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雑記帳

2009-07-02

外国人問題に関して・その2(出入国管理行政と「反日上等」)

id:seijigakuto - inflorescencia - はてなハイク

http://h.hatena.ne.jp/inflorescencia/9236550953087150492/

自由帳で数学とか物理とか 「反日上等!」と外国人差別反対デモで掲げるのがなぜいけなかったのか

http://hisamatomoki.blog112.fc2.com/blog-entry-499.html

上記のエントリーに引き続いて、共有すべき前提を述べた補足のエントリーを書きます。

支援の現場・最前線から、一般のデモ参加者にお願いした事を(私なりに)解釈すると、以下のようになると思います(よくある間違い(だと私が思うもの)には、×をつけています)。

○ 外国人排斥にNOという事は大歓迎。但し、他者支援のデモならば、自分の主張したい事よりも支援する他者の立場を考える配慮が欲しかった(支援対象の最前線にいる人達は特に立場が弱く、過激なスローガンを掲げて流れ弾が当たったら、生命に関わる場合もある)。

× 普段「反日上等」といっている人がデモに参加するのは控えて欲しい

→デモの時だけは「反日上等」のスローガンを掲げるのは控えて欲しいという事で、普段いうのは構わない

× デモ参加者にも現場並みの責任感をもって欲しい

→現場並みの責任感は求めないが、次回からは支援対象の置かれている立場を考慮に入れて欲しい

では何故、そういうお願いを出さざるを得ないのかについて、詳しく説明していきます。

「他者支援のデモならば、自分の主張したい事よりも支援する他者の立場を考える配慮をするのは普通の事」と考える方は、以降の記事を読む必要性は薄いと思います。

1、支援する対象の「外国人」のうち、最前線にいるのはどういう人達か?

いわゆる「不法滞在者」と呼ばれ、オーバーステイ、不法入国、難民申請予定→オーバーステイというパターンで日本に在留している「外国人」で、共通しているのは「ビザが無い」という事です。

このうち、難民申請予定者→オーバーステイの場合、短期のビザで来日し、日本政府の難民への厳しい姿勢を見て、申請→申請却下→退去強制という結果になる事を恐れて、申請を控えるというパターンが多いようです。日本政府の難民(条約難民)認定者数は、1982年→2008年の間の累計で508名、今年度の難民向けの予算は1億数千万円になります。

この人達の共通点は、正規の在留資格がないため、法務省(入管)の都合によって、いつでも強制送還させられる可能性があるという事です。強制送還させられた場合、難民申請予定者は帰国する国の政治状況によっては文字通り生命に関わる事になりますし、それ以外の外国人も、日本で何年も暮らして築いた生活と人的資本が全て無くなり、帰国先でかなり厳しい条件で職を探さざるを得なくなります。

支援する対象(外国人)のうち、最前線にいるのは、そういった立場の弱い人達だというのが、ここでの最重要ポイントです。

参考)

アハマーディア・イスラムの人々・難民認定の推移 - U´Å`U

http://d.hatena.ne.jp/gkmond/20090319/p1

難民申請者数と認定者数(含インドシナ難民)の統計

http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/274.html#id_f59c6e9c

2、まじめに支援しているNGOの現場での支援内容

「在留特別許可」の問題に関して、まじめに支援しているNGOの現場での活動内容を紹介しておきます。APFS編「在留特別許可と日本の移民政策」によると、転換点になったのが1999年の非正規滞在者(不法滞在者)21人による一斉出頭で、この時の手順を要約して紹介します。

(1)APFSのスタッフが出頭者の家族の生活状況についての調査を開始する。

(2)出頭するかしないかは出頭者の家族内での議論を大切にする。また、在留特別許可を得られる見込みが薄い家族には出頭を断念するように説得する。

(3)弁護士を集めて在特弁護団(最大22名)を結成する(弁護費用に関しては、当事者が払うのではなく、弁護士の持ち出しとカンパが殆どとの事です)。

(4)1999年9月1日に21名が一斉に入管に出頭する。

(5)その後、手応えを見て、第二次、第三次の出頭行動が行われる。

なお、(当たり前の事ですが)このように「当事者」のプラグマティックな利益を優先して支援を行っている団体の場合、「反日上等」などのスローガンを掲げて、法務省(入管)や自民党に目をつけられるという事は、「当事者(外国人)」に無用のデメリットを与えるだけの行為でしかないと理解していますので、余計なスローガンを振り回すような事はしていません。

参考)

在留特別許可一斉行動について APFS

http://www.jca.apc.org/apfs/zaitoku/zai_issei_index_j.html

3、自民党と法務省の団体系への認識

在留特別許可の決定権限は法務省(入管)にありますが、法律上は法務大臣が決定権者ですので、政権与党の意向というものも影響してきます。その政権与党の「反日サヨク団体」に関する認識の参考として、女子差別撤廃条約・選択議定書の時の対応を紹介しておきます(http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/286.html#id_2f0fd395)。左記のリンク先のように、「反日サヨク団体」が関わっているという理由でもって、条約の批准が取りやめになるようなのが現状です。

在留特別許可に関して、直接の決定権限を持つ法務省(入管)の方はここまでの事はありませんが、(「反日」系でなくても)団体系が支援している事による不利益処分という事をした実績もあります(日本国内に強固な生活基盤が形成されたこと理由に在留特別許可を求め、2004年9月21日に長期滞在者7名が出頭した時の事例)。詳しくは参考のリンク先にありますが、普段はしない国費送還をした理由の一旦が「NGOが支援しており、スムーズな送還の妨げになる(デモや実力行使をするのではなく、裁判闘争を行う)」というもので、この内容は送還後の国賠訴訟で明らかになっています。

このように、デモや実力行使をせず、外国人のプラグマティックな利益を優先した活動をしていても、場合によっては支援対象の外国人が「人質」的に使われてしまう場合もあります。そうなった場合、著しい不利益を受けるのは最前線にいる「当事者(外国人)」ですので、まじめに支援している団体では、「反日上等」などのスローガンを掲げて、法務省や自民党から無意味に目をつけられるような行為はしないはずです。

参考)

7名、国賠を決意!! APFS

http://www.jca.apc.org/apfs/event/event20050730-2.htm

国費送還されたバングラデシュ国籍6名が国賠訴訟を提起!! APFS

http://www.jca.apc.org/apfs/event/event20060227.htm

4、「圧倒的な制度の力」とは何か?

この概念については、文脈から外れてピンポイントで引用された結果、言葉だけが独り歩きしてしまっているので、正確に引用してから(私流の)解説をします。

http://h.hatena.ne.jp/isikeriasobi/9234070411676223380

>ボクはこんな人たちの、それでもこの国にいたい、というささやかで切実な声を、法のコトバにかえて語ってきた。何百万ものコトバを、何千人もの人たちにむけて語りかけてきた。彼らに同情する人にも、彼らが増えると治安が悪化すると気軽に口にする人にも、また外国人の管理の名の下に彼らを叩き出そうとする権力をふるう人たちにも。それは、外国人の在留なんて国の裁量でどうにでもできるんだ、外国人の人権なんて在留管理制度の枠内でしか保証されないんだ、という、この国の外国人にのしかかる圧倒的な制度の力を解体するための、必死の営みだったのだ。

>「反日上等」は、この国にいたい、と願う人たちの心からしぼり出されたコトバなのか。この国の人々の心を揺さぶり、外国人にのしかかる、圧倒的な「制度の力」を解体する可能性を秘めたコトバなのか。

上記の「圧倒的な制度の力」というのは、1978年のマクリーン事件の最高裁判決の判決文の影響から、「外国人の人権は在留資格の枠内で与えられているすぎない」という論理が定着し、出入国管理関係の行政訴訟においては、国側の勝率が99%以上(2006年度は252件中、勝訴確定が2件)という状況が生まれている事であり、それを背景にして、行政も外国人の在留は国が自由に決めていいんだという方向で政策決定をする現状の事です。

前述した国賠訴訟を例にとっても、日本国憲法32条には「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」とあり、これは日本人・外国人関わらずに適用される基本的人権ですが、出入国管理関係の訴訟においては、(上記のマクリーン事件の判決文の影響から)入管法が憲法の上位にあるかのような思考方法がとられるため、国側が勝訴しています。

その「圧倒的な制度の力」の解体に関しては、在留特別許可を巡る基準が本格的に動き出したのは1990年の入管法改正後であり、(この問題に積極的に携わっているNGOの人数は不明ですが)在特弁護団が22名集まったという事から考えると、それだけの人が「反日上等」というスローガンを掲げずに、20年近くかけて、少しづつ動かそうと試みてきた事だと言えると思います。

参考)

マクリーン事件 - Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

退去強制手続関連の行政訴訟の現状(2008年版) コムスタカー外国人と共に生きる会

http://www.geocities.jp/kumustaka85/2009.01.032008nennbanntaikyokyousetetudukikannrenn.htm

在留特別許可の基準の変遷

http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/240.html#id_ef351b25

5、現場・最前線からは何を求めていたのか?

ここまで来て最初に戻りますが、現場・最前線から求めていたものは(私流に解釈すると)以下のものだと思います(よくある間違い(だと私が思うもの)には、×をつけています)。

○ 外国人排斥にNOという事は大歓迎。但し、他者支援のデモならば、自分の主張したい事よりも支援する他者の立場を考える配慮が欲しかった(支援対象の最前線にいる人達は特に立場が弱く、過激なスローガンを掲げて流れ弾が当たったら、生命に関わる場合もある)。

× 普段「反日上等」といっている人がデモに参加するのは控えて欲しい

→デモの時だけは「反日上等」のスローガンを掲げるのは控えて欲しいという事で、普段いうのは構わない

× デモ参加者にも現場並みの責任感をもって欲しい

→現場並みの責任感は求めないが、次回からは支援対象の置かれている立場を考慮に入れて欲しい

要するに、最前線の状況は厳しいものだから、「外国人排斥反対」を掲げてデモに参加する事は大歓迎だけれども、(普段「反日上等」を掲げている人も、デモに参加する時だけでいいので)流れ弾が当たらないような配慮をして欲しいという事だと思います。対話可能な一般の人に向けた語りかけに関しては、冒頭で引用した記事(http://hisamatomoki.blog112.fc2.com/blog-entry-499.html)が参考になると思います。

上記までが、関連記事や外国人関連の記事を追った上での私の解釈です。

補足・訂正

マクリーン事件と「外国人の人権は在留資格の枠内で保障されているに過ぎない」という論理の文脈で誤解を招きそうな箇所があったので、修正しました。なお、マクリーン事件の影響から「外国人の人権は在留資格の枠内で保障されているに過ぎない」という論理が定着している事は事実で、カルデロン一家の弁護をした渡辺彰悟弁護士の記事でも、その旨が言及されています。

NPJ通信 カルデロン・ノリコ事件が語るもの 弁護士 渡辺彰悟

http://www.news-pj.net/npj/watanabe-shougo/index.html

このような事件についての現段階の裁判所見解は間違っているという判断が私たち弁護士にはある。

  現在の裁判所は、1978年10月4日の最高裁判決 (いわゆるマクリーン判決)、いまから30年前の判決の枠組みに固執している。外国人の人権は、「特別の条約のない限り」 「在留資格の範囲内で」 保障されるというのである。

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