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2012-02-04

User Experience Journey Map のテンプレート

ユーザ・エクスペリエンスデザインの成果物の1つとして"User Experience Journey Map(ユーザ・エクスペリエンス・ジャーニー・マップ:以下 UX Map)を以前ブログでご紹介しました。反響が大きく、「実例を初めてみた」「具体的なイメージが湧いてこない UX について役立ちそう」といったポジティブな意見を頂戴しました。

無機質になりがちなユーザ(ペルソナ)に物語(ストーリー)を加え、視覚化しマッピングすることで組織内でユーザの Experience の共感を得る「User / Customer Experience Journey Map(ユーザ・エクスペリエンス・ジャーニー・マップ:以下 UX Map)」というツールが海の向こうに存在しています。正に UX Design のアウトプットに相応しいマテリアルです。

via User Experience Journey Map - ユーザ・エクスペリエンス・ジャーニー・マップ

UX Map のメリット

しなしながら国内ではまだ実例が少ないため、インパクトが見えにくく必要性が感じられないかもしれません。少なくとも、試験的に運用を開始してみた結果、以下のことがわかってきました。

  • ステージごとにユーザのメンタルモデルを分類することで、コンテンツ・機能要件設計が容易になる
  • エモーショナル・グラフの可視化によって問題の特定が容易になる
  • ユーザが「どうして」、「どのように」対象サービスを利用するのかを示すことで、UX デザインにおけるステークホルダーの理解が得られやすい
  • "WOW"エクスペリエンス(体験)の設計にコミットできる

データを反映させた具体的なサンプルはまだ紹介できませんが、汎用性を追求したUX Map のテンプレートを公開しましたのでその効果を実感ください。詳しいポイントや利用方法については以前のブログ記事をご参考ください。

  • ユーザのストーリー・タイムラインを軸に生活者の感じる価値を中心にデザインする
  • ユーザとプロダクトあるいはサービスとのインタラクションをタッチポイントとして可視化する
  • 各タッチポイントで提供している、あるいは提供するソリューションを定義する

via User Experience Journey Map - ユーザ・エクスペリエンス・ジャーニー・マップ

2011-12-19

平成23年度 人間中心設計履修証明プログラム

ユーザエクスペリエンスに関心がある方にお伺いしますが、産業技術大学院大学がこの時期に毎年開催している「人間中心設計<履修証明プログラム>」はご存知でしょうか。「人間中心設計(Human Centered Designの略)」の専門家を育成する社会人向け講座で、人間中心設計について体型的な専門教育が受けれる、非常な貴重な講座です。

実態が見えない人間中心設計に興味を持ち始めたのは社会人2年目の頃からでした。ぼくがいま所属している会社ではある程度、この人間中心設計技法が体系化されており、まったくの無知な状態でも自然と実践することができました。しかしながら、必要性の理解不足や各技法の根底にある目的や開発された背景等を学習するきっかけが全くなく、このままでは目的意識や主体性が欠如してしまうのではないかと恐れていました。そこで出会ったのが「人間中心設計<履修証明プログラム>」です。

たまたまぼくの廻りに受験者がいたことも受講のきっかけの1つではありましたが、これまで自分が実践してきた法則やノウハウが通用するのかどうか、をテストするためでもありました。井の中の蛙大海を知らず。半強制的に外に出ることで、世界・社会と自分を比較する機会を増やしてみたいと考えました。結果として自分は成長しているのか、社会にどのような価値を提供することができるのか、を把握できる数少ないチャンスです。

人間中心設計<履修証明プログラム>」で修得できるスキル

  • 人間中心設計の概念、規格、プロセスのお理解
  • 人間中心デザインに関連んする認知科学等の基礎知識の修得
  • 人間中心デザインに関するさまざまな手法の理解と実践方法の修得
  • 製品利用におけるユーザ理解のための総合的分析力の修得

平成23年度『人間中心デザイン』 <履修証明プログラム対応>

また、本講義の講師陣は非常に豪華で、ユーザエクスペリエンス研究の最先端にいらっしゃる方や日本における情報アーキテクチャの第一人者の方がいらっしゃいます。各項目のうち、多くがワークショップ形式で行われており、講義で学んだ技法や体系化されたプロセスを身体を使って学習します。学習サイクルが進められていく中で、これまでぼくが考えもしなかった広い視点・視野を養うことができました。

人間中心設計に十分な理解がなくても本講義は次の3つのユニット別に開講されていますので、安心です。ぼくは時間の都合上、デザインのみを受講しました。

  1. 人間中心デザイン(基礎編)
  2. 人間中心デザイン(デザイン編)
  3. 人間中心デザイン(製品デザイン編)

最後に、この講義の最大の魅力は一緒に学ぶ仲間(講師の方々含む)がいるということです。受講生の皆さんは費用を払って、普段の仕事を続けながら参加されているためモチベーションの高さに驚きます。人間中心設計を極めたい、という共通のゴールに向かって突き進む同士のような存在で、学習速度も大幅に上がります。講義のあとに毎回といっていいほど懇親会が開催され、講義の振り返りを通じて疑問が解消されていき理解も深まります。卒業後もコミュニティを通じて講師の方々を再度お招きして学びのきっかけを設けています。

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ぼく自身、本講義を受けてとてもいい学びを得ることができ、この2、3ヵ月間で大きく成長することができました。講師の方々、そして受講生の皆さんに感謝しています。ありがとうございました。次回の開催は1年後になってしまいますが、人間中心設計に興味をお持ちの方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?講師の1人である浅野先生がブログにて本講義について詳しく紹介していますので、ご参考ください。次は「人間中心設計専門家」です。

関連エントリー:

2011-12-14

Cloudforce 2011 Japan - Welcome to the Social Enterprise

セールスフォース・ドットコムが主催するイベント"Cloudforce 2011 Japan"に行ってきました。テーマは"Welcome to the Social Enterprise*1"クラウド・コンピューティングに加え、FacebookTwitter などのソーシャルメディアを企業で活用する方法を強く打ち出す内容となっており、セールスフォースにとって日本は世界で2番目に大きいマーケットという前評判を聞いていただけに、1万人以上の参加者が訪れる大規模なイベントでした。

Cloudforce 2011Japan - 2

Cloudforce 2011Japan - 15

最も注目を浴びたのは米セールスフォース CEO の Marc Benioff氏の基調講演でした。セールスフォースはその社名から想像できるように、クラウドからスタートした会社でしたが、近年ソーシャル革命によって訪れる「ソーシャル・シフト」の重要性を謳っていました。

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コンピューティング・モデルは1960年代ごろから10年スパンで著しい進化を遂げており、1990年頃から Web(デスクトップ)アプリケーションからモバイルへ。そして2010年にはソーシャル革命によってクラウド・コンピューティングは更なる進化を遂げていることがわかります。Benioff氏曰く、この著しい進化の過程は Steve Jobs氏がテクノロジー革命を、Facebook の Mark Zuckerburg氏がソーシャル革命を牽引してきた結果だと語ります。

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"Social revolution has created a social divide. Is your product or service social?"

ソーシャル革命は、ソーシャル・デバイドを生み出している。個人はすでにソーシャル化しているが、あなたの企業や製品はソーシャル化しているだろうか?企業は、そのギャップをまずは埋めなくてはならない。」

Benioff氏は最後にソーシャル革命によって生み出されたソーシャル・デバイドを解消する手段として3つの策を打ち出しています。それが、セールスフォースが提唱する"Social Enterprise Platform(ソーシャル・エンタープライズ・プラットフォーム)"です。

  1. Social Customer Profile - データベースの進化とともに、顧客のソーシャルプロファイルを構築する
  2. Employee Social Network - 社員のソーシャルネットワークをつくり、顧客同様にエンパワーする
  3. Embrace Customers by Products & Services - 顧客のソーシャルネットワーク化、製品のソーシャルネットワーク

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セールスフォースが実現する Social Enterprise Platform は以下の要素で構成されています。また、それぞれのフェーズでセールスフォースが提供しているソリューションの紹介もありました。詳しくは掘り下げませんが、かなり充実している印象を受けます。

  • Social Customer Profile - ソーシャルネットワークと統合された顧客データから顧客のソーシャルプロファイルの作成・管理。
  • Collaborate - 中核をなす社内コラボレーション用アプリケーション。
  • Connect & Sell - 営業支援アプリケーションで顧客とのインターフェイスや販売情報などをリアルタイムに提供。
  • Service & Engage - 電話やメール、ソーシャルメディアなどのマルチチャネルを統合し、サービスや会話への参加を管理。
  • Social Marketing - ソーシャル・ネットワーク上の情報を分析するアプリケーション。
  • Automate & Extend - パートナー企業より提供されている業務アプリが稼動するクラウド・プラットフォーム。
  • Social Apps - 複数言語に対応したプラットフォームによるソーシャル・アプリケーションの提供。
  • Products & Partners - 製品とパートナーをより近くするオープンなクラウド環境。

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Social Enterprise を実践している数々の事例が紹介されていましたが、ブランディングにも有効であることが伺えます。Benioff氏が今春に発表した「つぶやく車」で話題となっている"Toyota Friends(トヨタ)"も Social Enterprise で成功している企業の1つです。また、Social Enterprise Platform は顧客とのリレーションを築いていく一連のストーリーに従って構成されていることから、顧客ありきで考える人間中心設計に似たアプローチを取っていることがわかります。"Retail Experience"の設計で成功している Burberry の事例もピックアップされていました。

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最後に、Benioff氏は Social Enterprise を実践する前の心得である"SOCIAL"について触れています。新たなビジネスの仕方があるということと、Social Enterprise への扉は既に開いていることを示したかった、と話します。

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Social Enterprise は企業にとってどんな意味があるのか?

結局はここだと思っています。来場者も Social Enterprise を導入することによって企業にどのようなインパクトをもたらすのか、といった疑問を常に投げかけていました。これまでの話から、ぼくが考える企業にとって Social Enterprise Platform を導入する「意味」です:

  • Mobility(起動力)- ビジネスの爆発的な成長に対応できる
  • Continuous Innovation(継続的なイノベーション- ビジネス要件がめまぐるしく変わる中で新しい手法でアプリケーションを開発し、変化に遅れないようにスピーディに、かつタイムリーに対応できる
  • Understanding Customer(顧客の理解)- Social Enterprise によってこれまで以上にリアルに「顧客を知る」ことが可能になる
  • Integration(統合)- 組織や役割の縦割り化をストップし、すべてを結合することで効率的マネジメントできる

午後に参加したセッションでも ASKUL の秋岡 洋平氏とネットイヤーグループの石黒 不二代氏は自社に Salesforce を導入したことによって得られたベネフィットを具体例を交えながら解説されていました。特にネットイヤーグループでは"Understanding Customer"に注力し、ソーシャルメディアを活用したカスタマー・サポート・サービス「Social Voice for Support」を年明け2月に発表するとアナウンスがありました。

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最後に、米セールスフォースの Vice President を務める Pat McQueen氏は大幅なコスト削減を実現するクラウドプラットフォームの活用事例の紹介がありました。Facebook です。急成長を続ける Facebook にも Salesforce は選ばれており、70%ものアプリケーションがクラウド上に格納されているようです。Facebook も前述した ToyotaBurberry 同様に Social Enterprise Platform を実現するためのビジョン"facebook future"を掲げています。ソーシャル・ネットワーク・サービスだからこそ、顧客とのリレーション強化が試されているのではないでしょうか。

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関連エントリー:

*1ソーシャルネットワーク機能を活用して企業(ビジネス)と顧客を近づける Salesforce が提供する CRM ツール。

2011-12-13

#ShibuyaUX - Reminiscence of UX (ユーザエクスペリエンス回想録)

早いものでもう12月。気づけば忘年会の季節です。ShibuyaUX も「ShibuyaUX #8 Year End Party LT祭り〜YOUしゃべっちゃいなよ!〜」と題した忘年会を昨日開催しました。

ShibuyaUX が発足してから今月で1年が経ちますが、過去数回の開催を振り返ってみるとカンファレンス・スタイルに偏っていたため、改めて「みんなが主役」の ShibuyaUX を取り戻すべく今回は初のライトニングトーク形式を採用しました。(少々強引で申し訳ありませんでしたが)参加者はライトニングトークへの参加を必須とし、計15組の方々に発表いただきました。話す内容に特に規制は設けず、近状報告から事例発表、最近参加してきたイベントの感想など、トピックは多岐に渡りました。もちろん、僕も参加しました。

これまでは事例発表が主だったのですが、年末ということもあり、一年分のユーザエクスペリエンスの思想を "Connecting the Dots" の要領で「回想録(Reminiscence)」としてまとめてみました。

ユーザエクスペリエンス領域の業務に携わってから都度思うことがりました。「自分は誰にどんな価値を提供しているのだろう(提供できるのだろう)?」。はてな近藤社長の言葉を思い出しました。

『どんな世界も自分が何かを始める前は自分が居ない状態で回っています。しかも、そこそこちゃんと回っているのです。何か新しい事を始める時、「その世界はあなた無しでもちゃんと回っている」状態から出発する事を忘れないでください。極端な話、「自分が生まれなくても地球は問題なく回っていた」のです。新しい領域に挑戦すると言う事は、自分が不必要な状態から、自分が必要とされる状態への変化を、自分の力で起こすという事なのです。』

はてなに入った技術者の皆さんへ

ユーザエクスペリエンス・デザインに長けたデベロッパー、あるいはビジネスマンが育てば、僕の存在価値はありません。そんな未来を、常に意識しています。"Memento Mori(死を想え)"に近いかもしれません。そこで僕はパターンランゲージの第一人者である中埜博さんと出会いました。

「人間中心と言うからには、私は本当に人の幸せを考えられているのか、常に考えるようにしている。」 - 中埜博

第3回HCD-Netサロン「パターンランゲージとHCD」

ウェブ業界にいると自社のサービスを使ってくださっているエンドユーザの方々の表情はもちろん、「サービスがある生活」すら目にすることがありません。結果、人間中心設計を導入して自己満足の世界に浸っていないか?優れたユーザ体験をデザインします、と胸を張れるか?と自問自答するようになりました。考えていなかったことは否めません。Zappos CEO のトニーが説明しているように、エンドユーザの本質的な欲求は「幸せになりたい」につきます。「幸せをデザインする」ことが僕の任務であり、つまりは本質的な仕事であるという自覚と同時に、責任を追求するようになりました。

女の子みたいな台詞ですが、「幸せってなんだろう?」と次に考えたときに、どうすれば人は「幸せ」と感じることができるのかを特定することができれば、方程式を導きだすことができればデザインすることができるのではないか。幸せを求めるエンドユーザさんに愛される自社サービスを展開するために任せられるポジションはインフォメーション・アーキテクトとかではなくラブ・アーキテクトなのではないか、とか。答えはまとまっていませんが、結局のところ自分が幸せにならなければ(あるいは幸せを経験しなければ)同様の価値を提供することは皆無に近いのではないかと思い、僕も忘れかけていた1つの問いを最後に投げかけてみました。

定量以外の評価が見えにくいというウェブならではのデメリットを克服する上でも、坂本九さんが切望しているように、幸せになったら起こる現象を目指して来年もがんばりたいと思います。

と、これまでは考えたことも人に伝えたこともない思想を赤裸々に公開してみました。来年度も ShibuyaUX をよろしくお願いいたします。

関連エントリー:

2011-11-26

誕生25周年記念 ドラゴンクエスト展

六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーにて開催されている「誕生25周年記念 ドラゴンクエスト展」に行ってきました。ドラクエと共に育った情熱的なファンが多いかと思いきやカップルや女性の姿も目立ち、中高年のご夫婦も足を運んでいらして、ドラクエのファン層の厚さを感じられました。

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日本が世界に誇るゲームカルチャー、その中でも最も人気が高いと称される「ドラゴンクエスト」の世界観や開発手法、社会的な意義を25年の歴史と共に振り返っています。恐らく、ゲーム史上初の本格的な試みなのではないでしょうか。正直、ドラクエシリーズ全10作品(ニンテンドーDSやゲームボーイを除く)の内、1つか2つしか触れていない僕でも十分に楽しめることができ、学びも多くありました。

Dragon Quest - 2

最も印象的だったのはこれまでのドラゴンクエストシリーズを全て手がけてきたゲームデザイナーの堀井 雄二氏、漫画家の鳥山 明氏、作曲家のすぎやま こういち氏のゲーム作りのテクニック手法)です。企画書からコンセプト・マップのドラフト作成、各ステージの仕様書やキャラクターのラフデザインが完成されるまでの一連のプロセスは、随所が手書きながらもその洗練された精度に圧倒されます。

Dragon Quest - 3

シリーズ化されても尚、優しくかつわかりやすく、楽しさに満ち溢れている世界観は最新作へと受け継がれており、これは当初のコンセプト(本質)が変わっていないことの重要さを表していると思います。ドラクエのワクワクする戦闘シーンや音楽、数々の名言を残している遊び心のある言葉はその象徴です。また、@yuu_key さんによると、ドラクエの画面構成書は Apple の Macintosh を模したマルチウィンドウを採用しており、その洗練された画面は当時のファンを驚かせ、いまもその原型を留めています。

Dragon Quest - 4

展覧会そのものもユニークです。観賞方法にもゲーミフィケーションの要素を取り入れており、期待を裏切らないエクスペリエンスがしっかりとデザインされています。論より証拠、とくにマーケティングやクリエイティブに携わっている方に激しくお薦めです。来週の日曜日(4日)までの開催です。

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