2008-05-12
ティッピング・ポイントの特徴と原則/『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』(旧題『ティッピング・ポイント』)マルコム・グラッドウェル
- ティッピング・ポイントの特徴と原則
- ティッピング・ポイント
- 高い地位にある階層の人口が5%を割ると青少年の退学率と妊娠率が跳ね上がる
何という安直なタイトルか。せっかくの名著復刊が台無しだ。ま、テレビCMを大量に流す「マーケット覇権主義」企業の出版部門だから仕方がないか(ソフトバンク文庫)。
「読書は昂奮だ!」というエキサイティングな日々を過ごすようになったのも、元はと言えばネットワーク理論によるところが大きい。『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』→『新ネットワーク思考 世界のしくみを読み解く』→本書という順番で読んできたが、多分私は天才になっていることだろう(笑)。と、錯覚するほど面白い。やはり、本を読めば世界が広がる。固定概念の一角が破壊されて、青空が見えるような感覚がある。
何かを広めたい人、広がるさまに興味がある人は必読。マーケティング+心理学+メディア+社会事象で、流行の原因を鋭く分析している。ユニークな発想、多様な事例、洗練された思考に圧倒される。本書そのものが、ネットワーク理論のティッピング・ポイントとなっていることは疑問の余地がない。
ティッピング・ポイントの特徴
- 感染的だということ。
- 小さな原因が大きな結果をもたらすこと。
- 変化が徐々にではなく劇的に生じる。
ティッピング・ポイントの原則
少数者の法則――いかに社交的か、いかに活動的か、いかに知識があるか、いかに仲間うちで影響力があるか。
媒介者(コネクター)、通人(メイヴン)、セールスマン。
- 一見すると些細なことが大きな違いにつながる。
- 何かを語るときにそれを取り巻いている状況のほうが語られた内容よりも重要になる場合がある。
- 説得というものが自分たちの与(あずか)り知らないところで作用する。
- 感情や気分を上手に表現できる人は、他の人よりもはるかに感情の感染力が強い。
- 何かを語るときにそれを取り巻いている状況のほうが語られた内容よりも重要になる場合がある。
粘りの要素――発信するメッセージが「記憶に粘りつく」強い印象があるか。
- 余白に小さな工夫を加える。
- 「セサミ・ストリート」と「ブルーズ・クルーズ」。
背景の力――環境の条件や特殊性。
- 感染は、それが起こる時と場所の条件と状態に敏感に反応する。
ざっとまとめてみたが、この本の魅力を示すことは困難極まりない。その辺の本の10冊分の面白さと言っておこう。
付箋だらけになっている中から出血大サービスで一ヶ所だけ紹介しよう。
残る唯一の結論は、ジェニングズ(ABCのニュースキャスター)はレーガンに対する「意図的かつ顕著なえいこひいきを顔の表に」出したということになる。
さて、この研究はここから佳境に入る。ミューレンの心理学チームは、3大ネットワークの夜のニュースをいつも見ている全米各地の有権者に電話をかけ、どちらの候補者に投票したかをアンケート調査した。すると、ヘニングズによるABCのニュースを見ている人でレーガンに投票した人の数は、CBSやNBCを見ている人よりもはるかに多いことが判明した。
たとえばクリーヴランドではABCの視聴者の75%が共和党を支持したのに対し、CBSやNBCの視聴者は61.9%にとどまった。マサチューセッツ州のウィリアムズタウンでは、ABC視聴者の71.4%がレーガン支持で、他の二つの全国ネット視聴者は50%だった。ペンシルヴァニア州のエリーでは、この格差は73.7%対50%とさらに開いた。ジェニングズの顔に出た巧妙なレーガンびいきの表情は、ABC視聴者の投票行動に影響を与えたようである。(中略)
信じがたい話だ。多くの人は直感的に因果関係を逆にすることができるのではないかと思うかもしれない。つまり、もともとレーガンを支持している人がジェニングズのえこひいきに惹かれてABCを見ているのであって、その逆ではないだろうと。だがミューレンは、それは妥当性を欠くと明言する。
というのも、他のもっと明白なレベル――たとえばニュース原稿選択のレベル――では、ABCは他局よりも反レーガン色の濃いテレビ局であることが明らかであり、筋金入りの共和党支持者ならABCなど見向きもしないことが十分想像されるからだ。
さらには、この調査結果が偶然にすぎないものかどうかに答えるために、4年後のジョージ・ブッシュ対マイケル・デュカキスの選挙戦でもミューレンは同じ実験を繰り返し、まったく同じ結果が出ているのだ。
「ジェニングズは共和党候補に言及するとき、民主党候補に対するよりも多く笑顔をつくった」とミューレンは言う。「そしてふたたび電話調査をしたところ、ABCの視聴者はブッシュにより多く投票したという結果が出た」
さてここで、説得の機微に関するもう一つの例をお目にかけよう。
ハイテク・ヘッドフォンの製造会社による市場調査だという名目で、大人数の学生が招集された。学生たちはヘッドフォンを渡されると、使用者が動いているとき――たとえばダンスしたり、頭を振ったりしているとき――どんな影響が出るかを調べるのが目的だと言われた。
まずべすての学生にリンダ・ロンシュタットとイーグルスの歌を聴いてもらい、それから自分たちが所属する大学の授業料を現在の587ドルから750ドルに上げるべきだと主張するラジオの論説を聞かせた。
ただし、論説を聞くにあたっては、3分の1の学生にはたえず頭を上下に振るように、次の3分の1の学生は頭を左右に振るように、残る3分の1は頭を定位置に保つように指示が出された。
これが終わると、歌の音質と頭を振ったときにどんなふうに聞こえたかを問う短い質問票がすべての学生に配られ、その最後にこの実験の本当の目的である質問が添えられた。「学部の妥当な授業料の額についてどう思いますか?」
この質問に対する返答は、ニュース番組の世論調査に対する返答と同じくらい信じがたい。
頭を動かさないように指示された学生は番組の主張にも動かされなかった。彼らが適正だと感じた授業料の額は582ドル、ほぼ現行の額に一致した。
頭を左右に振るように指示された学生は――たんにヘッドフォンの質を試す実験だと言われているにもかかわらず――授業料の増額に反発し、平均すると年間の授業料を467ドルに下げるのが妥当だと答えた。
ところが、頭を上下に振るように言われた学生は、この論説に説得力を感じたのである。彼らは授業料の増額に賛成し、平均して646ドルに上げるべきだと答えた。建前としては他の理由があるにせよ、たんに頭を上下に振るという行為が、自分たちの身銭を切らされる政策に賛同する結果をもたらしたのである。
ただうなずくことが、1984年の大統領選挙でピーター・ジェニングズが演じた笑顔と同様、大いに影響を与えたわけだ。
この後、人が会話をする際、話を聞いてる側がダンスをしている様子が検証されている。つまり、ボディランゲージ。「言葉の始まりは歌だった」という私の持論が補強されたような気がして、ニンマリ。
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