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2009-02-12

同居家族が老人を孤独へ追いやる/『自殺死体の叫び』上野正彦

 リラックスした筆致が読みやすい。回顧調も心地よい。著者は監察医という立場で数多くの遺体と向き合い、そこから日本社会の様相を見据えてきた。


 3年間の調査で、私自身も意外だったのは、自殺に追い込まれた老人の家庭環境別の比較である。当時はこれを、三世代同居、夫婦ふたり暮らし、子どもとふたり暮らし、ひとり暮らしなどの項目に分類し、整理した。

 その中で最も多かったのは、意外や意外、三世代同居の老人で、全体の60パーセント強を占めていた。以下、子どもとふたり暮らし、夫婦ふたり暮らし、ひとり暮らしの順に続いた。

 当時は、先入観として、家族と同居の老人こそが最も幸せと考えていたが、必ずしもそうではなかった。むしろ同居の中で、信頼する身内から理解されず、冷たく疎外されているわびしさこそが、老人にとって耐えられない孤独だった。これが一番の自殺動機になっていたことを見逃すことはできない。

 その逆に、ひとり暮らしだから孤独かというと、そうでもない。ひとり暮らしの老人は、それはそれで自分の城を持ち、訪れる身内や近所の人たちと交際し、それなりに豊かさを持っている。


【『自殺死体の叫び』上野正彦(ぶんか社、1999年/角川文庫、2003年)】


 悲しい現実である。孤独は関係性の中で生じる。いじめだってそうだろう。親しい仲間内で行われるのだ。晩年の孤独が耐え難い代物であることは容易に想像できる。人間関係のチャンネルを増やしておかないと大変なことになりそうだ。

自殺死体の叫び (角川文庫)

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