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2008-10-05

効率化が仕事量を増やす/『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆


 小田嶋隆の著作を読むと頭がスッキリする。目からウロコが落ち、脳細胞のシナプスが活発になる。そして、ガハハハと笑っているうちに、オダジマン教の信者となってしまう。


 大衆消費社会は広告戦略によって購買意欲を刺激するのが常だが、企業内においては経済原則に則って合理化が推し進められる。つまり、コスト削減。中年期を過ぎたオジサン、オバサンはメタボリックな体型で緩慢な動きとなるが、大企業はおしなべて贅肉を削ぎ落としたアスリートのような体型となっている。


 トヨタ自動車に至っては、工場ライン周りの歩く歩数までカウントされ、無駄な歩数はコストとして計上される。これが、トヨタカンバン方式。まるで、レーザーレーサーを着用した体型である。


 では、社内のコスト削減が社員の幸福につながるかと言えば、決してそうではない。人員整理をすれば、必ず誰かの負担が増える。結局は綱引きのメンバーを減らしているのだから。


 では、OA(オフィス・オートメーション)が定着し、事務が効率化したことは、素晴らしいことだったのかというと、話はそう単純ではない。

 なぜって、OAによって事務が効率化したにもかかわらず、ジャパニーズビジネスマンの超過勤務がたった半時間でも減ったわけではないからだ。

 そうだとも、考えてみようではないか。

 たとえばの話、これまで社員一人分の人事管理ファイルを更新するのに4時間かかっていたものが、データベースの導入によって2時間に短縮されたとする。

 と、人事部長は、

「さあて、今日からわが部は3時退社ということにしよう」

 と言うだろうか。

 言わないね。絶対に言わない。

 部長はきっと、

「よーし、今期から人事管理ファイルの項目数を倍にしよう」

 と言うか、でなければベテランの部員を子会社に出向させることを検討しはじめることだろう。

 おわかりになるだろうか。「事務の効率化」とは、つまり「単位時間内に一人の社員がこなせる仕事量の増加」にほかならないのであり、要するに「ノルマの増加」つまりは「労働強化」なのである。

 さらに意地の悪い言い方をすれば、「事務の効率化」および「生産性の向上」とは、単に「単位時間内にこなす仕事量の増加」のみならず、「一定の報酬を得るために必要な仕事量の増加」でもあるわけだから、これは給与生活者にとっては、相対的な貧窮化でさえあり得るのだ。


【『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆(JICC、1993年)】


 オダジマンの天才ぶりは、枕=導入部にある。30代半ばでこれだけの文章を書くのだから、晩年にはどうなっているのか見当もつかない。

仏の顔もサンドバッグ

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