時間術で最も大切なこと

長野(2009)は、タイムマネジメントで最も重要なこととして「(誰一人例外なく)私たちの生は死に向かって近づいている」という点を挙げる。時間は無尽蔵にあるのではない。時間を石油に例えるならば、いつか枯渇することはわかっているのに、あたかもそれが無尽蔵にあると感じてしまうところに恐ろしさがある。


私たちは、限りある時間の貯蓄を、毎日強制的に取り崩しながら生活している。取り崩した時間は二度と戻ってこない。自分の死までに残された時間は減る一方なのである。「人生は一度しかない」ということを肝に銘じない限り、どんなタイムマネジメントも邪道となる。


「人生の目的」を定めたうえで、人生で一番大切なことを成し遂げる(幸福のアウトプットを最大化すると読みかえてもよい)ために、自分が持っている時間貯金(毎日強制的に取り崩される)を賢く使うことが求められている。


忙しい状況で時間を作り出すためには、何かを捨てるしかない。自分の人生の時間はすべて自分が責任を持つものだ。責任を持って、捨てるものは捨て、それによって自分にとって大切な時間を確保することだと長野は示唆する。


時間あたりリターンが読めない場合でも、自分の人生にとって大切なことは「時間ノルマ」を設定することが効果的である。例えば「1日のうち必ず○時間は、○○のために時間を使う」というものである。すぐに結果がでないし、やる価値は十分あるがリスクも高いような取り組みの場合、これが必要だ。短期的な時間当たりマイナスリターン(赤字)を覚悟のうえで、長期的に帳尻をあわせてリターンが最大化できればよいのである。