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2009-03-21

我々自身が人生を短くしている/『人生の短さについて』セネカ

 これは文句なしに面白かった。古典、恐るべし。小田嶋隆がしばしば使う「なぜというに」ってのは、多分本書から影響を受けているのだろう。170ページ余りの薄い本だが、その辺の本が10冊くらい束になっても敵(かな)わないほどの衝撃を受けた。しかも、2000年前に書かれたものなのだ。人間の本質は変わらないようだ。否、文明の発達に伴って劣化しているのかも知れない。


 しかし、われわれは短い時間をもっているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。人生は十分に長く、その全体が有効に費(ついや)されるならば、最も偉大なことをも完成できるほど豊富に与えられている。けれども放蕩(ほうとう)や怠惰(たいだ)のなかに消えてなくなるとか、どんな善いことのためにも使われないならば、結局最後になって否応(いやおう)なしに気付かされることは、今まで消え去っているとは思わなかった人生が最早すでに過ぎ去っていることである。全くそのとおりである。われわれは短い人生を受けているのではなく、われわれがそれを短くしているのである。われわれは人生に不足しているのではなく濫費しているのである。(「人生の短さについて」)


【『人生の短さについて』セネカ/茂手木元蔵〈もてぎ・もとぞう〉訳(岩波文庫、1980年)】


 人生は時間に支配されている。これに異論を挟む者はあるまい。では、その時間を我々は何に使っているのか。


 以下は、総務省統計局による平成13年調査のデータである(※40〜44歳の全国平均)――

  • 7.01 睡眠
  • 1.09 身の回りの用事
  • 1.32 食事
  • 0.44 通勤
  • 6.27 仕事
  • 0.01 学業
  • 1.56 家事
  • 0.02 介護、看護
  • 0.12 育児
  • 0.21 買い物
  • 0.27 移動(通勤を除く)
  • 1.55 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌
  • 1.02 休養、くつろぎ
  • 0.08 学習、研究
  • 0.22 趣味、娯楽
  • 0.06 スポーツ
  • 0.03 ボランティア、社会参加活動
  • 0.16 交際、付き合い
  • 0.05 受診、療養
  • 0.13 その他

 合計すると、21.62時間となる。ま、トイレにだって20分くらいは入っていることだろう。それに風呂や歯磨きの時間を加えれば、大体24時間だ。それにしても、平均というデータは個性が欠落している。スポーツ0.06時間(3.6分)って一体何だよ(笑)。


 今時であれば、携帯電話を使用している時間だって馬鹿にならない。で、このデータを見る限りでは、平均的な人は生きている価値がまるでない。間違いなくセネカはそう言うはずだ。これじゃあ、まるでビッグブラザーにこき使われる労働者の一日と何ら変わりがない。


 セネカは「他人のために生きることをやめろ」と説いている。そして、普通に生きている人々を辛辣(しんらつ)にこき下ろしている。嘲笑していると言ってもよい。「他人から押し付けられた人生を生きて、何が楽しいんだ?」と言わんばかりだ。


 人生を浪費する者は、魂を浪費しているのだ。そして、社会の中で自分自身までもが浪費される対象と成り果てるのだろう。

人生の短さについて 他二篇 (ワイド版 岩波文庫) 生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

(※左が茂手木元蔵訳、右が大西英文訳)

rina_corina_co 2009/03/22 06:54 通勤が思ったより短いですね。ローン返済がなんとかできる距離の一戸建てを無理して買って、長距離通勤に耐え、家族と過ごす時間がないっていうのが平均的サラリーマンのイメージです。
ただ、今はすでに平均的サラリーマンなんていないのかもしれませんね。
派遣で結婚できない層がごまんといるのかな。

sessendosessendo 2009/03/22 09:16 俺もそう思った。
里奈ちゃんが言ってるのは、東京周辺の話だ。
東京と地方は生活圏の広さが格段に違う。
関西から来た人も、よくそう言ってるよ。

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