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2009-01-15

元ジャンキーの魅力的なヒロイン/『神は銃弾』ボストン・テラン


 文体に慣れるまで時間を要する。しかしながら、リズムをつかんでしまえば一気に読み進める。文学性の薫り高い傑作ミステリ。


 カルト教団に別れた妻を殺されたボブが主人公と思いきや、元ジャンキーのケイスが主役だった。


「彼女は17年もカルトのメンバーだった。そして、ヘロイン中毒患者で、今はその治療中。それが彼女よ」

「彼女は信用できる人間なんだろうか?」

「彼女は聖人じゃない。でも、政治家でもないわね」


【『神は銃弾』ボストン・テラン/田口俊樹訳(文春文庫、2001年)】


 そして、ケイスは人間だった。それも本物の人間だ。読み進むほどにボブがダメ男に見えてくる。そう。ボブが体現しているのは読み手である私やあなたなのだ。ケイスに常識は通用しない。彼女は“自分のルール”に従うだけだ。市民が法律を守ろうとするよりも、はるかに崇高かつ堅固な姿勢で。


 登場する人物は皆傷だらけだ。まるで、血まみれにならなければ互いの温もりを感じ取れないかのように。しかし、距離を置きながら微温的な態度に終始する我々の日常に、果たしてどれほどの情感が通っているのだろうか。瞳を閉じて闇を見つめなければ、世界の本当の姿を知ることはできない。

神は銃弾 (文春文庫)

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