『ジャズ・シンガー』における人種の政治学

2001年コロンビア大学に半年いた時に、黒人とユダヤ人の文化的交錯に関心があったので『新映画論集成1』に収録されていたエラ・ショハットの「人種の関係性」のコピーを持参して読んでいた。

 ある民族集団が映画にどのように表象されているかについての研究はあったが、周辺にいる民族同士の関係性に焦点を当てたのは僕の知る限りエラ・ショハットが嚆矢だった。

 その論文ではユダヤ人芸人が黒人のメーキャップをする事で、つまり文化的特徴の仮面を身につける事で、自分たちの文化的特徴(意外と芸能に関心と能力を持つ)を表現するというものだった。

 僕はそこから、「白いニグロ」と言われた浅黒いユダヤ人が黒塗りをして舞台に登場して受けれられた後に、黒人の仮面を外して白人としてアメリカ社会に同化していく構図としてとらえる事ができると主張した。

 さらにこのような同化の物語は『ジャズ・シンガー』以降も繰り返されるので、逆に反復する同化の身ぶりには同化しないよという意図の逆説的な表現ではないかと考えた。ただこのあたりは論証が弱かったと反省している。

 いずれにしても自分の論文で引用した研究者には関心があるので、講演を聞いてみたかった。