今日のひげ

FUKAIPRODUCE羽衣メンバー。俳優・高橋義和のブログです。現在はブログはほぼ休止中です。

酷暑の宮代町の日

宮代町 田んぼ

休日。
いろいろと干す。


自分のための覚え書きとしての記録もこのブログは兼ねているので、少々今日は長くなります。説明だけ書いても長くなるような一日でした。


午前中から暑い中、観劇のため埼玉県の宮代町へ。東武動物公園の隣駅、姫宮駅で降りる。
麦茶を入れた水筒は持っていたが、暑いから一応もう一本飲み物を確保しておこうと思ったが、Suicaの使える自販機が駅前に無かったので、道中コンビニで買おうと思い、進む。
しかし見通し甘く、駅から3分も歩くと見渡す限り写真のような風景になり、コンビニはおろか何の店も、どういう自販機もない。
東京都から電車で30分離れただけでこんな地域が広がっているのか。舗装されたあぜ道を歩く。日を避けるものが全くないので、体感的には今年一番の暑さを味わう。少しでもどうにかしようと折り畳みの雨傘をさす。多少楽になるが、歩くにつれて足の裏が熱くなってくる。ちゃんとした靴底のスニーカーを履いているのに、まるで砂浜をサンダルで歩いているかのように足元が熱いというのは、初めての経験。
誰もいない炎天下を、比喩ではなく実際に声に出してひいひい言いながら20分。目的地に到着。着いた時には、本当に嬉しかった。


観劇。
とはいえ、普段の観劇ではまず行かない場所に行っているということは、ちょっと特殊な観劇なわけで。


平原演劇祭「2018年第3部『戊辰150年、夏』」(@宮代町郷土資料館内 旧加藤家住宅 )。



「平原演劇祭」という、埼玉県宮代町を拠点に劇作家の高野竜さんが年に数回演劇をやる団体というかユニットというか、紹介文にはフェスと書いてある。
中でも年に一回は、この旧加藤家住宅で上演しているのだそうで、噂に聞いて前々から気になっていて、ちょうど稽古も本番もない時期で、しかも無料と書かれていたので、どきどきしつつ来てみた。
どきどきしつつの理由として、ホームページで見た上演時間などのこと。入退場自由ではあるのだけれど、12時に始まって16時に第一部終了。のちに三駅ほど移動した久喜駅から徒歩20分の山の前で第二部が始まり18時まで。まずおののいたのはその長さ。
さらにそれに加えて、旧加藤家住宅は築200年の茅葺き屋根の家で、エアコンがないという事。耐えられるのか。


土間から座敷に上がると、合わせて30畳くらいありそうな広い和室の縁、四辺に座布団とうちわが並べられている。高橋が到着したのは開演ギリギリだったので、すでに30人くらいの人が集まっており、空いている座布団を探し、座る。
近所の人も何人か来ている雰囲気。途中からは子供も見に来ていた。雨戸や障子はできるだけ開け放たれて、風が通るようにはなっている。
着物の女性が、さまざま前説的な事や、暑いので、辛くなったらいつでも立ち上がって隣にある本館(冷房あり)に避難してくれと言ってもらい、一安心。
と、いつの間にかセリフのようなことを話し始めている。開演したのか。さらに、しゃべっていたと思ったら急に歌。
というように、何ともつかみどころのないまま始まったが、結果的には「劇」や「物語」と考えると最後までつかみどころが無かった。


当日パンフレットが無かったので、ホームページの情報を参照しつつ。高橋の記憶と合わせつつ。
http://open.mixi.jp/user/4324612/diary/1967150234
花岡敬造「嵐ヶ丘」の第一幕が軸として演じられているのだが、途中なんの前触れもなく他の演目が挟まる。
芥川龍之介お富の貞操」、大橋泰彦「ゴジラ」の一部、高野竜さんの自作が数本、地元・宮代町出身作家の島村盛助の短編など。
全く突然、ちょっと似た話から全然違う話に移行するので、最初のうちはかなり戸惑う。そして、またそのまま「嵐ヶ丘」に戻るという。
それを演じる俳優たちは中学生くらいの男の子から50代くらいの男性まで10数人なのだが、技術的な違いもかなりあり、それも戸惑う要因の1つ。
さらに日本家屋の涼を得る知恵も役に立たないくらいの暑さも加わって、かなり混沌とした空間が生まれていた。


が、休憩中、スイカや麦茶やアイスが振る舞われたのだけれど、それをお客も俳優たちも近所の人たちも含めて熱い中皆わいわいと食べたり飲んだり種を手に出したりしているそのお祭りっぽい状況を見て、楽しみ方がわかる。
初めて来た地域の祭事に参加していると考えるのが一番しっくりくる。ここまでの道中のことも含めて、旅として感じて楽しむのが良いのではないかと。


と、別の話。休憩中に声をかけてもらって気づいたこと。去年えんぶゼミの発表でみた糸井さん演出の「妙ージカル発表会」や、ナカゴー鎌田さん演出の「牛久沼2」で見た俳優たちが何人か出ていた。言われてするすると思い出した。一緒に写真を撮った。
と、去年お世話になったキラリ☆ふじみの市民劇団の方も出演していた。声をかけていただいて気づいた。申し訳ない。
しかし、どういうつながりでここに出ることになったのだろう。聞き忘れた。
イカ、水分も取れてとても助かった。塩分タブレットもいただきありがたい。


休憩もいつの間にか終わり、だんだんと後半が始まる。
楽しみ方が分かってからは、かなり充実した時間を過ごせた気がする。暑さは本当にしんどかったが、楽しかった。異文化を体験しているような、初めてくる親戚の家にいるような。
出演者とスタッフとお客と空間と向かいの開け放たれた障子の向こうでさらさらいう竹林と時々吹いてくる風と今年一番大きな蝉時雨と、全てによって作られている、他にはない時間を味わう。



改めて、こうした体験というのも演劇のひとつなのだなと。これも確かに演劇なのだと思う。移動も含めて、この日一日が。


楽しかったのだが16時過ぎに第一部が終わったところで寝不足もあってかなり体が辛かったので、大移動しての野外での第二部はちょっと厳しいと判断し、帰る。
姫宮駅前の自販機でスポーツドリンクを買って、飲んだ。
春日部駅での乗り換えで、ビールを買って、飲んだ。


まだ日が高いうちに家に帰れた。
ポテサラと唐揚げと生野菜と焼きイカを食べて、水とお酒を飲んで、寝る。
西武は見事な逆転勝ち。中村剛也選手が調子を上げてきて、わくわくできるようになったことがうれしい。
そして100回目の夏の甲子園がはじまった。




説明ばかりで長くなりまして失礼しました。


宮代町での平原演劇祭。来年も、もし予定が空いていたら行きたくなるのではないかという予感がする。面白かったというよりは、楽しかった。そうか、フェスだ。


と、カンパなど募るのではないかと思っていたが、最後まで完全に無料だった。それでスイカまで出して、大丈夫なのだろうか。そこはちょっと心配。