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2001-05-04

『童夢』大友克洋


あり得ないリアル


 今では既に古典の感がある作品だ。奥付けを見ると1983年とあるから、私が丁度、二十歳(はたち)の時だ。同じ頃にスティーヴン・キングの『ファイア・スターター』(新潮文庫)が出たせいか、どこか似た印象を受けたままになっている。友人を家に招いては無理矢理読ませたことが懐かしく思い出される。


 巨大な団地で次々と自殺する人間が現れる。挙げ句の果てには事件を担当する刑事までが自殺をする。ボケ老人と少女。超能力を持つ者同士の対決となる。初めて読んだ時の衝撃は凄まじいものがあった。宝島か何かで紹介されているのを読み、直ぐさま買いに走った。家に帰るなり、3回立て続けに読んだ。やっと理解できた。ストーリー中心の漫画に馴らされていた私は、絵の細部を見落としていたのだ。だから、この漫画は大判で読まれなければならない。


 今読んでも、血まみれになった団地の廊下や、老人が団地の壁に叩きつけられて壁が陥没するシーンは、凄まじいリアリティをもって迫ってくる。見開き一コマというのは、大友克洋が切り拓いた手法かも知れない。


 細部の厳密さも凄いのだが、視点の縦横無尽さはそれまでに無かったものだろう。空から鳥瞰する絵は過去にもあったが、足元から見上げる絵は見た記憶がない。大友克洋は自由自在に世界を回転させる。


 少女が老人に鉄槌を振り下ろす時、外で遊んでいる子供や、部屋にいる子供達までもが、少女の念力に加担する。童(わらべ)と呼ばれた昔の子供(すなわち老人)のわがまま極まりない夢は、現代っ子の連帯によって葬られる。


 手塚治虫を開祖とすれば、大友克洋が中興の祖と呼ばれる時代がきっと来るはずだ。


童夢

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