古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


WWW を検索 古本屋の覚え書きを検索

2001-07-09

『石の結社』デイヴィッド・マレル


気高いストイシズムをまとった暗殺者


 人は快楽を求めるのと同様、ストイックなものに憧れるのもまた確かであろう。堕落と禁欲は、どこか生と死にも似て、相反するものでありながら、補完し合い、密接につながっている。


 主人公のドルーは幼少時に暗殺された両親の復讐を果たすべく、テロ組織「スカルペル」の一員となる。ホメイニ暗殺作戦を遂行中、彼は罪もない家族を殺害する。家族を乗せた自動車が崖から落ちゆくその瞬間、ドルーは自動車の中に幼い日の自分を見る。自分が行ってきたことは結局、両親を殺した連中と同じ行為だったことに気づいた彼は任務を放棄。行方をくらませるために、最も戒律が厳しいことで有名なカルトジオ修道会の門を叩く。


「ここへ入ることは、社会的動物としての人間性を完全に否定し去ることなのです。要するに、隠者になることなのですよ。あなたは今後一生、小さな房でたった独りで暮らさねばなりません。そして1時間の余暇を除いて、ひらすら祈りつづけるのです。それは完全な社会性の剥奪(はくだつ)であり、孤独の生活にほかなりません」


 他人との会話までもが規制されている厳格な修道院でドルーは6年間を過ごす。だが、静かな生活に終止符を打つ日が訪れる。修道院の人間が全員毒殺されたのだ。ドルーは神への誓いを捨てて、復讐の旅に出る。


 養父が裏切ったりするところなどは、前作の『ブラック・プリンス』(光文社)とそっくりなのだが充分楽しめる。教会が赦(ゆる)してきた聖なる殺人の歴史を盛り込むことによって、物語の縦糸が強くなっている。ロック・クライミングの描写なども緊迫感があって素晴らしい。


 変則3部作の第2作となる本書は、前作に続いてスピーディーな展開の傑作となっている。

石の結社

投稿したコメントは管理者が承認するまで公開されません。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証