組み立てだけ見れば早いよ。プレハブだもの。

痛いニュース(ノ∀`) : 中国、6日間で15階建てのホテルを完成させる…基礎は46時間、鉄骨の重さは従来の6分の1
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1566555.html


ちょっと引っかかったので。
動画を見るにプレハブ工法の凄い版であるようだ。


プレハブ工法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%8F%E3%83%96%E5%B7%A5%E6%B3%95


プレハブというとプレハブ小屋を想像する人が殆どだと思うけど、preでfabrication(制作)しておくからプレファブであってやたら早く出来るツーバイフォーの家とかもプレハブ。
日本はプレハブ大国で技術もだいぶ進んでるしユニットバスなんかは安アパートやホテルの代名詞的存在だったけど今は普通の風呂よりユニットの方が多い。
利点は「必要な分だけ組み立てるので材料が無駄にならない」所と「予め工場で必要な部品を全て組み立てて現場に搬入して一気に組み上げるので建設が始まってからが早い」事。
あくまで「作ってきました」というだけで質が悪いとかそういった事と直結する訳ではない。
あと、着想が素晴らしい建築家が居てそれが技術的に可能か不可能かで言えば可能なのかもしれないので中国がどうのという事ではないけれど


6日間というのはカウントが間違ってるんじゃないか。

それにしても基礎ができるまで46時間38分12秒、外壁などの外装、内装ができるまで
90時間09分52秒。合わせて136時間48分04秒で15階建てのホテルができあがるという
事実にはビックリしますね。

とあるけれどここでいう「基礎」とは建築するための下地の事ではなく骨組の事?
建築で「基礎」といったら建物を建てる土地にコンクリ流したりするアレの事なんだけど。


これから地面の上に建物を建てよう。そう考えた時に棒を地面に刺すのを想像してもらればわかると思うけど地面に刺さなきゃ簡単に棒は倒れてしまう。
その棒の長さと重さが増せば増すほど頑丈な地面により深く刺さなければならない。
15階建てとなるとしっかりとした「基礎」があらかじめ必要になってくる。


地面を掘ってコンクリートを流し込み巨大な「杭」を何本も造ったりしているビルが多いがこの建物はどんな工法を用いているかはわからない。
動画を見るとその基礎工事をやってるシーンが無いが基礎は既に出来ている。この時点で基礎工事を行った時間分のカウントはされていないのだろう。
元あった建物を壊したのか更地だったのか不明だけれど勿論その辺りも工事をすれば2,3日で終わるとは考えにくい。
更に冒頭の地図が拡大していくシーンを見ると河が非常に近く近隣に池の様な物が点在しているのが見える。
河が氾濫してコースを変えたのか小さい川を埋め立てたのか・・・
もしここが河の流域だったのなら土砂が堆積してできている地形であって地盤はあまりよろしくない。
山の岩場に立てるならともかく柔らかな地層に杭を立てても意味は無いので深く耐久力のある場所まで掘ったのかもしれない。
当然基礎工事の工期は更に加算されていく。カウントはされてないが。


さて基礎の問題をさらっとスルーされているようなので次は組み立てを見てみる。
補強の柱を入れているので一応設計上震度6に耐えられると言っている以上は設計の専門家でもない人間が見てもよくわからないので原則の話。
15階建てなので「一度に」とは言わないけれど
「コンクリ流し込んで一体化された構造物として制作した物」
     と
「部品を重ねてジョイントで繋いだ物」
この2つのを比べると後者の方が耐久性は劣る。
全部繋ぎ目も無く造られたプラスチックのおもちゃの城と接着剤を使ってつなげたレゴの城では後者の方が明らかに軟い。
ただ、地震に対して耐久性を考慮してあるというのなら過剰な耐久力は必要ない上に固ければいいというものでもないけれど。
揺らした時に揺れに対して抵抗するだけでは耐久力以上の負荷がかかった場合壊れてしまう。
硬い石の家にはひびが入るかもしれないが木でできた家は揺れはするものの壊れない可能性もある。


大型のトレーラーで造られた部品が次々と搬入されてくるわけだけれど、長さを揃えたりコンクリ流したりする必要は一切無いので
決められた順序でただひたすら部品をはめ込み組み立てていくだけだ。製造段階で問題が無ければ組み立ては簡単に終わる。
だがこれだけの部品を組み立て日に合わせて一斉に製造しているはずが、またも華麗に日数カウントがスルーされている模様。


一体どれだけの部品になるのか。精密なプラモデルの比ではない膨大な部品がある。それもビル15階分だ。
数日で組み終わったならそれこそオーバーテクノロジーであって中国の建築製造技術を讃えて世界はすぐにでも教えを請うべき。
設計から考えると必ずしも総合した日程が短縮されるとは限らないというプレハブの欠点が倍増している事は間違いない。
工場で造るにしても同じ物を現場で施工した時より圧倒的に工期が短縮できますよという事でもないだろう。
しかも今回が初なら使いまわしも出来ないし手探りで面倒な事をしたのだから更に準備期間は長く必要になる。
本当に早くなるのは全く同じ物が作れる次回からだ。




今回の組み立てだけで「早い」と言われても、料理番組で「下ごしらえをした物がここにあります」というか
制限時間のある料理対決なのに中華の鉄人が後は炒めるだけレベルの食材持ちこんで無双しているような状態なので
プロジェクト開始からとは言わないまでも設計段階から日数をカウントしないと工程がどの程度なのか判断は出来ない。


更に造り終わった部品をどこに置くのだろう?という疑問も残る。
15階建ての全てのパーツを保管しておく倉庫代だけで尋常ではない料金がかかるのでは?
外装なら外に置けばいいとしても置く場所がないから借りないといけないだろうし。
どうも国威高揚のために国が手を貸して半ば国家プロジェクトでやってるんじゃないかと勘繰りたくなるスケールの話。
金持ってて受注の為に世界規模の宣伝を兼ねてといわれても日数が間違っている事は簡単にわかる話だから意味が無い。
突貫で造る必要もないのに夜中もクレーン動かしまくりとかも中国がまだそこら辺が緩いというより当局一枚噛んでるんじゃない?と思わずにはいられないニュースだった。