ポートフォリオ理論に学ぶタイムマネジメント

効果的に資産形成・資産運用をしていくうえでとりわけ重要なのが、ポートフォリオ理論である。ポートフォリオ理論では、さまざまな値動きをする資産(さまざまなリスクやリターン)を組み合わせることによって、適切なリスクとリターンを目指す。この考え方は、タイムマネジメントにも適用できる。


効果的なポートフォリオを組むには、アセットアロケーションがポイントである。自分の持っている総資産のうち、どれだけをどのようなタイプの商品に投資して運用するかを決めることである。アセットアロケーションを変えることによって、資産のリスクとリターンの組合せも変わるわけであり、アセットアロケーションの巧拙が、資産運用の中長期的なパフォーマンスを左右するのである。


タイムマネジメントでいうならば、時間というのを自分が保有している(おそらくもっとも重要な)資産であると考える。その資産を、どのようなアクティビティに配分するかということである。自分が死ぬまでに残された時間は有限であり、これを上手に使えるか使えないかで自分の一生の意味、幸福度が大きく変わってしまう。つまり、最終的には、自分が生きている間に自分の持って生まれたポテンシャルや使命を最大限に発揮・実現するために上手く時間を使えたか、貴重な時間を無駄にし、だらだらと意味もなく生きてしまわなかったか、が問われるのである。幸福の度合いというのは究極的にはそれだろう。決してどれだけお金を儲けたとか名誉を得られたかではない。時間資産を配分する対象として考えられるアクティビティは、仕事、家族、プライベートなどである。さらに細かく言えば、習い事、趣味、家事、育児といったように細分化できるであろう。


重要なのは、自分の時間試算を異なるタイプの活動に配分していく中で、その活動に配分することによって得られるリスクやリターンを把握するということである。ここでいうリターンは、年収のような狭い意味ではない。もっと広義に、人生における幸福度のようなかたちで考える。例えば、仕事ばかりに時間資産を配分し、プライベートな活動に時間資産をあまり配分しなかったら、プライベートから得られる幸福感について機会損失することになり、時間試算のポートフォリオ全体のリターン(仮に総合的な幸福度)を高めることにはつながらない。もちろん、その活動に時間を配分することによって起こりうる損失(時間を無駄にしてしまった)などのリスクも考えなければならないから、リスクとリターンの両方をにらみながらアセットアロケーションをしていかなければならないのである。


リターンにしても、短期的なものもあれば中長期的なものもあるので、目先のリターンに目を奪われないことも大切である。長期的に見てリターンの大きいのは習い事であったり読書であったりする。これらの効果がすぐには見えないからといって投資配分を減らしてしまうのが本当に長期的な自分自身のリターンを高めるうえで有効なのか考える必要がある。


このようにして自分の(死ぬまで残された)持ち時間をどのような活動・投資に配分するかを決めることによって、日々の生活においても時間の優先度が明確になり、総合的な幸福度(=リターン)は高まるに違いない。