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生物と無生物のあいだ

「夏休み。海辺の砂浜を歩くと足元に無数の、生物と無生物が散在していることを知る。美しいすじが幾重にも走る断面をもった赤い小石。私はそれを手にとってしばらく眺めた後、砂地に落とす。ふと気がつくと、その隣には、小石とほとんど同じ色使いの小さな貝殻がある、そこには既に生命は失われているけれど、私たちは確実にそれが生命の営みによってもたらされたものであることを見る。小さな貝殻に、小石とは決定的に違う一体何を私たちは見ているというのであろうか。」 - pp134

私たち人間は、どのようにして生物と無生物を識別しているのか。シンプルな問いかけから始まるこの本は、生物の本質を追い求める科学者としての生きがいを垣間見ることができます。科学という営みが本来持っている大らかさや楽しさが伝わってくると同時に、「生物は自己複製するもの」という既存の定義に疑問を持ち、生物と無生物の間をたゆたうウィルスを発端に、それを解明しようとする研究者の姿勢に好奇心を覚えます。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
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stars生命は神秘としか言いようがない。
stars「ぜひ中学生に薦めてほしい」
stars文系頭の私にしっくりきました
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「生物とは何か」という本質的な問いに対して、自己複製構造を示唆する DNA の螺旋構造や不確定性、非連続性という動的な概念を謳う著者が新たに生み出した「動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)」という定義が紹介されています。貝殻から導き出された生命の「秩序自身を維持していく能力」と「秩序ある現象を新たに生み出す能力」といった振る舞いがただただ美しいです。

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