古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


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2002-02-20

靖国神社


 靖国神社を支える「日本遺族会」の自民党員は11万人。「英霊にこたえる会」の会員は120万人。

2002-02-19

本のない未来社会を描いて、現代をあぶり出す見事な風刺/『華氏451度』レイ・ブラッドベリ

    • 本のない未来社会を描いて、現代をあぶり出す見事な風刺

 十数年振りの再読にも堪(た)える好編である。有名な作品だけに読まれた方も多いだろう。ブラッドベリの長編の中では一番好きな作品である。


 未来社会のある国。ここでは本を読むことが禁じられていた。文明の発達によって、建築材は完璧な防火処理がなされていて火災が起こることはない。消防士を意味した「ファイアーマン」の仕事は焚書(ふんしょ/本を焼くこと)であった。


 ジョージ・オーウェルの『一九八四年』(ハヤカワ文庫)と同様、人間が徹底的に管理されているという社会背景になっている。本書の主役は本である。書物が持つ意味をSFという物語を借りて堂々と謳い上げている。タイトルとなっている「華氏四五一度」とは紙が燃え出す温度を示している。


 火の色は愉しかった。

 ものが燃えつき、黒い色にかわっていくのを見るのは、格別の愉しみだった。真鍮の筒先をにぎり、大蛇のように巨大なホースで、石油と呼ぶ毒液を撒きちらすあいだ、かれの頭のうちには、血管が音を立て、その両手は、交響楽団のすばらしい指揮者のそれのように、よろこびに打ちふるえ、あらゆるものを燃えあがらせ、やがては石炭ガラに似た、歴史の廃墟にかえさせるのだった。


 これが冒頭の書き出し。火は破壊の象徴であり、ホースから放出される「毒液」は権力の象徴に他ならない。破壊を「愉しむ」姿にぞっとするような人間の黒い心が垣間見える。


 ファイアーマンのガイ・モンターグは、近所に住むクラリスという少女と出会う。クラリスは「水のようにきれいに澄んでいる」瞳を持った不思議な少女だった。クラリスの知的な質問にモンターグは徐々にイライラを募らせてゆく。


「たしかにあたし、あんたの知らないことを知っているわね。夜あけになると、そこら一面、草の葉に露がたまるのを知っていて?」

 いきなりそういわれても、かれにはそれが、知識のうちにあるかどうかさえ思い出せなかった。


 別れ際にクラリスは「あんた幸福なの?」と問いただす。その一言が彼を動揺させた。


「人間とは、たいまつみたいなものだ。燃えあがり、光輝をはなつが、燃えつきりまでの存在なんだ。他人のくせに、おれを捕らえ、おれにおれ自身の考えを投げつけてよこす! それも、ひとに知られず、内心のいちばんおくふかくでふるえている考えを」


 未来社会の快適な生活は幸福を保証するものではなかった。


「あかるい場所でのかれは、幸福の仮面をかぶっているにすぎない。それをあの少女が、ひきはがしてしまったのだ」


 モンターグはクラリスとの出会いによって変化の軌道を歩み出す。今まで考えようともしなかったことを考え始め、常識を疑い、自分の人生を自分の手に引き寄せようとする。


 深く自分自身を見つめ直したモンターグは少しずつ変わってゆく。


「あんたの笑い声、まえよりは、ずっとあかるくなったわよ」


 ある焚書現場でモンターグは好奇心に逆らうことができずに1冊の本を隠し持つ。本を発見された家の老婆は本と共に自ら炎の中に留まった。


 家に持ち込んだ本の存在を知ったモンターグの妻は狂乱状態となる。妻は快適な生活に毒されて、自分の頭でものを考えることができなくなっていた。


「本のなかには、なにかあるんだ。ぼくたちには想像もできないなにかが――女ひとりを、燃えあがる家のなかにひきとめておくものが――それだけのなにかがあるにちがいない」


「あの女は、きみやぼくたちと同様に、まともな人間だった。いや、ぼくたち以上に、ちゃんとした人間だったかもしれない。それなのに、ぼくたちは彼女を焼き殺した」


 モンターグは遂に目覚めた。


 ファイアーマンという立場を捨てたモンターグは、本を知るフェイバー教授と知り合う。自分を導いてくれる知遇を得てモンターグは走り出す。


 フェイバーは言う――


「すぐれた著者は、生命の深奥を探りあてる。凡庸な著者は、表面を撫でるにすぎん。劣悪な著者となると、ただむやみに手をつけて、かきまわすだけのこと、であとはどうなれと、捨て去ってしまうんです」


 人間とは思想に生きる動物であろう。感覚的な快楽を追い求めるようになると、人間は自分でものを考えなくなる。本書に書かれた世界が遠い先のことだなどと誰が言えるだろう? 本を読むという行為は他人の思想に触れることに他ならない。コミュニケーション・ツールはどんどん発達しているものの、そこで交わされるのは意味のない会話であり、他愛のないデジタル文章である。映像文化は圧倒的な情報量を洪水のように溢れさせ思考を停止させる。燃やさずして本は消え去ろうとしているように思うのは私の錯覚であろうか?


 モンターグが快適な生活を捨て、安定した職業を捨て、何も疑おうとすらしなかった自分を捨て、そうしてまで見つけようとしたものは何か。それは本当の自分であり、本来の自分の姿であろう。これこそ真の自由であり、そこにモンターグが戦う理由があったのだ。


「建設に従事しない男は、破壊を仕事にすることになる。(中略)それが古い真理ですからな」


 破壊は一瞬、建設は死闘だった。モンターグの生き方に魅力を覚えるのは、自由であろうとすることが人間の幸福に直結していることを示しているからであろう。自分が何かに束縛されているのではと考えさせずにおかない本書を、生きている間にあと数回は読んでおきたい。

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

2002-02-14

ニュース拾い読み・書き捨て 17


不況を尻目に左団扇(ひだりうちわ)の国会議員


▼詳細は1月6日付東京新聞に▼議員年金というものをご存じであろうか? 国会議員がもらえる年金のことである。一般国民の場合、25年間の掛け金を納めなければもらうことができないが、国会議員になると何と10年勤めればもらえるようになるとのこと▼その上、一般国民の平均給付が年間200万円弱なのに対して、議員は在職10年で年額412万円ももらえるってえんだから腹立たしい▼しかも、議員年金の67%が血税から払われているのだ▼もっと怒らせてあげようね。議員になると基礎年金(厚生年金、国民年金、共済年金)とは別に議員年金が支払われるという。つまり二重取り。だから、ざっと見積もっただけで高々10年程度、議員をやれば年金だけで600万円もらえるようになるってえわけ▼国税庁によると、日本の一般労働者の平均年収は461万円。国会議員になれば、年金だけでこれ以上稼げる具合になる▼海外と較べてもべらぼうに高額な年金であり、イギリスにおいては20年勤め上げて受給資格対象となり、もらえる年金は半額だという▼しかもこの制度、何度も議員に有利になるよう改正され続けてきた経緯がある。一般国民の年金が65歳以上に引き上げられた時も、議員達は自分らの年金だけは「60歳以上」に据え置いた。更に更に驚くべきことは、犯罪を冒して有罪となった議員(懲役3年以下)にまで支払われるだという▼「国民に痛みを押しつけている」と声高に叫んでいる野党の連中だって結局、同類ってこったね▼全ての政治家にクソを食らわせてやりたい衝動に駆られるのは極めて良識的な判断であろう。


雪印問題


 雪印問題について「明らかに不正とわかることをあえてやる。会社のためと思ったのだろうか/もうひとつ、『不正』を感づいていた社員もいただろう。実際にかかわった社員も少なくなくないと思われる。そのなかのだれかが『これは良くない。やめよう』と言って、やめさせられなかったものか」

【「天声人語」/朝日新聞 2002-02-07)


▼この野郎は会社勤めをしたこがないのかしら? 世間を知ること大学生以下だね。いやはや驚いた▼会社ってえのあね、儲かるためなら何でもやるのさ。インチキなんぞ、そこここにあらあね(笑)▼このコラムを書いた大馬鹿者は、せめて朝日新聞の拡張ぐらいやってみたらどうかね


「清水 痛みに耐え全力」


【朝日新聞 2002-02-14】


▼凄まじい銀メダルだった。敵は外に存在しなかった。自分の肉体との格闘だった。ある意味ではメダルを超えた領域で戦っていたといってよいだろう。弱音を吐くことを許さなかったストイックな男は、再起不能にならなかった結果に安堵した▼「靴下も、ズボンもはけなかった」。こうした事実は試合を終えた後、初めて明らかにされた▼「疲れている筋肉があれば、自分で見てあげる。触ってあげる。話しかけてあげる。そうすることで、確かに回復することがあるんです」「自分を客観視する方法のひとつですね。体も頭も色々なパーツに分けて、分解する感覚です」。筋肉が意志を持つまでに鍛え上げ、精神と融合させる。そのやり方が阻まれる痛み止めの注射をしなければならなかった。「せき髄とその両わきの3ヵ所に打った。錠剤も朝起きて1錠、スタート1時間前に1錠飲んだ」▼男は最悪の状況下で最高のプレーをした。「今季はもうダメだなと思ったこともあった。そこであきらめないで、途中で投げ出さなかったのがよかった。評価したいと思う」▼彼は間違いなく勝った。心からの拍手を送りたい。

2002-02-12

『オフィスサプライ・カタログVol.2』SOKKIグループ


 前号に


 気に入ったコピーを目にして、カタログを取り寄せたこともあった。このカタログは現在に至っても、たまにパラリと開いて一人でニヤニヤしながら悦に入ることがある(参考までに書いておくと、SOKKIグループの『オフィスサプライ・カタログVol.2』という事務用品のカタログ)。


 と書いたところ多大な反響が寄せられるものと想定したいたら、全くナシのつぶて。一体全体どうなってんだい? チト反応が悪過ぎやしないかい? ってなわけで勝手に書かせてもらおう。


 まあ、普通の事務用品カタログなんだが、何と言ってもコピーがいかしてる。写真の合間にゴシック体で堂々たる言葉が聳(そび)え立っている。ざっと紹介してみよう。


 紙クズの山か/黄金のデータ・バンクか。(ファイル)


 重圧は/あるか。(ファイル)


 投入。分類。/移動。削除。/迫真の/ドキュメント。(ドキュメント・ファイル)


 磁気を逃すな。(フロッピーディスクファイル)


 真実はかく現われ、/謎はかく生まれる。(現像液)


 どうです? 中々、歯切れが好いでしょ〜。コピーライターは誰なんでしょうね?


 あなたのお気に入りキャッチコピーを大募集! 自分で考案したものでも、よござんすよ。

2002-02-02

目撃された人々 13


 今回は人ではなくてモノ。


 家の前の信号を渡って、左側の路地に入ると右手に花屋がある。JR亀戸駅に向かう際、必ず通るコースだ。以前は吹けば飛ぶような建物だったが、いつしかマンションが立ち、その1階に店舗があてがわれていた。


 私が亀戸に住んでから15年が経過するが、ここで花を買ったことは過去に一度しかない。人の好さそうな主だったと記憶する。


 今朝、何気なく店に目をやると、「合い鍵、作ります」と小振りの看板が据えられていた。「うん?」瞬時に疑念が湧く。どういうことだ? 折りからの不況で、花屋だけでは食ってゆけないということなのだろうか? 合い鍵を作る機械でも買ったのかしら? などと想像している内に亀戸駅に辿りついていた。


 何か面白い臭いを私は嗅ぎ取っていた。総武線の乗り込むと、品の好い小綺麗な女性が立っていた。「ミス“つつましさ”」と私は呟いた。但し、声を掛けるほどの勇気は持ち合わせていない。この年になるまでナンパをしたことはただの一度もないのだ。ナンパされたことは一度だけある。年甲斐もなく胸がキュンとなった。思わず赤面しそうになる。その瞬間、「あ!」と私は思い当たった。「ははぁーーーん、あの花屋で花を買って、女性にプレゼントすれば、相手の女性から合い鍵を作ることを許されるってえワケだな!」。そんな花屋の主の思惑があると考えるのは私の想像力が豊か過ぎる証拠だろうか。


 電車を下りて、歩きながら煙草をくわえた。肺一杯に紫煙を吸い込むと、再び胸が疼いた。美しい女性は既に目の前から去っていた。胸だと思ったのは私の錯覚だった。それよりも少し低い位置だった。疼いたのは十二指腸潰瘍だった。

2002-02-01

ニュース拾い読み・書き捨て 16


ズームアップWEEKLY/カブール 「寒い教室 学ぶ心熱く」


【読売新聞夕刊 2002-01-31】


▼写真記事である。左に紙面の半分もある大きさの写真。まだ朝早い時間なのであろうか、少女が暖房の無い教室で白い息を吐きながら教科書に見入っている。少女の横顔と教科書に朝日が降り注いでいる。中世の宗教画を思わせるほどの神々しさだ。静謐(せいひつ)と緊張。少女の向学心と集中力を妨げるものは何一つない。貧しくても、失った物がどれほどあろうとも、平和を存分に享受する人間がここにいる▼そして右上には、開門と同時に椅子を確保するために教室へ走る生徒が映っている。椅子を逃してしまうと一日中立ったまま授業を受ける羽目となるから大変だ。しかし、飽食の国にあるデパートの年末セールなどとは、まるで異なっている。カブールの大地を蹴り、跳び上がる肉体の上には、笑顔が輝いているのだ。椅子を確保することすら楽しくてしようがないという顔つきだ。余りにも眩しい彼等の笑顔が、世界のあるべき姿を示してくれる▼その下には、廊下で授業を受ける生徒たち。教室が足りず、身体を寄せ合い、縮こまって、耳をそばだてている。ああ、どうして君達はそうまでして、学ぼうとするのだろうか。学ばずにはいられない衝動は、砂漠に突如として現れた涌き水のようだ。そんな君達から、私の方こそ学びたい▼平和の種はスクスクと育っている。この子等の人生に二度と戦禍が及びませんように。この子等が世界を平和にしゆく立派なリーダーと育っていきますように。