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2008-10-17

癌治療功労者列伝/『がんというミステリー』宮田親平


 この新書は「癌治療功労者列伝」といった趣がある。日本人がこれほど活躍していたとは露知らず。驚かされた。


 厚生労働省は癌のことを「悪性新生物」と呼称している。これじゃあまるで、「ウルトラQ」に出てくる怪物みたいだ。まったくセンスがない。どうせなら、「無限増殖細胞」とか「不制御異常細胞」にすべきだ。そもそも癌治療が難しいのは、体内で発生するためなのだ。


 癌治療の進展は好ましい。莫大な経費と人員と時間を要していることだろう。では、癌を撲滅すればどれくらい寿命が延びるのか?


 がんをもし絶滅することができたとしても、平均寿命を2年ないし3年延ばすことができる程度だといわれる。老年に死は必ずやってくる。その死亡原因の一つとしてがんを避けることはできない。


【『がんというミステリー』宮田親平(文春新書)】


 エ、そんな程度なの? 2〜3年の延命のために医学界と薬品メーカーは血道をあげていたんだ(※「血道をあげる」の誤用)。


 だが、癌で苦しむ人々が存在する限り、医学は克服への努力を惜しまず、薬品メーカーは癌が死因の第一位である限りビジネスチャンスを見込んでいる。医は算術、薬は商品。死に群がるのはハイエナ。


 大衆消費社会において、個々の善意はあまりにも無力だ。雇用というコミットメントをした以上、マーケットの論理に支配されてしまう。資本主義とは、人間が資本の奴隷となることを宣言した経済原理なのだ。


 しかし、この本に登場する研究者は熱と光を放っている。暗闇の中を手探りしながらも前へ前へと進む潔さがある。彼等の目的は金ではなかった。名声や地位ですらなかったことだろう。「無私」といえるほどの集中力を発揮しながら、彼等はただただ癌を見つめていた。


 綺麗事を言うつもりは更々ないが、癌を抑制したのは彼等の「善意」であったように思われてならない。

がんというミステリー (文春新書)

トール・ノーレットランダーシュ


 1冊読了。


ユーザーイリュージョン 意識という幻想トール・ノーレットランダーシュ/518ページで4200円。十分お釣りが来るよ。1万円札をレジで出せばの話。もちろん冗談だ。声高らかに宣言しておくが、これは安い。私の読書経験から申し上げれば、各章が優れた一冊の書籍に匹敵するほどの代物だ。意識の本質が幻想であることを説いているのだが、その導入部としてマックスウェルの怪物から、情報エントロピー、アルゴリズム、複雑系情報理論、コミュニケーション論、心理学までが引用されている。「意識」が取り上げられるのは第3部で261ページ目だよ。正直に告白しておこう。私は一度挫折しかかった。そして飛ばし読みをしたところ、再度中断したところから読み直さざるを得なくなった。そして一気に読み切った。これは凄いよ。「意識を通してつくられた世界観、宇宙観」を「世界と宇宙」から見つめ直しているのだ。我々の頭蓋骨の中でぽっかりと地球のように浮かんでいる脳。意識とはさしずめ、稲妻程度の存在に過ぎないことが、よく理解できる。デンマークのベストセラーになったとか、そんなことはどうでもいい。はっきり言っておこう。この本は「現代の経典」に位置すべき作品だ。それほど凄い。機根を調(ととの)えておくために、『人類が知っていることすべての短い歴史ビル・ブライソン、『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!佐藤勝彦、『数学的にありえないアダム・ファウアー、『夢をかなえる洗脳力苫米地英人、『生物と無生物のあいだ福岡伸一を読んでおくべきだ。