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2008-06-09

『セックスボランティア』河合香織


 衝撃的なタイトルだが、中身は「障害者の性」を扱った極めて真面目なルポ。文章も読みやすい。


 竹田さんはビデオでこんな言葉を語っていた。

「介護を受けるってことは僕らにとっては最大の屈辱なんだ。我慢してるよ。生きるためにね」


【『セックスボランティア』河合香織(新潮社、2004年/新潮文庫、2006年)以下同】


「ソレデモ……」とかすれた声でつけ加え、竹田さんは目を細め、ゆっくりと瞼を閉じた。

「イチド デ イイカラ カノジョ ト セックス シタ……カッタ」

 風俗店では、みどりさんのことを店の女性に重ねている。亡くなって20年以上たってもなお、彼女へのうしろめたさのようなものを感じるという。

「おんな の こ と あそびに いきたかった けっこんも したかった こども も ほしかった きょういくも うけたかった でも そう おもうことさえ ゆるされなかった」

 文字盤の上に、静かに涙がこぼれ落ちた。


 日常生活ではタブー視されている「性」という角度から、障害者の現状を巧みに炙(あぶ)り出している。障害者が置かれた立場から、「生きにくい社会」が浮かび上がってきて息苦しさを覚えるほどだ。


 売春が合法とされているオランダでは、「セックスボランティア」という制度があり、自治体の援助も受けているそうだ。例えば極端な例となるが、両腕を失った人の自慰行為や、結婚はしているものの介助がなければ行為に及べない夫婦もいる。かような方々の手伝いをしたり、あるいは直接的に異性を派遣するケースもある。

「人間らしく生きるためには、どうすればよいのか?」と思いつつ読んでゆくのだが、巻半ばあたりから違和感を覚え始めた。著者の障害者に対する不躾な質問が、あまりにも「ありきたり」なためだ。「あるべき論」を振りかざしているのは、著者がまだ30代のためだろう。その意味では書くのが早過ぎた感を否めない。


 巻末見開きに著者の写真が配されているが、なぜか目の部分にシールが貼られている。それでも、日光に当てると透けて見える。私はげんなりした。だってそうだろう、障害者の股ぐらを調べている物書きが、てめえの顔を隠すってえのあ、一体全体どういう料簡なんだ? 「ケッ、根性のねえ野郎だ」と唾を吐く真似をした。本当に吐いてしまったら、後始末が面倒だ(笑)。


 総体的にはいい本なんだが、失速感は避けられないと言っておこう。


 尚、非常に難しいテーマだが、考え方は二つになると思われる。一つは、障害者はただでさえ生きにくいんだから、せめて性的サービスは請けさせてあげようよという考え方。もう一つは、五体満足でももてない連中は山ほどいる。障害者を特別視すれば逆差別になりかねないという考え方だ。


セックスボランティア (新潮文庫)

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