ビフォワーアフターの気になるところ

あの番組どう思いますか。という質問を何度かされたことがあります。今日は岡山県の事例だったあの番組。遠路遥々ご苦労様でした。気になる点、僕なりに何点か書いてみます。

  1. 設計者が工具を持って工事を手伝うのはおかしい。工事をする人と設計する人は明確に分けられるべきで,その姿を映すテレビは一般の視聴者に誤ったイメージを伝えることになる。その演出を受け入れる設計屋さんもおかしい。運悪く事故があっても大変です。
  2. 変な仕掛けが多すぎる。家具レベルの仕事で複雑な家具が多い。建築本来の売り物であるべき空間の豊かさを強調するべきだと思うんだけれど,そんなことより,この家には,こんな仕掛けがあるのだ、と言わんばかりの露出になっている。あんまり複雑にすると壊れやすくなるのでご注意を。
  3. 家族が改造後の状態を知らなさすぎる。設計者と設計段階で打ち合わせしていないかのように、完成後の自分の家を知らなさすぎます。この部屋はこうなる、ここはこうなると、本来ならば細かい打ち合わせを経て見積もり依頼をし,工事の契約をして,着工します。もしかすると、安さを理由に建築主はテレビ局の言いなりになっているのでは,とも勘ぐってしまうほどです。安いんだから、へんな口挟むな,と。
  4. 工事金額の妥当性。工事金額は工事する工務店・建設会社によってかなり変わってきます。参考程度として視聴者に伝えた方が懸命でしょう。また、施工者にとっては,テレビに出ることで一定の宣伝になる訳ですから、その分安くするはずです。設計料や解体費、消費税が入っていないのは,ぱっと見たときの安さを目に焼き付けるためでしょうか。テレビ的です。
  5. 出演依頼されたら出ません!この番組は一般視聴者に対して、改造することで古い住宅が様変わりことをとてもわかりやすく伝えていてその点では,建築界にとってもよいことのように思います。しかしながら、上記のような気になる点を持っている以上,仮に依頼されても出る気はありません。かつて、古民家再生工房宛に依頼があったようですが,丁重にお断りしたとのことです。

かつて、古代ローマ帝国の偉人は建築とは「美・用・強」の統合を目標にするべきだといいました。目に快い美しさを備え、その建物での生活に必要な機能を満たし,長年の使用に耐えうる耐久性を備えていること、そう言い換えられるかもしれません。僕がたびたび,デザインデザインという言葉を繰り返し使うとき,これらの要素を統合した内容を頭において使っています。この番組は改造住宅を取り上げたものとしては、見る目に楽しくできていますが,美用強のポイントを押さえた作りをさらに進めれば,変な演出など要らず,視聴率もとれるのかもしれません。