Daily Searchivist

記録管理、文書管理、公文書館、アーカイブ、アーカイブズ... 今注目のキーワードを読み解くための最新情報を厳選してお伝えします。

道立文書館の設置経過と規模縮小の問題点について

1月17日付の記事についての続報です。
http://d.hatena.ne.jp/searchivist/20060117
1月10日、「道立文書館の規模縮小についての要望書」が北海道議会議長あてに提出されました。その際、参考資料として付された文書の一部を掲載します。

道立文書館の設置経過と規模縮小の問題点について
            2006.1.6 要望書提出事務局
 北海道においては、昨今の財政逼迫から脱するために様々な努力が続けられているが、その解決案の一つとして、道の出先機関の改廃、民間委託方式がクローズアップされている。しかし、道自体が行政活動を円滑に継承していくために、自らの責任において、道民の財産として内部に蓄積していかなければならない研究遺産、文化的遺産、情報遺産があることを忘れてはならない。改革のために出先機関を一掃するという原則の下に、一律に改廃したり民間ビジネスに委ねることは、自らの存立基盤を危うくするものである。
 その視点から、道立文書館の規模縮小問題を考えると、その設立経緯をふまえた問題点、憂慮すべき点は、次のとおりである。
1.道立文書館の設置経過(略)
2.わが国の文書館状況(略)
3.道立文書館の役割と位置付け(略)
4.組織縮小案にみる文書館体制の問題点
(1) 歴史的価値のある公文書の選別判断について

 文書館の重要な任務は、公文書を行政的価値判断とは別な立場から、専門的な歴史的価値判断に基づいて選別し、後世に伝えることである。
文書館業務が、行政の現場で現用文書を扱っている担当課内の下位グループで処理されることになれば、公文書の歴史的価値判断を行う際等に、行政的価値判断と歴史的価値判断が混同され、行政的判断が優先される危険性が生ずる。そのような環境で歴史的価値ある公文書の適正な保存利用が図れるであろうか。
 これは、北海道が、より客観的な歴史的判断で後世に史資料を引継ぎ、また将来に渉って道行政に関する情報公開・説明責任の遂行を可能にする公文書保存のシステムを作り上げてきた、自らの姿勢を後退させる行為である。
(2) 文書館長の権限と専門的職員の確保について
 文書館職員については、公文書館法第4条に「公文書館には、館長、歴史資料として重要な公文書等についての調査研究を行う専門職員その他必要な職員を置く」と定められている。
 現在の文書館長は部次長・局長級であり、道行政の将来に資する公文書の選別、保存に関して、他部局に対する一定の権限を知事から委任されている。他部局と独立した立場にあった館長が課長との兼務、または課長より下位に位置づけられることは、文書館長の権限縮小につながるものである。
 また、現在の文書館においても、公文書館法による専門的職員の配置は充分ではない。しかも、規模縮小によって文書館が一般行政組織の中に包含されることによって、公私文書を収集し整理し、その活用を図る専門的職員の確保、強化はより困難となる。さらに職員定数が減ずるならば、専門性向上のために必要な研修の機会すら難しくなることは明瞭である。
(3) 道内各地の文書保存に関するセンター的役割について
 道内市町村の文化行政の逼迫度も道のそれと同様である。その中で行われている町村合併の進行に伴う公文書の保存措置の緊急性に配慮し、また、各地域に所在する私文書等資料の保存についても、道立文書館はセンター的役割を果たすべき施設とされてきた。道には広い視野に立って、市町村に対する指導を全うする責任がある。規模縮小は、こうした面での文書館機能維持が減殺される懸念がある。
(4) 道民・学識経験者の意見反映の確保について
 文書館は公の施設として、学識経験者や一般利用者の意見を取り入れ、他の類縁機関との協調を図るために、運営協議会等を設けてきた。そこでは、利用上の便宜だけでなく、文書館の体制、収集のあり方、職員の質の向上、道内各機関との指導・協調のあり方などが論じられた。文書館組織の地位低下によって、道民等の意向を反映する公の施設としての自立性が低下することが懸念される。
(5) 文書館の使命について
 文書館は、道民等の知る権利、研究する権利、学習する権利を保障するために、不可欠の施設である。それは文書館の独立性、適正な規模によって維持されなければならない。道の15%人員削減計画を遙かに超える定数の半減は、文書館の独立性、適正規模に対して過度の削減となる。

この件についての詳細な資料が、Archivists in Japanに掲載されています。
http://www.archivists.com/news.html