僕たちの街のカタチを目指して

正月が終わってバタバタしてたらあっという間に外市。いよいよ、わめぞの2010年が始まります。


2008年は次々と新しいイベントを連発してひたすら外側に向けてアピールした年で、昨年はまず「みちくさ市」を軌道に乗せるということを第一に考えた年でした。みちくさ市は「ブックイベント」という括りで考えるならば、がっつりではないけれど、まぁそれなりに結果が出たような気がします。少なくとも「芽は出た」かなという意味で。ただ正直に言えば最近思うのは「ブックイベント」としての成功なんて、極論を言えば意味ないんじゃないかな、と思うようになりました。意味ない、は言いすぎだと思うけれど、出た結果、つまり人同士がつながった結果、それが新しく見えてもできあがったものが「本の業界の形」なのであったら、女性のお客さんが増えようが、若い人が増えようが、それはみんなが危機感を持っている今の古書会館の古本市の姿と実は変わらないのではないかと思う。同じ感覚を持った人間が集まる居心地のいい空間。それはとてもいいことなのだけど、それをどんなに積み重ねても、本当の意味での「街のカタチ」というものが見えてこないんじゃないか。本好きの人しか知らない「街のイベント」なんて、それが本当に次につながるのか。遠くに広がっても、その行きつく先に「売る側」としての次の展開が見えてくるのか。それが、みちくさ市を通して、お世話になっている鬼子母神通り商店睦会さん、会長の建持さんにいろいろと一年余り勉強させてもらった感覚でした。


最近はもう若い人でも、マスに何かを投げかけるというのが無意味っていうか、囲えた中で勝負するのが一番というのが当たり前です。自分も一応商売をやってますから、それが正しいのはよくわかります。でも言いきるのもなんか悔しくない?とも思う。もちろんディープな世界をいきなり届けることは無理だろう。ライトな世界を届けるのだって楽じゃない。「いい本、珍しい本を売る」ってのが第一に思っている人がほとんどだけど、それは求心力はあるけど遠心力はない。今、外側に向けて本当に必要なのは「本の魅力」を伝えることじゃなくて(そんなことは当然のこととして)、「本ってこんなに人を呼べるんだ」という場所の魅力を一般の人に伝えることなのだと思う。人々に「本」の持つ力をわかってほしい。だから路上で、本を買わなくても歩いている人が見える場所で、というのにはこだわりたい。簡単にいえば、買いもの籠を下げた奥様が寄れる場所ということを第一に考えたい。正直に言えば、外市も、みちくさ市もまだまだ固定のお客さんに支えられている。ビジネス的にいえば、いい意味でも悪い意味でも旧来の流れの延長線上にある。しかしながら、まだ種をまいている段階だけれど、外市を見て古本に詳しいわけではない商店街の建持会長が声をかけてくださり、みちくさ市がはじまったり、区の方が気にかけてくれたり、団体運営としては確実に少しずつではあるが「外」へむかって歩けていると思う。場所が広がれば、自分のやりたいことも、もっと楽に可能になっていくのではないだろうか。


街というのは面倒なものである。表面だけを見ていると分からないのだが、実に複雑に利益とか感情とかが渦巻いている。だからこそエネルギーがある。そこに目をつむって「街」なんて本当は理解なんてできない。チェーン店ばかりになっても実はスライドしていて商店主の顔ぶれは以前の個人商店が多かった時と変わらないというような、表面的な変化はあってもその土地の磁場は変わらないというような難しさというか。でも、そういうまさに社会の縮図のような場所にきちんと認識されなければ、本質的な変化はないのだ。土地の人にも、行政にも、きちんと理解してもらい、その力を「本」というキーワードだけでなく「地域の魅力」と共に外側へ届けて行く。ものすごく地味だけど、それしかないとも思う。本当に、まだまだなのである。だから今年は、みちくさ市はもちろんのこと、より建持会長や街の方々、豊島区の職員の方々とも連携を強化し、土台を作る第一歩にしたい。ワメトークの会場を雑司が谷地域文化創造館に変えたのもその一環でもあります。とはいっても自分は雑司が谷の人ではないので、直接的なものは旅猫さんや往来座、そしてオープンしたひぐらし文庫さんにお願いして、自分は裏で建持会長を支えていきたいと思っています。早稲田でも古書店街以外から少し動きが出てきました。今までそれこそ面倒で逃げてきたのですが、今年はちょっと早稲田でも動いてみようかと思います。本当の意味で「わめぞ」になるように。


というわけで、今年から「わめぞ」は本当の意味で「本」と「地域」を結びつけられるべく進んでいきたいと思います。地味に、でも思いは激しく、やっていきます。面倒なことに正面から向かっていきます。反世間的にひねくれ自慢するような世界とサヨナラします。そして、2011年のことを念頭におきながら、動きます。たくさんの人とつながっていく結果、見えてくるのが「業界のカタチ」ではなく、「街のカタチ」であるように、がんばっていきます。はっきりいって、本気です。


たくさんの方の力が必要です。本年も「わめぞ」を、どうぞよろしくお願い申し上げます。16〜17日の古書往来座外市から、はじめます。