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2007-12-27

『雪が降る』藤原伊織


 藤原伊織が亡くなった(2007年5月17日)ことを思い出し、ふと手に取ってみた。読むのは二度目だ。「確か、ミステリではなく小説だったような……」という程度の記憶しか残ってなかった。


 一気に読んだ。以前は感じなかった何かが胸をよぎった。年を重ねてまとわりついた汚(けが)れが、削ぎ落とされるような気がした。


 心の底の埋み火に息を吹きかけられ、チリチリと火の粉が舞う。だが、本を閉じた後に残っているのは、火の粉の後に残された黒い点だけだ。


「果たせぬ思い」が登場人物を際立たせ、鮮やかな陰影を残す。愛と正義が交錯する時、男は殉教の道を選ぶ。愚かなまでの美しさに、私は目を伏せる。


「食って、寝て、遊んで、欲しい物を手に入れて、長生きする――そんな人生に意味があるのか?」と、この作品は問い掛けてくる。


 藤原伊織は、11冊の本を残してこの世を去った。駄作を残すことを忌み嫌うあまり、さっさと逝ってしまったのだろう。謹んでご冥福を祈る――。


雪が降る (講談社文庫)

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