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2009-03-23

リハビリ革命/『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三


 宮本省三の最新刊である。認知運動療法入門といってよい。リハビリ・介護関係者は必読。リハビリの歴史もよく理解できる内容となっている。


 認知運動療法はイタリアのカルロ・ペルフェッティが提唱した新しいリハビリテーションだ。宮本省三はリハビリの限界を指摘する。「いくら関節を動かしても、筋をストレッチしても、運動麻痺が回復するわけではない」と。これが現実であろう。現状のリハビリは筋肉や関節を「固まらないように」努力しているだけである。これに対して認知運動療法は“脳の地図”を書き換えることを目指している。


 ペルフェッティの指針を紹介しよう――


 認知運動療法に取り組む患者に向けて、ペルフェッティは「患者さんに守ってもらいたいささやかな規則」という指針を提言している。


 身体を動かすだけでは不十分です。感じるために動くことが必要です。運動というのは、自分自身あるいは外部世界を認知するためのものです。大きな力を要する運動、すばやく大きな移動を要するような運動の練習はあまり役に立ちません。

 脳は、あなたが世界を認知しようとして運動した時にもっとも活性化します。ですから、あなたは動きを「感じる」練習をしてください。感じるために注意が必要となればなるほど、脳のかかわり方が大きくなります。自分の運動や対象物との接触に、いつも最大限の注意を払ってください。目を閉じて身体を動かしてみるのもひとつの方法です。

 そして対象物との接触では、特に重量を認識する努力をしてください。あなたの身体やその部位にも重量があります。座っている状態で、あるいは立っている状態で、自分の腕、自分の脚、自分の体幹、自分の身体全体の重量を感じる練習をしてみてください。たとえば重量が身体の左側と右側に対称に配分されているかどうか感じてみてください。

 いろいろな運動をおこなったとき(ママ)に重量が身体内でどう変化するかも感じてみてください。誰か他の人にあなたの身体を動かしてもらうのもよいかもしれません。そうして、あなたは目を閉じて、自分の身体がどう動いたか、あるいは自分の身体に触れた対象物の特性を感じるために脳を使ってください。

 運動を始める前に、自分がおこなおうとしている運動について考えてみてください。自分の身体がどうなるかを考えてみてください。身体から、あるいは対象物からどういう情報を得ることになるのかを推測してみてください。そして運動をおこなった後で、事前に自分が予測したものと実際に感じたものが合致しているかどうかを考えてみてください。そして、自分の身体が動く感じを脳の中でイメージしてみてください。

 以上の規則を守ると、最初はゆっくりとしか動けなくなりますが、それは心配には及びません。規則を守れば、自分の運動を前より上手にコントロールすることができるはずです。そのうちにもっと早く動けるようになります。


【『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三〈みやもと・しょうぞう〉(講談社現代新書、2008年)】


 脳血管障害(脳卒中)によって麻痺症状が現れると、本人の身体イメージが崩壊する。具体的には目に映る状態と、身体の内部の感覚が異なっているそうだ。例えば、足の指はあるにもかかわらず、麻痺によって欠落しているように感じてしまう。認知運動療法は身体の内部に意識を向けさせる。そこから、中枢神経がアイドリング状態となるよう働きかけるのだ。


 これは革命的な理論といってよい。そもそも身体がどうして動くのかがわかっていないのだ。行為・行動は必ず事前に予測される。あるイメージ(想像)を持っている。このイメージの喚起力を呼び覚ます運動療法と言ってもいいだろう。


 医療や介護は制度的な欠陥をたくさん抱えている。見逃せないのは、その資格内容が極端に乖離(かいり)し、段階的なステップアップが困難なことだ。例えば、ヘルパー、社会福祉士、ケアマネージャーの上となると、学校に通う必要が出てくる。PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)の待遇も決してよくない。医療においても、医師と看護師の間の資格があってもよさそうなものだ。看護師が稼ぐには夜勤を当て込むしかないのが現状だ。


 いかに素晴らしい療法が生み出されたとしても、努力が報酬として報われなければ、若い人達が目指す業界とはなり得ない。まして、介護業界に至っては関係者の「介護に対する熱い思い」で支えられている側面が非常に強いのだ。だが、食えないとなれば、皆あっさりとやめざるを得ないだろう。


 介護業界は政治力がない。だから、いつまで経っても介護保険の内容がよくならないのだ。事務書類も多過ぎる。保険者は市町村となっているが、書類仕事がケアマネやサービス提供責任者の足をどれだけ引っ張っていることか。非効率な書類の義務づけも無視できない問題となっている。

脳のなかの身体―認知運動療法の挑戦 (講談社現代新書 1929) (講談社現代新書)

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