方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

『所さんの目がテン! 方向音痴特集』(1) − 内容要約

 2012年2月18日、日本テレビ系列において、『所さんの目がテン! 方向音痴特集』が本放送されました。放送日時は地域局によって異なり、このエントリを書いている2月26日現在、まだ放送されていない地域もあります。
 番組内容の概要は、下記リンク先で見ることができます。

所さんの目がテン![字]
http://www.ntv.co.jp/program/detail/2187347.html 

 30分の番組時間枠内に、これまで拙ブログでさんざん批判してきた俗説がてんこ盛りでした。 

 まずは番組内容を緑字で要約しておきます。
 なお、番組内で行なわれた実験の番号は、要約者である私が振りました。
 番組出演者の台詞は、発言内容主旨であり、正確な文字起こしではありません。ご了承ください。
 未放送地域にお住まいの方は、ネタバレにご注意ください。



街角で男性20名、女性20名に「あなたは方向音痴ですか?」と質問したところ、以下の結果が得られた。

性別 方向音痴 方向音痴でない
男性 3人 17人
女性 16人 4人

やはり女性は方向音痴が多い。そこで、実験をしてみた。


 実験1
被験者 : 方向音痴でない男性3人、方向音痴な女性3人
被験者全員にアイマスクをさせて、ロケバスで下板橋 − 池袋の間にある住宅街に移動。
被験者にルート線を書き込んだ地図を渡して、徒歩で目的地に行ってもらう。
地図は、詳細住宅地図。
出発地点は地図上の北西寄り、目的地は地図上の南東寄り。つまり、地図の上から下に向かって歩くことになる。

ルート上で曲がる箇所は4箇所。
1箇所目 : T字路を右折
2箇所目 : 1箇所目の曲がり角より100メートル先で左折
3箇所目 : コンビニのある角で左折
4箇所目 : 3箇所目の曲がり角の次の角で右折
ルートを誤った場合は「迷った」と見做す。

男性1 11分52秒で迷わずゴール
男性2 14分14秒で迷わずゴール
男性3 17分07秒で迷わずゴール
男性の平均は14分04秒。全員迷わず。

女性1 迷った挙句39分54秒でギブアップ
女性2 迷った挙句43分26秒でギブアップ
女性3 途中で迷うが23分32秒後に偶然ゴールを見つける
女性は全員迷った。

女性は全員地図をクルクル回す(回すたびに効果音が付く)が、男性は全員回さない。

 実験2-a
被験者 : 通行中の男性5人、女性5人
T字路の突き当たりでスタッフが略地図を3秒間掲げて被験者に見せ、目的地に行ってもらう。
被験者は、略地図を見てT字路を右に行くか左に行くか判断するだけ。
略地図の向きを実際の道路の向きと一致させる。

男性5人、女性5人、全員成功。

 実験2-b
被験者 : 通行中の男性10人、女性10人
実験手順は 実験2-a と同じ。
ただし、実験2-aで使用した同じ略地図を半時計方向に90度回転させて見せる。

男性 8人成功 2人失敗
女性 3人成功、7人失敗


地理学の専門家である首都大学東京都市環境学部の若林芳樹教授曰く、
「地図は真上から見た景色を描いている。真上から見た景色を頭の中で回転させて違う場所から見た姿を想像する能力に男女差があり、女性は苦手な場合が多いと言われる」

男性は、頭の中で正しい方向に地図を回転させることができるので、地図を回さない。

 実験3
被験者 : 方向音痴でない男性3人、方向音痴な女性3人(実験1の被験者とは別の人物)
実験1と全く同じルートを、別の地図を使って目的地に行ってもらう。
使用する地図は、簡略化された地図。情報が少なく、コンビニ・神社・信用金庫など目印しか記載されていない。出発地点を地図上の下に、目的地を地図上の上に描いている。

男性1 迷った挙句37分16秒でギブアップ
男性2 迷った挙句40分51秒でギブアップ
男性3 途中で迷うが34分52秒でゴール
男性は全員迷った。

女性1 12分21秒で迷わずゴール
女性2 17分12秒で迷わずゴール
女性3 13分49秒で迷わずゴール
女性の平均は14分05秒。全員迷わず。


若林教授 「女性は目印を使って経路を覚える傾向がある」

女性は目印を探して順番に追う。

所ジョージ氏 「何でこれ〔実験3で使用した簡略地図のこと〕で男は行けないの? 男だって行けそうなもんでしょ」
矢野明仁氏 「行けないんです」

そこで、どれだけ目印を気にしているか、男女の反応の違いを調べることにした。


 実験4
被験者 : 通行中の男性20人、女性20人
仮面ライダー』に出てくるショッカーの覆面をした人物3人を50メートル区間に配置し、通行中の男女が気付くかどうか調べる。
実験中ショッカーが登場するたびに「イーッ!!」という効果音声が付く。

性別 気付いた 気付かない
男性 7人 13人
女性 16人 4人

 

男性の特徴
1. あまり目印を気にしていない
2. 方角や距離感を重視して道を歩く

男性は簡略化された地図より一般的な地図の方が迷わず目的地に着く。

佐藤良子氏 「目印を重視した地図が少ない。目印だらけの地図なら女性も迷わない」


関連記事
『所さんの目がテン! 方向音痴特集』(2) − 目印は大事 
『所さんの目がテン! 方向音痴特集』(3) − 番組内の実験について
『所さんの目がテン! 方向音痴特集』(4) − メンタルローテーションの過大評価