退院したチェロの変化

作業完了の予定時間を繰り上げてもらい、まだ小雪が舞っていた午前中に都内の工房に引き取りにいった。調整が必要といわれた魂柱は、板との接触面の加工がラフだったそうで、結局作り直していた。

魂柱がきれいに接合したためか、音の底辺のあたりでもやもやしていた澱のような雑味が消え、すっきりと鳴るようになった。倍音もブリブリと軽快に響くので心地よい。ポタージュがコンソメに変わったような感じ。

音の透明度が高まったため、今度は駒の削り具合が引き起こすデメリットが目立ってきた。工房のOさんによると、現在の駒は全般に薄手だそうで、とくに中心部分のハートのくり型のあたりが薄くなり過ぎているという。駒の周辺部は薄くてもいいそうだが、一番肝心なところの厚みが足りないと貧相な音になるらしい。調整前はどろりとした音質だったので気にならなかったが、こうなると駒も作り直してやる必要がありそうだ。魂柱と駒はセットでいじらないと調整効果が半減するみたい。

2本同時の毛替も上出来で、いつも気になる半月リングのダメージは皆無。安心した。2本とも標準より1割増しの毛を張ってもらったが、ぼったりした感じはない。メーニッヒ金弓は従来通りの弾き心地を維持しながら、音はクリアに。

一方、ロンディマ銀弓は、高音がシャリシャリするハスキーボイスが消えてマイルドなキャラに変化。どこといって欠点のない優等生的な弓になっていた。もともと優秀だった操作性に磨きがかかったような気がする。毎度のことだが、毛を新しくすると音の清潔感が違う。替える前は、音が徐々に悪くなってくるのでこれほど差が出るとは思ってない。使っても使わなくても毛質の劣化は進むそうだ。よくいわれるように、半年ごとの交換が妥当なのだろう。

私は演奏後にはいつも楽器磨きのVIOLをティッシュにつけて、弓竿に付いた松脂をふき取っていた。付着したしつこい松脂がきれいに取れて、スティックもピカピカになるので一石二鳥。しかし、あれは油性の磨き液だから使用は1週間に1回程度にするようにといわれた。竿に付着した成分が徐々に毛の方に転写され、弓の毛が油でスベスベツルツルになってしまう可能性があるのだとか。

吹雪になる前に工房から戻り、バスから降りてBAMのケースを背負った瞬間、片側のベルトが外れた。カラビナのねじが緩んでいたのだ。危なかったが、もう片方のカラビナが支えてくれてギリギリセーフ。登山用の金具と同じタイプで、つくりがガッチリしているため安心していた。ねじが緩んで外れるとは初歩的な日常点検ミス。



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