匿)容疑で再逮捕

産経新聞によると「通称を悪用した犯行を組織犯罪処罰法で立件するのは全国初」とのことですが、そもそもこの事件って「売却で得た金は競馬などのギャンブルに使った」との供述から単純な個人の詐欺事件と思われますので組織犯罪処罰法違反(隠匿)容疑というのが適切なのか疑問の残るところです。まあ、条文をそのまま適用する上で間違っているとは思いませんが、「犯罪収益等の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者」「犯罪収益の発生の原因につき事実を仮装した者」*2とか普通の窃盗でも成立しそうな文面ですので、本質的な組織犯罪や経済事件での犯罪収益の隠蔽工作とは言えない本事件での適用はどうなのかな、と思えるわけです*3

陰謀論

警察にとってただ再逮捕して拘留期間を延長させたいだけなら別に詐欺罪での再逮捕でも良かったと思えますが、組織犯罪処罰法を適用したのは陰謀論を承知で言うと、竹田恒泰差別発言事件(2013年10月20日)擁護・側面援護目的かな、とか。まあ、陰謀論ですけどね。
タイミング的には、10月11日の容疑者逮捕後10月20日の竹田恒泰差別発言事件とそれに対する批判から再逮捕の11月1日まで裁判所に逮捕状請求する時間は充分にあります。実際に組織犯罪処罰法で起訴するかどうかは別にして逮捕状だけ請求し、「通称を悪用した犯行を組織犯罪処罰法で立件する」全国初の事件としてマスコミにリークするというのは、実現可能性から言えば低いとは言えないと思います。だからと言って事実そうだったかというと、まあわかりませんが。

顛末

在特会めぐる竹田氏発言で謝罪 読売テレビ「不正確」
2013年11月3日18時07分
 読売テレビ大阪市)は3日に放送した番組「たかじんのそこまで言って委員会」の冒頭で、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の街宣活動について議論した先月20日の放送で「一部不正確で誤解を生む表現があった」としておわびした。
 20日の番組では作家の竹田恒泰氏が「在特会のおかげで在日の特権の問題が明らかになった。日本人の名前に変えることで犯罪歴や金融関係の経歴を消すことができ、新たな犯罪ができる」と発言。NPO法人のコリアNGOセンターが「事実に反し、在日コリアンへの差別や偏見を助長する」として抗議していた。
 読売テレビは取材に「日本名に変えることで経歴が消えることはないと承知していたが、言葉足らずだった」と説明。同センターは「軽いおわびで、在日問題への社会の認識を改めることにつながらない」としている。

http://www.asahi.com/articles/OSK201311030014.html

文炳洙容疑者が再逮捕された翌々日の11月3日、竹田恒泰差別発言事件(2013年10月20日)に関し読売テレビが「一部不正確で誤解を生む表現があった」として「軽いおわび」をしました。しかし、産経新聞や読売新聞が大々的に報じ、ネット上の排外主義者が拡散した文炳洙事件を素地とした排外差別煽動により、「軽いおわび」はかき消され、テレビ局の謝罪により竹田恒泰差別発言事件は解決したという形式だけが残されました。
私の知る限り、竹田恒泰氏本人は自らの差別煽動発言に対して謝罪していないようです。その後、11月5日には華原朋美氏との交際報道などで竹田恒泰差別発言事件は表向き、その存在すらなかったかのようにされてしまいました。ネット上では竹田氏の差別煽動発言に喝采する声が響き、文炳洙事件を“在日特権”の証拠だとでっち上げる中、デマに基づく差別煽動発言をした竹田恒泰氏は、明治天皇の玄孫としてひっきりなしにテレビ出演を続け、皇室特権を享受し我が世の春を謳歌しています。

在日特権”のようなチープな虚構ではないタブーとして今もなお皇室特権は存在しているようですね。

*1:この手の犯罪は詐欺にあたると思われますが、詐欺であることを証明するのは困難ですから、実際にどの程度届けられているか疑問です。年に数台程度であれば、“違法とは知らなかった”という人も多いでしょうし・・・。

*2:第十条 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO136.html

*3:そう言ったところで、韓国人・朝鮮人の犯罪だからという理由で当然視するレイシストがわんさといるでしょうが。