楽器屋さん、大繁盛

張り替えた弓の毛のテンションが不均等なので、やり直してもらうために一週間前に預けたのだが、まだ出来ていない。電話してどうなってるのか聞いたら、電話の向こうで店主が「今日は取り込中なので、できれば来週、どしても今日なら閉店後に来てください」とか言ってる。こちらも早く使いたいので、せっついてやってもらうことにしたのだが・・・

行きつけの楽器屋さんには閉店時間30分前に到着。もう客もいなかろうと思っていたら、ドアの外まで聞こえてくるバイオリンの不協和音・・・ なんと、2組の客が楽器の選定中で、たいして広くもない店内で、とっかえひっかえバイオリンを弾いている。

小学生(低学年)の男の子連れの30代の夫婦の方は、奥さんがバイオリン初心者の様子。きらきら星変奏曲みたいな初級の練習曲を弾いていた。それを旦那さんが聴いて、どっちが音がいいとか弾きやすいとか夫婦で意見交換している。

ちらっと小耳にはさんだ価格は10万円台半ばぐらい。中古のドイツ製量産楽器を比べていた。最終選考に残った2本は、初心者用としてなら、おつりが来る性能だった。奥さんが選んだのはドライで派手な音が出る方。却下されたもう一本は、ほの暗い深みのある音色が出る楽器だった。わたし的には、暗めの音色の楽器の方が、しぶくて飽きが来なくてお勧めなのだが・・・・お口にチャック!

もう一組のお客さんは、大人用のフルサイズに交換するために来店した小学生(高学年)の女の子。母親とバイオリンの先生(年配女性)の3人で来ていた。こちらは4本をテーブルにならべて物色中。イタリア新作のファビオ・ボルタなんぞを弾いている。ボルタはお子様にはもったいないなあ・・・と思っていたら、却下となり、ホッとしたりして。

結局クレモナ新作(作者の名はE.Edrev、聞いたことない人)をお買い上げとなった。この女の子はサードポジションが弾ける程度の腕前だったが、親御さんが奮発して100万円の楽器を買い与えた様子。同時に弓やらケースやらも買っていた。

私の耳には4本とも、大差がないような感じだったが、付き添いで来られた先生が、女の子の右手(弓を持っている状態で)を強くひっぱり、楽器をがなり立てさせるのには驚いた。音量が出るかどうかを見ていたのかもしれないが、それなら先生が確認すれば済むのじゃないかと・・・? そのうち、女の子は自分のペースに(つまり小音量の弾き方に)戻っちゃうのだった。

強引な二人羽織状態の演奏と同時に、きらきら星も聞こえてくるのだから、室内は大変な騒音状態。これで、よく楽器選びができるものだなあ〜と感心しながら眺めていた。

私の弓も、ほどなく毛替えが完了したので、松脂をたっぷりつけて音出しをした。毛量は標準より2割少なめにし、長さも短めに指定。毛の左右の強さは完全バランスで、と細かく注文したから、それなりに仕上がってはいたが、張り替える前とは弓の反応性が違っている。どことなく、もっさりしてるのだ。少し弾きこめば毛の状態もこなれてくるのかもしれないから、様子を見ることにしてOKを出した。

そんなこんなで、わたしも参加して店内は《勝手に弾きます3重奏》となってしまった。6畳ぐらいのスペースでそれぞれが違う音を出し始めると悲惨なことになる。 ご商売とはいえ、ああいう騒音を普段から耳にしているのだから、楽器屋さんも大変だ。



 
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