AIIBがムーディーズから最上位の格付け「Aaa」を取得した件

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)がムーディーズから最上位の格付け(Aaa)を取得した件。
この件について、産経新聞は麻生財務相の発言を引く形でこのように報じています。

 麻生太郎財務相は30日の閣議後会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、米格付け大手、ムーディーズ・インベスターズ・サービスから最上位の格付け「Aaa(トリプルA)」を取得したことについて、「(南アフリカの)ボツワナより日本の国債が低いと出したのは確かムーディーズじゃなかったか。その程度のところ(が出した格付け)だと思っている。他に興味はない」と、一笑に付した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170630-00000542-san-bus_all

典型的な“あのブドウは酸っぱい”論ですが、“日本国債を低く評価した格付け会社の格付けなど信用できるか”と財務相が発言するというのが恥ずかしいという認識は無いようです。
まあ、“ムーディーズの格付けは信用できない”という主張が常日頃からのものであれば少なくとも一貫性はあるのですが、産経の場合、直前にこんな記事を出してるんですよねぇ。

(2017.6.17 22:03)【AIIB年次総会】交錯する各国の思惑 「くず債券」扱いのまま、信用獲得へ日米参加が必須

中国の国債は先月格付けを下げられているのですが、産経新聞はそれを根拠に、日米が参加しない限り、「AIIBが得る格付けが「中国」を超えることは、不可能だ」と言い切っているんですよね。しかも、「中国は米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスに追い込まれている」とまで言っています。
ふたを開けてみれば、AIIBは最高格付けを取得したわけですから、河崎真澄記者の「AIIBが得る格付けが「中国」を超えることは、不可能だ」発言は誤報という他ありません。

中国国債の格付けが下がったことを嘲笑し、AIIBの債権を「くず債券」呼ばわりして、日米が参加しないことで、中国を追い込んでいるかのように報じておいて、AIIBが実際には最高格付けを取得すると、やれ“日本国債を低く評価した格付け会社は信用ならん”とか言い出して、矮小化を図る。

客観的に見れば、小物感ハンパないんですよねぇ。


AIIBの最上位格付け、「興味ない」と一笑に付す 麻生財務相

6/30(金) 12:29配信
産経新聞
 麻生太郎財務相は30日の閣議後会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、米格付け大手、ムーディーズ・インベスターズ・サービスから最上位の格付け「Aaa(トリプルA)」を取得したことについて、「(南アフリカの)ボツワナより日本の国債が低いと出したのは確かムーディーズじゃなかったか。その程度のところ(が出した格付け)だと思っている。他に興味はない」と、一笑に付した。
 ムーディーズは2002年5月、景気悪化などを理由に日本国債の格付けをAa3からA2に2段階引き下げ、イスラエルボツワナと同じ格付けにしたことがある。
 また、昨年度の税収が7年ぶりに前年割れすることによる今後の財政運営への影響に関しては、「デフレによる不況から少しずつ回復しているのは確かだと思っている。全体方向として今までの経済政策を大きく変えるつもりはない」との見解を示した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170630-00000542-san-bus_all

2017.6.17 22:03

【AIIB年次総会】交錯する各国の思惑 「くず債券」扱いのまま、信用獲得へ日米参加が必須

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を舞台に関係国や周辺国の“思惑”が交錯している。
 「日本の記者は(AIIBに)関心が高いね。どうして政府代表は来なかったのかな」。会場で名刺交換したAIIB中国人幹部は記者にこう畳み掛けた。
 関係筋によると日本政府は年次総会の「招待状」を受け取っていたが政府代表を派遣せず、慎重姿勢を貫いた。一方、「中国側はAIIBに日米を引き込まなければ立ち行かない」(国際金融筋)のが実情だ。
 インフラ建設で1件当たり数千億円の投融資を行うには国際金融市場で債券を発行し、民間資金も調達する必要がある。だが、AIIBは債券の「格付け」がなおも得られず、「ジャンク(くず)債券」扱いのまま。高金利を示さないと市場で資金調達できない。
 17日の会見で、金立群総裁は年内の格付け取得に自信を示したが、最大の懸念は格付けの良しあしだ。
 最大の出資国である中国は米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスに追い込まれている。中国の国債格付けは先月、1989年の「天安門事件」以来、28年ぶりに格下げされた。債務負担増が理由で、中国政府に焦燥感が広がった。AIIBが得る格付けが「中国」を超えることは、不可能だ。
 国際金融筋は、「信用力の高い日米が参加して初めて、アジア開発銀行(ADB)や世銀のような最上位の格付けが得られる上、ODA(政府開発援助)の長年にわたる実績を使わなければ途上国支援は“絵に描いた餅”」と指摘した。
 北京のAIIB本部の人員は日本なら地銀にも及ばぬ100人ほどの陣容。ADBが職員数千人で融資審査を独自に行うのとは対照的だ。しかも中国側は、鳩山由紀夫元首相をAIIBの顧問役に就任させたことが“逆効果”になっていることに気づいていない。
 年次総会を通じて際立ったのがインドの交渉術の巧みさ。AIIBが金融面で支援する中国主導のシルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議が先月、北京で行われたが、インドは安全保障上への懸念から政府代表の派遣を拒んだ。
 メンツを失ったにもかかわらず、AIIBは来年の年次総会をインドのムンバイで開くと決め、インドの基金向けに165億円の初の投資案件も承認した。地政学的にインドの協力が欠かせないと、譲歩した。
 対中関係悪化が続く韓国の文在寅大統領は16日の演説で、「(朝鮮半島の)南北が鉄道でつながるとき新たな陸上・海上シルクロードが完成する」と強調。協力姿勢もみせながらAIIBを利用し、北を巻き込んでユーラシア大陸に陸路からも“直結”するとの政治的な野望をにじませた。
 (済州島 河崎真澄)

http://www.sankei.com/world/news/170617/wor1706170035-n1.html