鉄道地図で頭を鍛え「壮大なムダ」を楽しむ

野村(2010)は、鉄道地図をネタに考える力を磨くことで、冴えた頭を作ることができると説く。まず、全体を俯瞰することで視野が広がる。また、鉄道地図を見て気づいた素朴な疑問を調べていくうちに、背景にある歴史や文化や経済の問題に気づいたり、思いがけない知識や教養が身についたりする。さらに、地図をもとにした発見や、発想や、推理や、分析を重ねて問題解決や謎解きにつなげる力もつく。商談や会話でのネタにすることで人間関係力も高めることができる。


頭の冴えた人になるには、現場を大切にする、観察力と集中力を研ぎ澄ます、素朴な疑問を大切にする、疑問をもとに発想力を活かして仮説を立てる、異質な知恵を組合す、知識のみならず教養も磨く、全体をマクロに俯瞰する、人間関係を大切にする、といった習慣が大切だが、鉄道地図を使ってそういった習慣を身に着けることができるのである。鉄道で出かける際にも、ルート検索をネットなどに依存せず、鉄道地図をしっかりと活用することで、全体を俯瞰する力もつくし、問題発見力が養われるし、独創的なアイデアを生み出す訓練にもなる。


鉄道地図を見てあれこれ考え、時にはそれを確かめるために壮大な時間をかけて出かけてみるようなことは、時間の無駄と思うかもしれない。しかし、広い視野で、さまざまな知識と教養を磨くこと。心のゆとりを大切に、知的好奇心を満開にすること。それさえ忘れなければ、頭が冴えわたり、脳がイキイキと輝き、いつまでも若々しい人生が送れる。そして「壮大にムダな時間」も、人生を豊かにする大人の贅沢として楽しむことができるのだという。