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蝉コロン このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2010-04-28

査読とはいったい・・・・・うごごごごご

こないだ話題になった某論文が一向に掲載されないので毎日PNASをチェックしてたらやっとでた。それはそれとしてPNASの論文見ててふと気づいたのが、Editorのところの注釈「*This Direct Submission article had a prearranged editor.」あれ、こんなの前からあったっけ?


PNAS。Proceedings of the National Academy of Sciences USA。新聞記事だと「米科学アカデミー紀要」とか表記されることもある。最近はPLoS ONEにその座(どの座?)を奪われつつあるけど、面白げで新聞受けの良さそうな論文が載ったりする( ジャーナリズムはPLoS ONEがお好き? -朝日新聞編- - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)。


PNASはIF*1がすごく高いというわけではないけれど、総合誌という見方ではNatureとScienceに次ぐと言っても良い位置づけ。Natureに載せられるほどじゃないけれども、他の専門誌に出すよりは、general interestを狙ってPNASにしよう、という戦略もある。


この雑誌には通常と異なる査読方式がある(参考:pooneilの脳科学論文コメント: PNAS)。

  1. Track IIIはアカデミー会員による寄稿。論文タイトルのあたりに「contributed by ~」と書いてある。つまり自分で「この論文をPNASに載せる」と言える。寄稿なら査読無しかと思いきや、どういう理屈か査読有りということになってる。アカデミーのメンバーは年に数回(4回?)この技が使える。
  2. Track Iは米科学アカデミー会員じゃない人が(お知り合いの)会員を経由して査読に回される。高名なボスから独立したあとも安心?タイトルの下には「communicated by ~」
  3. Track IIは普通の学術雑誌と同様、会員関係なく直接PNASオフィスに送って査読に回される。Track IIだとよくがんばったねと誉められる。「Edited by ~」とあるので見てわかる。

そんでTrack I, IIIが内輪でなあなあでやってるんじゃねえかという批判がある。紀要ってのはそういう性質でもおかしくはない*2けども、極々たまに、これはねじ込んだなあと言われてしまう、よろしく無い論文があったりする。極々たまーに珍妙な論文も出てくる。そういうんはたいてい耳目を集めようとする内容だから特に目立つ。


ここはちゃんとフォローしとかなきゃいけない点だけど、近年では9割くらいがTrack II(一般的な査読方式)で出てるし、Track I, IIIでも米科学アカデミーの会員は、業績のある、信頼できる先生方であられるので、基本的なクオリティはもちろん高い。論文が出ても評判を落としてしまってはしょうがないもんね。


で、前置きが長くなったけど、いつのまにやらTrack I「communicated」がなくなったみたい。調べたら去年そう言ってた(The Academy’s Journal Becomes Less Friendly to the Academy Members - ScienceInsider)。「イモムシはチョウの幼虫じゃなくて、昆虫とカギムシ*3雑種」という論文が出たのがすごくまずかったからなのかな(生物学・科学に関する雑感。: Caterpillars evolved from onychophoransby hybridogenesis)。この問題の論文はTrack Iで、"Communicated by Lynn Margulis"とある。Lynn Margulisは大変な有名人(幻影随想: 陰謀論に堕ちた生化学者)。


まあいろいろあってTrack Iはもうやめましょうと。で、代わりなのかどうかは知らないが、pre-arranged editorというのがあった。冒頭の「*This Direct Submission article had a prearranged editor.」はそれを示している。PNASオフィスへ直接送るTrack IIのオプションで事前にeditor(アカデミー会員)を指定するもの。あれ、そうなるとTrack Iとどう違うのかちょっと僕の英語力では読解出来なかったのだけれども。


ちなみに普通じゃない査読方式とそれへの批判ってのは他にもあって、前述のPLoS ONEは査読が緩く、うーんとなってしまう論文も出ているようだ(403 Forbidden)。PLoS ONE会員じゃないとダメとかは無いので、よりフリーダムではなかろうかと思われる。さらに先を逝ってるのが査読なしの雑誌Medical Hypothesisだけども、これは既報の通り近いうちに査読有りになる見込み(Medical Hypothesesという雑誌 - 蝉コロン)。


こういうオルタナティブなシステムも必要かとは思う。競争が激しい研究分野では、ライバルによる査読であれこれ言いがかりをつけられることもあるからね。BBC News - Journal stem cell work ’blocked’の記事では、iPS細胞とかの幹細胞研究分野におけるその辺りの論争が書かれている。なんか派閥があって、Natureとかに投稿しても査読で邪魔されるんだって。もちろんNatureは否定しているが、Lovell-BadgeとAustin Smith(この分野の大物)が怒っているみたい。iPS関連は一時期確変状態で「山中グループのがうちでも再現できました!」でもNatureに載りそうな勢いだなーと当時ちょっと思ってました。


査読には個人的にもいろいろ思うところがあるけれどそれはまた別の機会に。論文には最初の投稿日、revise(査読を受けて書き直し)の投稿日、最終的な受理の日付が書いてあるので、同時期に出る似た様な論文についてこの情報を見て妄想するのもマニアックな楽しみ方です。


conflict of interestもだけど、いろいろ問題を呼び込みそうな情報がそれでもオープンになっていて、読者が判断できるというのはひとつの文化ですなあ。

*1:インパクトファクター。学術雑誌の戦闘力みたいなもんだと思いねえ。

*2:じゃあ業績にカウントするなよ、って意見はもちろんある

*3:こういう名前だけど節足動物ですらありません

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