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2001-06-12

『古本マニア雑学ノート』唐沢俊一


縦横無尽な面白がり方


 以前、本屋で半分ほど立ち読みをしたのだが、ちゃんと読み直してみた。いやあ面白い。北海道出身でこんな面白い人がいたとは驚き。道産子というのはわたくしのように奥床しく、ゆったりしていて、大人しい人ばかりと勝手に思い込んでいた。


 副題が「人生に大切なことはすべて古本屋で学んだ」。タイトルだけ見てみると、幼稚園の砂場よりも説得力があると思うがどうだろう。薄暗い棚に置かれた本の数々は、持ち主によって捨てられた怨念と、商品としての再起を果たさんとする並々ならぬ決意と、作家によって吹き込まれた思想の息吹などが渾然となって、くすんだ背表紙に立ち現れている。ここは一種の墓場でもあり、産道でもあるのだ。人生を学ぶのにこれほど適した場所もあるまい。


 内容はというと、これがまた親切極まる企画で、古書マニアの1日・即売会の模様・古書遍歴・唐沢氏のコレクション紹介と、古本の世界がざっと俯瞰(ふかん)できるようになっている。


 ところでそんなにたくさんの本を買って、いつ読むのだ、とよく聞かれる。こういう愚問を発するのは古書マニアでない人間である。切手収集マニアに、そんなに切手を買って、いつ手紙を出すのだと訊くようなものではないか。古書は集めるためにあるものである。読むものではない。


 こう言い切れるかどうかで、マニアという坂道を転げ落ちてゆくか、常識的な人生を取り戻せるかが決まってしまうんでしょうな。


 ご存じの方も多いだろが氏はあの「と学会」会員である。大体、どんな本を蒐集しているか容易に察しがつく方もいるだろう。唐沢氏が本を選ぶ基準は


 1.読んで実用にならない。

 2.読んで害がない。

 3.読まなくても差し支えない。


 これらの条件を満たした本を「脳天気本」と名づけ、「読書本来の無目的性を取り戻そう、という運動をあちこちで呼びかけている」。


 紹介されている本は、いずれも「よくもまあこんな本を」という代物ばかりで、見ているだけでも楽しい。


 この人の凄いところは、面白がりながらも、それに溺れることがないところだ。各ページに配されている「カラサワ・コレクション・ピックアップ」の紹介文を読めば一目瞭然。適度な距離を置いた寸評がまた楽しい。


 古本集めの大先輩という人物の発言が、これまた奮っている。


 古いものに目の色を変えて集め回るというのは、これは病気ですよ。病気になったら、高いと思っても、おクスリを飲まなくては仕方ないでしょう。古本屋は病院、古本はおクスリと思って、私は集めているんですよ。


 ある種の悟りを思わせる発言である。“物狂おしい”というのはこういう状態のことを指すに違いない。


 古本好きの方は、本書を手にして、ご自分の病気度をチェックしてはいかが?

古本マニア雑学ノート―人生に大切なことはすべて古本屋で学んだ

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