古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


WWW を検索 古本屋の覚え書きを検索

2009-02-03

過重労働で職員自殺、農協に1億円賠償命令…地裁帯広支部


 北海道音更(おとふけ)町農協の男性職員(当時33歳)が自殺したのは、過酷な労働などが原因として、遺族が同農協に計1億4058万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、釧路地裁帯広支部であった。

 岡山忠広裁判長は「業務により心理的負荷が生じてうつ病になり、自殺した」として、同農協に慰謝料(3000万円)や逸失利益など計1億398万円の賠償を命じた。

 判決によると、男性は農産物の出荷を担当する青果課に勤務していたが、2004年6月からは職場の欠員で業務量が増加し、同年8月には超過勤務時間が約90時間にも達した。さらに、夜の会合も増え、仕事上のトラブルで上司に叱責(しっせき)されたことなども重なり、05年5月に同農協の倉庫で自殺した。

 帯広労働基準監督署は06年12月、自殺は業務に起因するものとして労災を認定。同農協が遺族側の損害賠償請求に応じなかったため、提訴していた。

 農協側はこれまで、「男性に過重労働を強いていない。男性のうつ病は予見できず、自殺の原因は仕事ではなく個人的な問題によるもの」と主張。判決では、「自殺前の男性の仕事ぶりや言動を注意深く観察していれば、十分把握できたはずで、業務量の軽減など取るべき措置を怠った」と退け、安全配慮義務違反と認定し、遺族側の主張を全面的に認めた。


【読売新聞 2009-02-03】

トーマス・ブラス


 1冊読了。


 17冊目『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス(誠信書房、2008年)/野島久男、藍澤美紀訳。タイトルに偽りあり。服従実験の詳細は記されているが、特にそれだけを詳述した作品ではない。ミルグラムの評伝である。その意味では、ロバート・カニーゲル著『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』(工作舎、1994年)と似ていて、飽くまでも「網羅」に力点が置かれている。読み物としてはこっちの方が辛い。才豊かにして、才に溺れた印象を受けるが、ミルグラムはその知名度に似合わず不遇であった。服従実験以外にも、スモールワールド(六次の隔たり)という概念を構築したが、どこか胡散臭い評価をされていたようだ。社会心理学を確かな学問にした最大の功績者であるにもかかわらず。面白主義といった部分で多分、南伸坊に似ていたのではと勝手に想像している。

文学性の薫り高い硬質な警察小説/『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド

    • 文学性の薫り高い硬質な警察小説

 はっきり書いておくが、プロットが私の好みではない。それでも読ませられた。しかも一気にだ。硬質な透明感に包まれた文章。警句を思わせる一行。文体としてのハードボイルド。元警察官だけあって、細部という細部が生き生きと描かれている。これがデビュー作というのだから凄い。


 アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞しているが、ミステリという枠にはまるような代物ではない。警察を舞台にした文学作品といった趣。5人の婦人警官が主人公の10篇の物語。ま、とにかく読んでごらんなさいよ。


 掃除という単純作業には、目の前のことだけに打ち込むという美点がある。最小限の努力で最大限の成果を得られる、進み続けるべき正道だ。銃や制服の手入れもそうだろう。いちばんいい道具を買って、必要と思う異常にまめに手入れする。3ヵ月ごとに銃弾を取り替え、豚毛の歯ブラシを使う。安物の銃掃除キットは買わない。良質のガンオイルと亜麻布に大金をはたく。古いTシャツで――まちがってもペーパータオルなど使わない――靴の泥汚れを拭き取ってから綿のボロ布で皮革専用石鹸を塗り、そのあと靴墨に自分の唾液を混ぜ、それを柔らかい高級ブラシで靴全体にまんべんなくのばし、ぴかぴかに磨き上げる。真鍮(しんちゅう)磨き剤をほんの少しだけ――多いと緑色になってしまう――上着のボタンや、バッジや、名札や、優秀射撃手章や、署記章につける。没頭すれば時間を忘れる。自分も忘れる。自分がただ作業するだけの存在に感じられる。


【『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド/駒月雅子訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2006年/ハヤカワ文庫、2008年)】


 一瞬、大藪春彦を思い出した(笑)。時折、女性らしい視点が現れ、ハッとさせられる。それぞれの女性が心に傷を負いながらも、自立し、懸命に生きている。日本女性みたいにジメッとしていない。乾燥した空気のような軽やかさがある。


「揺れる女の自我」を見事に描いていて、傑作。

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)

(※左がポケミス、右が文庫本)