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誰かの妄想・はてな版

2014-07-18

自衛隊は志願者が多いので徴兵制は不要と主張する論者が言及しないこと

集団的自衛権行使反対派による徴兵制キャンペーンを考えてみた」という記事なんか見ても自衛隊入隊の応募者数が年間10万人以上いることを挙げて「海外派遣による隊員の命の危険が、募集を困難にしてはいない」と主張しています。

要するに、徴兵などしなくても志願者がたくさんいる、というロジックです。

自衛隊は志願倍率が高い(平成25年国防白書)ので、徴兵制を敷いて莫大な訓練費用をかける必要性などないんです。

http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50707636.html

という論者もいます。冒頭に挙げた数多久遠氏などは「航空学生採用試験の倍率は、高い数値を保っています」とも言っています。

戦前日本の軍隊構成

選抜徴兵制が布かれていた戦前日本では平時の軍隊規模は約25万人でこのうち20万人が徴兵された兵卒でした。軍隊全体における兵卒の比率は80%です。もちろん、これは歩兵を軍の主力とみなした半世紀前の軍事思想に基づくため、現代ではこんな大量の兵卒は不要である、という意見には一理あります。

なお、戦前(1941年以前)は徴兵され2年の兵役を終えても、その後5年ほどの予備役となり有事に召集されうることになってました。つまり、平時現役兵力の約25万人の他に約50万人の予備役が存在したわけです。

大雑把な構成ですが、現役士官・下士官:約5万人、現役兵:約20万人、予備役兵:約50万人、といった状況で運用されていたわけです。有事の際は、予備役を召集して一気に巨大な兵力を形成したわけです。

自衛隊の構成

志願制である自衛隊の規模は約22万人で戦前日本とほぼ同じですが、このうち兵卒にあたる士はわずか4万人しかいません。全体における兵卒の比率は約20%です。予備自衛官は即応など含めて約6万人(士官・下士官・兵卒の別は不明)です。

全体の構成を見てみますと、現役士官:約5万人、現役下士官:約13万人、現役兵:約4万人、予備役:約6万人、となります。

確かに現代戦では歩兵は主力ではありませんが、仮に予備役が全て兵卒であったとしても、全員召集して、13万人の下士官に対して兵卒が10万人しかいないことになります。部下のいない下士官が溢れているわけです。

予備役を除いた平時の兵卒率は、戦前日本で80%だったのに対し、現代日本では20%しかありません。これは果たして現代戦を戦うのに適した構成と言えるのでしょうか?徴兵制を合理的でないから不要と主張する論者はこの点については何も語りません。

もし下士官と同数程度の兵卒は必要であるとすれば、予備役全て召集してもなお、3万人の兵卒が不足します。

自衛隊は志願倍率が高い」から大丈夫?

数多久遠氏が挙げている自衛隊入隊の年間応募者10万人以上という数字ですが、これは各種部門を合わせた全体の応募者総数であって内訳を把握せずに用いるのは誤解の元です。

2012年防衛白書から応募者の内訳を見てみると以下のようになっています。

区分    応募者数採用者倍率
防衛医科大  7595  84 90.4
防衛大学校  15411  270 57.1
看護学生   3872  75 51.6
航空学生   4248  117 36.3
幹部候補生  8424  274 30.7
高等工科学校 4571  266 17.2
候補生   34123  3853 8.9
自衛官候補生 34038  9963 3.4

防衛大学校は一般前期のみ、高等工科学校は一般のみ)

航空・看護・医科と言った特殊技能や士官といった幹部を目指す応募者は確かに多く、軒並み10倍以上の倍率ですが、一線で働く下士官・兵卒レベルを希望する人は倍率10倍未満で特に兵卒レベルである自衛官候補生を希望する人は3.4万人しかおらず倍率は3.4倍程度です。そしておそらく自衛官候補生に応募している人の多くは、曹候補生にも併願しているでしょう*1。そして曹候補生に合格すれば自衛官候補生に合格しても辞退するはずです。自衛官候補生の倍率3.4倍は、併願を考慮すると実態としてはもう少し低いでしょう。

当たり前の話ですが、兵卒・下士官・士官を選べるのなら、ほとんどの人は士官を希望するでしょうし、士官が駄目なら下士官下士官も駄目なら兵卒となるはずです。

パイロットや軍医の候補を募集するのなら、応募者はたくさんいるでしょう。特殊技能や資格を国費で取ることができるわけですから。しかし、兵卒を募集しても容易に集められるかはかなり疑問に思えます。

繰り返しになりますが、戦前日本では25万人中20万人いた兵卒が、現代日本では22万人中4万人しかいません。

ハイテク化が進んだとか色々主張する論者は多いのですが、下士官13万人の3分の1に過ぎない兵卒4万人で果たして足りているといえるのでしょうかね?

*1:いずれもほぼ同じ3.4万人というのは偶然とは思えません。

トン田トン田 2014/07/19 17:54 「君いいガタイしてんな。自衛隊入りませんか!」と昔よく声かけられたなw

TeruTeru 2014/07/20 11:26 >(旧軍は)有事の際は、予備役を召集して一気に巨大な兵力を形成
>(現自衛隊の)下士官13万人の3分の1に過ぎない兵卒4万人で果たして足りているといえるの

>徴兵制を合理的でないから不要と主張する論者はこの点については何も語りません。

戦後の「予備自衛官」制度の扱いにおいて、
日本語版wiki編者は
>現在の予備自衛官の定員は約5万人であるが、充足率は定員の約7割に過ぎない。>対して各国の軍では一般に予備役の方が現役より多く、同数から十数倍を擁する。
>自衛隊および予備自衛官制度が全志願制である事を勘案しても、予備役は貧弱であり、少ない割合といえる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%88%E5%82%99%E8%87%AA%E8%A1%9B%E5%AE%98
と称して、「自由民主党国防部会」の意向や「予備自衛官補制度」を扱っています。

TeruTeru 2014/07/20 12:12 ちなみに、第一次大戦敗戦でベルサイユ条約にて
陸軍兵力を10万人と制限されたワイマールドイツの国防軍(当時は治安兵力設定)のケースでは、
後のヒトラー政権成立後に(外征想定で)50万人規模に急拡大させても機能した理由として、
もともと組織的に政治的制約解除後を想定して、
部下が増えても機能するだけの幹部教育を高い比重で行っていたという話があります。

鰊 2014/07/21 00:52 >ハイテク化が進んだとか色々主張する論者は多いのですが、下士官13万人の3分の1に過ぎない兵卒4万人で果たして足りているといえるのでしょうかね?
ここら辺が曖昧すぎて記事の価値を下げています。
第二次世界大戦と比べて兵卒の数が少ないとおっしゃっていますが、アメリカなど他国における現在の兵卒の数を調べれば十分かどうか判断が出来るものと思います。(日本の場合は島国であり歩兵の需要が少ないことや、積極的な侵略をしないことなどの特徴があるので、参考にすべき国を探すのには手間取りそうですが)

LeoneedLeoneed 2014/07/21 07:55 人数さえ足りていればいい。下士官が兵卒よりも優秀であれば、兵卒ができることは下士官でもできる。むしろ、兵卒が少なく、下士官が増えているならば、軍隊はより精強になったということなのだよ。

Arturo_UiArturo_Ui 2014/07/21 17:53 >Leoneedさん
うまく論点をすり替えたつもりになってませんか?

自衛隊の場合、「海外での戦闘行為に従事する可能性がある」という前提が無かった時代に入隊した方々が士官に昇進しており、組織の中では兵卒よりも大きな割合を占めているわけです。
「海外での戦闘行為に従事した経験が無い」という点では、現時点での士官も、これから新規に入隊する方々と変わらないんですよ。

名無し名無し 2015/09/03 10:19 >Arturo_Uiさん
論点をすり替えてるのはあなたでは?

自衛隊では、優秀な人物を確保しておくために任期のある兵卒から、上の階級に昇格させることを積極的に行っているそうです。その結果、下士官の内訳が多くなっていると考えられます。
また、下士官は兵卒としての役割もこなせることが期待できますよね。
つまり、自衛隊では兵卒の数を望ましい割合に調整することがある程度可能ということです。
このことから、兵卒のみを士官と比べて、ましてや兵卒と下士官を比べて、兵卒が少ないと論じるのはあまり意味がないと思います。

これがLeoneedさんのコメントの一文目(人数さえ足りていればいい)の本質であり、あなたが自分の主張を通すために反論すべきことかと思います。しかし、>軍隊はより精強になった という点ばかりに反論してしまっています。
これが、僭越ながら"あなたが論点をすり替えている"と指摘させていただいた理由です。

あなたと同じデータを引用させていただければ、兵卒と下士官を合わせた17万人(全体の8割弱)が少なくとも、新たに募集しなくても用意できる兵卒の数となります。
図らずも、戦時中と同程度の割合に落ち着きましたね。
兵器のハイテク化という観点も踏まえて、"兵卒の割合が低いから徴兵の必要が出る"というのはやはり合理的ではありません。

文中で、兵器のハイテク化に無知というわけではないのに、何度も大戦中との比較を出したことについても、印象操作に思えてなりません。(せめて現代の先進国と比較して欲しかった)
しかし、”単純に自衛官は毎年高倍率である”という主張に対して、その構成を論点にするという視点についてはとても勉強になりました。ありがとうございます。

記事の投稿から日にちが空いてしまっていますが、よろしければご返信お願いします。

乱文ちゃん乱文ちゃん 2015/10/07 05:00 なんで旧軍の構成を参考にするのかわからないけど、
自衛隊経験者から捕捉させていただけば、

いま自衛隊において兵卒たる士はみな基本的に下士官たる曹への昇進を前提とした「下士官候補生」であると考えるのが自然で、前時代的な雑兵を想像するとちょっとニュアンスが違います。
さらに自衛隊において『主力』といえる働き頭の階級は士よりも曹です。
曹は部隊編成で言うところの『分隊長』を担う立場ではありますが、現実はそうでもなく(兵科によってはそういうところもあるのでしょうが)、2曹、3曹あたりが部隊の主力として働き、それを支援しつつ曹を目指す立場が士です。
曹が多くなっているという状態であれば、それは上の片がおっしゃっているように部隊が精強になっているという言い方をしても、若干言いすぎな気もしますが現実と大きな祖語はない気がします。

上位の士官にしても、おそらく『幹部自衛官』を『士官』と意訳されているのではないかと捉えましたが、だとすれば二つに分ける必要があります。
中隊長〜大隊長クラスである『尉官』。これは士官と訳して差支えないかと思います。
そして、そのさらに上の司令官クラスである『佐官』。
そのさらに上、全自衛隊でも数えるほどしかいない最高級司令官クラスである『将官』。これは自衛隊は『幕僚』と言いますが、旧軍だとたしか『参謀』だったと思います。
士官と参謀を合わせて『幹部自衛官』と言うので、これをまとめて一つの数字として評価してしまうのには無理があるように思います。

そして、これらの人数の偏重が旧軍と違うことについて、ご当人もおっしゃる通り、機械化、自動化、精密化、強力化など、使用する装備により戦闘の様相が大戦時とは全く違うものになっていることが原因の一つであることは無視できない事実です。
練度の低い兵を数だけそろえて、捨て駒よろしく人海戦術で突撃という時代ではないのです。
プロペラにレシプロに蒸気やディーゼルに徒歩と、ゆっくりと進軍してきた敵も味方も、ジェットにガスタービンに原子力で爆発的に速度が上がり、それを察知し、迅速に対応するにもレーダーや衛星やデータリンクや、ただ人をたくさん置いておくことが即ちアドバンテージとは言えないことは事実です。
ものごとは洗練されるとコンパクト化していくものです。
戦闘の内容もコンパクト化していくと思います。

電話回線の需要が増えたからって交換士をいっぱい雇う時代じゃない。
証券取引所だって機械化されることでイモ洗いのイメージが消えた。
飛行機だって、今ではたった2人で飛ばします。
国防だって洗練されたからそうなっていくのは自然です。
機械が人間の代わりをしてくれるので、人間は機械をうまく使うことを要求されます。
そこで要求されるのは数ではなく質です。
そして幸いなことにこの国はあらゆる分野においてその『質』に関して、
精神的にも物質的にも定評のある国です。

憶測にすぎませんが、
安保法案が通ったから、自衛隊の応募者が減る、というロジックは、あると思います。
しかし、それが徴兵制を必要とするレベルに到達するとは到底思えず、
応募減少により多少の質の低下はあるかもしれませんが、脅威と呼べるほど低下するとも思えません。
もしも徴兵やそれに類する兵員増員策を講じなければいけない事態が来るとすれば、米軍にそっぽを向かれたとか、米軍が攻めてきた時ぐらいでしょうかw
僕はその時こそ防衛なんてものを諦めて投降すべき時だと思いますw
それにしたって、そんなやる気のない若者を大量に雇って訓練して前線に配置して何のメリットがあるのか甚だ疑問ですw
どう考えたってそんなのただの外患誘致にしかならないwww
思想的に国家に反感を持ったり悪だくみをするものを察知してそれを徴用しないシステムがしっかり作れればいいのですが、難しそうだなぁ。。。
ファンタジーだなぁ。


というか僕は、、
今まで自衛隊を受験した人間の中に、
「集団的自衛権が認められるなら受験しなかった」
ってメンタリティの人が何割ぐらいいたのか、
そっちの数字のほうが気になりますね。
その数字のほうが未来予測や防衛論批判に有効な数字である可能性が高いと思いますが、そんな数字絶対出てこないでしょうねw

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