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2008-11-29

わずか9行で描かれる戦争と平和の物語/『石垣りん詩集』


「愛読書は石垣りんの詩集です」と語る女性がいれば、それだけで私はいっぺんに好きになってしまうことだろう。石垣りんの詩は、生活という大地にしっかりと足を下ろし、足の指が大地を鷲づかみにしているような力感に満ちている。そして、時にはこんな素敵な物語を紡ぎ出してくれる――


戦闘開始


 二つの国から飛び立った飛行機は

 同時刻に敵国上へ原子爆弾を落としました


 二つの国は壊滅しました


 生き残った者は世界中に

 二機の乗組員だけになりました


 彼らがどんなにかなしく

 またむつまじく暮したか――


 それは、ひょっとすると

 新しい神話になるかも知れません。


【『石垣りん詩集』(ハルキ文庫、1998年)】


 わずか9行で描かれる戦争と平和の物語だ。戦争という愚行を見事に表現しきっている。果たして人類は、たった二人だけになるまで戦争を続けるのだろうか?

石垣りん詩集 (ハルキ文庫)

米国における天地創造と進化論/『神と科学は共存できるか?』スティーヴン・ジェイ・グールド


 同じクリスチャンでも欧米には落差がある。アメリカはモルモン教に見られるように原理主義的であり、独善的だ。

 そのため、米国が行う蛮行は“正義の名の下”に実行され、「神が書いたシナリオ」として事後承認される。主よ、あなたは後出しジャンケンが得意だ。あらゆる事象が「神の思し召し」であれば、これほど身勝手な存在もあるまい。孫悟空の方がまだましだ。


 で、アメリカ人は天地創造と進化論をどのように考えているのだろう――


 まず、アメリカの科学者は宗教と進化論の関係をどうとらえているのか。

 1987年の『ニューズウィーク』誌によると、約48万人のアメリカ国内の地球学者、生物学者のうち、聖書の記述が科学的にも正しいとする創造論者は700人程度。つまり、専門科学者のうち進化論に疑念を抱いているものは、0.18%である。この数字を見る限り、アメリカにおいて現代の生物学における進化論は、科学者たちの目から見ても、確立され、十分に信用されている科学理論といえる。おそらく全世界の科学者を対象としたならば、疑念を持つ科学者の割合はさらに小さくなるであろう。同じく、Religious Toleanceの1997年のより広範囲の専門分野におけるアメリカ科学者に対する調査では、聖書における創造を文字通りに信じる者は5%、進化を認め、かつ、神を信じる者は33%、自然主義的進化を信じる者は55%という結果がある。

 次にアメリカの一般人を対象とする調査を見てみよう。

 アメリカ人1000人に行った1991年、1997年、2001年のギャラップ調査では、(A)「神は人間を現在の形のままに過去1万年前に一気に造られた」と思う人の割合がそれぞれ47%、44%、45%、(B)「人間は、数百万年をかけて未進化の状態から進化してきた、しかし、神がこの過程を導いて居られる」と思う人の割合がそれぞれ40%、39%、37%、(C)「人間は数百万年をかけて未進化の状態から進化してきた。神はこの過程には関係ない」と思う人の割合が9%、10%、12%、(D)「その他」4%、7%、6%とうい結果が出ている。


【『神と科学は共存できるか?』スティーヴン・ジェイ・グールド(日経BP社)】


 古谷圭一の解説文より。驚愕の事実といってよい。「神が創った」という人為的な操作性が、米国の独善に結びついているように感じる。そして、神に最も近い立場の動物として、差別主義がまかり通るのだ。


 神が人間を創ったとすれば、その技術はあまりにも未熟であると言わざるを得ない。

神と科学は共存できるか?

モンティ・ホール問題/『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハッドン


 アスペルガー症候群発達障害)の少年が主人公。自閉的傾向はあるものの、IQはかなり高い。描かれているのは、「自閉症から見える世界」だ。視点を引っくり返す手法が、森達也のドキュメント映画『A』と似ている(※オウム真理教の側にカメラを置いた)。読んでいる間、価値観は逆転し、「普通」が「異質」となる。これがまた中々スリリングなんだよ。軽度発達障害に興味がある人なら、どんな専門書よりも本書が参考になると請け合っておこう。


 書くのをためらっている内に忙しくなってしまった。当初、モンティ・ホール問題を紹介して、口汚くサヴァント女史を罵った学者連中を見せしめにしてやろうと考えていた。

 ここで翻訳の問題が一つ。通常だと「マリリン・ヴォス・サヴァント(Marilyn Vos Savant)」と表記されているのだが、本書では「マリリン・フォス・サバント」となっている。ギョエテ=ゲーテじゃあるまいし、せめて人物名は出版界で統一してもらいたいものだ。


 おおぜいのひとが雑誌に手紙を出して、マリリン・フォス・サバントはまちがっているといってきた、彼女がなぜ自分は正しいか、とてもていねいに説明したにもかかわらず、その問題について彼女のところに送られた手紙の92パーセントは、彼女はまちがっているというもので、その手紙の多くは数学者や科学者からのものだった、ここに彼らの意見の一部をのせる。


 わたしは一般大衆の数学能力の欠如を非常に憂慮するものである。あなたの誤りを公表して事態を改善して下さい。

【ロバート・サックス博士、ジョージ・メイソン大学】


 わが国には数学に無知な人間がおおぜいいる。このうえ世界最高のIQの保持者まで無知であることを世界に知らしめる必要はない。恥を知りたまえ!

スコット・スミス博士、フロリダ大学】


 すくなくとも3人の数学者に指摘されたにもかかわらず、自分の誤りに気づかないとはなんたることか。

【ケント・フォード、ディキンソン州立大学】


 あなたは高校生や大学生からたくさんの手紙を受け取ったことと思う。そのうちのいくつかの住所を書きとめておかれてはいかがでしょう。今後、コラムを書く際には彼らの助けが必要になるかもしれませんから。

【W・ロバート・スミス博士、ジョージア州立大学】


 あなたはぜったいにまちがっている……あなたの心を変えさせるのにいったい何人の怒れる数学者が必要なのでしょうか?

【E・レイ・ボボ博士、ジョージタウン大学】


 もしこれらの博士たちがみなまちがっているなどということがあるなら、この国に未来はないであろう。

【エベレット・ハーマン博士、アメリカ陸軍研究所】


 しかしマリリン・フォス・サバントは正しかったのです。そしてそのことを示すには二つの方法がある。


【『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハッドン/小尾芙佐訳(早川書房、2003年)】


 ところがちょっと困ったことが起きた。Wikipediaの記事に「彼女の答えは間違いではないものの、必ずしも完全な正解とも言えない」とあったためだ。

 更に調べたところ、これに対して反論を述べているページも発見――

 いやあ数学ってえのあ、奥が深いもんですな。私が身につけていた借り物の知識は翻弄されるのみ。

夜中に犬に起こった奇妙な事件 (ハリネズミの本箱) 夜中に犬に起こった奇妙な事件

(※左が単行本、右が新書)

「ロマンス」ガロ


 私が小学4年生の頃のヒット曲。メランコリックな曲調と、性別が行方不明になりそうなハイトーンボイスに痺れた。荒井由実のファーストアルバム『ひこうき雲』が出たのもこの年で、ニューミュージックのはしりと言っていいかも知れない。3人のコーラスが美しく、今聴いても名曲。


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ガロスーパー・ベスト