スクリプト・バスターズ

2009-09-27

三幕構成こそすべて(1)

| 21:35

前の「脚本」の回では、いかに「脚本が良い=映画が良い」ということかということに関して述べた。

今回からは、「ではどのような脚本が良い脚本なのか」ということに関して述べて行く。


さて、大前提は以下である。


今回の極論:「良い脚本は三幕構成を持っている」


始めに結論を出してしまったが、これは特にハリウッドの全ての脚本の基本にある考え方だ。「スリーアクト・ストラクチャー」と呼んでもよい。それではまず、「三幕構成」に関して図解する。以下の通りとなる。


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このように、ビギニング(第一幕/セットアップ)ミドル(第二幕/コンフリクト)エンド(第三幕/レゾリューション)の三つのパートから構成されるものが、一般に「三幕構成/スリーアクト」と言われるものだ。さらに言えば、上図の通り大体この三幕の割合はあらかじめ決められており、通常2時間の映画では、それは以下の通りとなる。


ビギニング:1-30ページ

ミドル:30-90ページ

エンド:90-120ページ

※ページ数は1ページ=1分としてカウントされるので、上記ページ数=分数でもある。


断言してもいいが、「エンターテイメントとして面白い」と感じるハリウッド映画の脚本は(そしてさして面白くなくても)、必ずこの仕組みを持っている。それは、興味があれば時計を持ってカウントしながら、幾つかの作品を観てもらえればすぐにわかるはずだ。


では早速この三幕構成を形づくる要素、すなわちビギニング、ミドル、エンド、そして第一ターニングポイント、第二ターニングポイント、ミッドポイントに関して説明していきたいのだが、それよりもまず、「三幕構成」を考えるにあたり、何にも先駆けて、最も大事なことがある。それは、


「三幕構成が面白い映画を作るということに疑問を抱かない」


ということだ。

とかく、始めにこの公式を学ぶ人は、若ければ若いほど「物語というものは自由なはずだ」という主張に陥りがちとなる。しかし、これまた断言してもいい。そういう人が思っている「自由な物語」が意外なほど三幕構成の形に忠実であるということを(そうでなければそれは純然たるアート作品だ。芸術系映画に関しては娯楽映画と完璧に論点や評価基準が異なるので、その場合は単純にお門違いの意見を述べていることになるだろう)。

もう少し詳しく説明してみよう。例えばハリウッドの脚本教育界の大家、シド・フィールドは著書「Screenplay」(邦訳:映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと)において以下のように述べている。


中には"発端""中盤""結末"という形を信じない人もいるだろう。芸術は、人生のように、始まりも終わりもなく、いくつかの瞬間によって成り立っているのだと言うかもしれない。

(中略)しかし、それには同意できない。誕生、人生、死。これらは、"発端""中盤""結末"そのものではないだろうか?

春、夏、秋、冬、これらも発端と中盤と結末ではないだろうか?

朝、昼、晩。これはいつも同じであるが、またいつも違うものである。

(中略)体の細胞を考えてみよう。どれほど飽和し、蓄えられ、そして再生産されるのか?七年が体の細胞にとってのサイクルである。生まれて、働き、死んで、また生まれるのだ。

脚本も同じである。明確な発端があり、中盤があり、そして結末がある。



かつてヒッチコックは言った。

「映画とは、退屈な部分がカットされた人生である」と。

シド・フィールドが人生を三幕構成に例えたことは、このヒッチコックの言葉を想起させる。彼らが言うように、我々の人生も「大きな物語」(東浩紀的な意味合いではなく)の一つなのだとしたら、そこには明確な三幕構成が入れ子構造のように広がっているはずだ。それが人が物語と呼ぶものの本質だ。

そして、映画とは映像で語る物語<ストーリー>だ。



以上の点を充分に踏まえてもらった上で、次回は三幕構成の詳細に関して述べて行く。




…ついでながら、一言チクリと言っておくと、日本映画においてこの三幕構成がクロースアップされることは少ない。一つには後日述べるが「起承転結」の概念が曖昧なまま誤って流布していることが理由だと思う。三幕構成自体は上記で断言したとおり、物語の基本フォームなので、書き手が「物語」を作っている以上、自然に「それっぽくなっている」ものは当然多いが、脚本開発においてハリウッド映画のように厳格にその是非は問われ無い。事実、筆者がこれまでに出席した脚本会議と名のつくものにおいて、「ファースト・アクトが…」などといった単語が話題に上った会議は一度も無い。

……あと、今回のエントリーが「ウィークエンドシャッフル」の「スクリプトドクター」の回の乗っかりネタみたいになりましたが、偶然です。「スクリプトドクター」の回に関しては僭越ながら補足説明等したいこともあるのですが、取り急ぎ三幕構成を話しきらないことには進めないのでかなり後ほどになります。